33kmの個人タイムトライアルで争われたツール・ド・フランス第5ステージで、レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が完勝。16秒遅れの2位だったポガチャルがマイヨジョーヌを着用し、ヴィンゲゴーは1分21秒失った。



カーンを発着する33km個人TTで、暫定トップタイムをマークしたエドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

多くの観客が選手たちに声援を送った photo:A.S.O.
昨年末にスーダルのGMを退任したルフェーブル氏も駆けつけた photo:A.S.O.


7月9日(水)第5ステージ
カーン〜カーン(個人タイムトライアル)
距離:33km
獲得標高差:200m
天候:晴れ
気温:22度


第5ステージ カーン〜カーン image:A.S.O.

2025年で創設1,000年を迎えた街カーンで行われたツール・ド・フランス第5ステージは、総合順位に大きな影響を及ぼす個人タイムトライアルだ。市街地の北西をぐるりと周り帰って来る33kmの大部分は、広い道幅のフラットコース。そのためTTスペシャリストたちがその力を存分に発揮するステージとなった。

中間計測地点は8.2km、16.4km、24.8kmの3箇所。残り約5km地点から市街地に戻ってくると細かいコーナーをクリアしながら進み、フィニッシュ地点は緩やかに下った先にある。

ステージ100位(4分32秒遅れ)と、まだ調子の上がらないワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

前日の総合順位で最下位の選手であるエフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、XDSアスタナ)から順にスタートしていき、序盤スタート組で好タイムを出したのはイバン・ロメオ(スペイン、モビスター)だった。今大会の出場選手の中で最年少21歳のロメオは37分44秒でフィニッシュ。U23の現TT世界王者かつ、スペインのロード王者が得意のTTでその実力を発揮した。

しかし初出場のツールでホットシートには長く座り続けることはできず、エドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク)が29秒を上回る37分17秒で暫定トップに立つ。TTヨーロッパ王者の証である白地に青の線が入ったジャージで、アッフィニ平均スピードを53km台に乗せる。終盤のコーナーではペダルのクリートを外さなければならない小さなミスもありながら、チームカーに乗ったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)の前で最速タイムを披露した。

ステージ4位に入ったTTフランス王者ブリュノ・アルミライユ(デカトロンAG2Rラモンディアール) photo:A.S.O.

ヴィスマのチームカーから「長くホットシートに座ることになる」と語った通り、アッフィニはこの後総合トップ10の出走までホットシートで後続の選手たちを見守ることとなる。総合勢の前に唯一アッフィニに肉薄したのが、TTフランス選手権で連覇を達成したブリュノ・アルミライユ(デカトロンAG2Rラモンディアール)だった。第1計測地点(8.2km)でアッフィニのタイムを3秒更新したものの、中盤にスピードを落とし、後半取り戻すも2秒届かなかった。

前日に「出場するだけで大変な状況だった」と語ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は、最終的に区間12位に入るまずまずの走りを見せる。そして最後から9番目、ついにTT世界王者であるレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が登場。大歓声のなか優勝候補筆頭が、パリ五輪のTT金メダリストを表す金色のヘルメットとバイクで走り出した。

後半にペースを上げ、圧巻の勝利を飾ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

第1計測でエヴェネプールはアッフィニよりも5秒上回るペースで入る。第2計測(16.4km)こそ4秒遅れだったものの、第3計測地点(24.8km)でトップタイムを11秒更新。フィニッシュに向けてここから更にスピードアップしたエヴェネプールは、54km/hに迫る平均スピードでフィニッシュラインを駆け抜け、アッフィニよりも33秒早い36分42秒という驚異的なタイムを叩き出した。

このタイムには、その後フィニッシュしたジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)やマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)も届かず、カーンの近くであるバイユー出身のケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)も及ばないものの、49秒遅れの区間5位と好走。そして最後から3番目、前哨戦であるクリテリウム・デュ・ドーフィネではタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)よりも早いタイムを出したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)がスタートを切った。

振るわなかったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

第1計測をエヴェネプールから20秒遅れで通過したヴィンゲゴーだったが、ここからスピードが上がらない。チームカーからは「自分のリズムを見つけろ」と声をかけられたものの、結果的にエヴェネプールよりも1分21秒遅い、全体の13位でフィニッシュ。レース後に「単純に脚の調子が悪かった」と語ったヴィンゲゴーは、大きく総合タイムを失うこととなった。

続いてマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を纏ったポガチャルが走り出すと、ヴィンゲゴーとは対照的に順調なタイムをマークしていく。第3計測ではアッフィニより6秒遅れで通過し、ラスト8.2kmで再加速。トップタイムには16秒届かなかったものの、アッフィニより17秒早い36分58秒でフィニッシュした。

ヴィンゲゴーと対照的に、好走が光ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌのマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が最終出走者として走り出す photo:A.S.O.

そして最終出走者となったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)はマイヨジョーヌで走る、自身2度目の個人TTを楽しみながら全体の18位でフィニッシュ。その瞬間、エヴェネプールのツール区間2勝目が確定した。

「勝つには全てが計画通りいく必要があった。幸い脚の調子が良く、あれ以上はスピードが出せないほど追い込むことができた。チームとして今大会2勝目なので嬉しいよ。僕の強みはスタート後10kmのペースが最後まで変わらないこと。中間計測を追うごとにペースが上がっていったので、ラスト7〜8kmで踏み込んだ。完璧なペーシングができた」とマイヨブラン(ヤングライダー賞ジャージ)を着用したエヴェネプールは、レースをそう振り返った。

総合2位に順位を上げ、マイヨブラン(ヤングライダー賞)を着用したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

大会5日目にして総合首位に立ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

この結果、ポガチャルが総合首位に浮上。「世界王者かつ五輪金メダリストであり、世界最高のTTのスペシャリスト(のエヴェネプール)に対し、16秒遅れで済んだことがとても嬉しい。マイヨジョーヌの着用は嬉しいが、本当に重要なのはシャンゼリゼのフィニッシュラインでこのジャージを着ていることだ」とコメント。今後のステージについては「今年のコースは混沌とするように設計されているから、毎日気が抜けないよ」と意気込みを語った。

総合2位にはエヴェネプールが上がり、ヴォークランは総合3位に浮上。ヴィンゲゴーは1分13秒遅れの総合4位と、今後の巻き返しを狙う。
ツール・ド・フランス2025第5ステージ
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 36.42
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) +0:16
3位 エドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) +0:33
4位 ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) +0:35
5位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +0:49
6位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:58
7位 イバン・ロメオ(スペイン、モビスター) +1:02
8位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) +1:14
9位 ルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) +1:17
10位 パブロ・カストリーリョ(スペイン、モビスター) +1:18
11位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +1:19
12位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
13位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +1:21
18位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +1:44
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 17:22:58
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:42
3位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +0:59
4位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +1:13
5位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +1:22
6位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +1:28
7位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) +1:53
8位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +2:30
9位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +2:31
10位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +2:32
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 97pts
2位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 92pts
3位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) 87pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 5pts
2位 ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) 5pts
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 3pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 17:23:40
2位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +0:17
3位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:49
チーム総合成績
1位 ヴィスマ・リースアバイク 52:13:11
3位 UAEチームエミレーツXRG +1:28
2位 グルパマFDJ +7:14
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.

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