スプリント勝負となったクリテリウム・デュ・ドーフィネ第5ステージ。落車リタイアしたアッカーマンに代わり、スプリントに臨んだジェイク・スチュワート(イギリス、イスラエル・プレミアテック)がワールドツアー初勝利を掴んだ。



ポイント賞ジャージ着るファンデルプール photo:A.S.O.
スプリント勝利を狙うミラン photo:A.S.O.


前日勝者でリーダージャージを纏うレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

クリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)も後半戦に突入し、5日目の舞台は183kmの丘陵ステージ。コースに設定されたカテゴリー山岳は4つだが、いずれも勾配が緩いため、ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)らスプリンターたちにとって今大会最大のチャンスと見られた。

最初の2時間が平均スピード45km/hのハイペースとなったこの日、リドル・トレックがコントロールするメイン集団から5名が逃げグループを形成。ワールドチーム残留を目指すアルケア・B&Bホテルズは2名を送り込み、同じく降格圏内にいるコフィディスからはバンジャマン・トマ(フランス)が加わった。山岳が連続するレース後半に入るとプロトンからは散発的なアタックが繰り返され、トタルエネルジーの2名とトビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ)が飛び出した。

逃げへの合流を目指した3名だったがペースは上がらず、プロトンから飛び出したアレックス・ボーダン(フランス、EFエデュケーション・イージーポスト)らの合流を許してしまう。逃げ、追走集団、そしてプロトンという展開でレースが進むなか、レース序盤に落車したアロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)がバイクを降りる。第3ステージで逃げから2位に入り、総合7位につけていたテハダは右手の第4中手骨骨折が発覚し、予定していたツール・ド・フランスへの出場が不透明になった。

フランス出身の選手が4名入った5名による逃げグループ photo:A.S.O.

さらに残り58km地点では、パスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック)が落車し、リタイアを余儀なくされる。この日の優勝候補の1人であったエーススプリンターを失ったイスラエル・プレミアテックは、ジェイク・スチュワート(イギリス)に勝負を託すこととなった。

メイン集団は追走集団を吸収し、リドル・トレックは1分30秒先にいる逃げ集団を追いかける。そして残り32.5km地点から始まる最終3級山岳(距離5.3km/平均4.6%)に入ると、アルペシン・ドゥクーニンクが集団先頭に人数を集め、ハイスピードの牽引をスタート。その狙いはミランらスプリンターをふるい落とし、マチュー・ファンデルプール(オランダ)を有利にすることだったが、一度遅れたミランはチームメイトのアシストによって集団復帰を果たした。

プロトンはリドル・トレックがコントロールした photo:A.S.O.

フィニッシュに向けた平坦路に入ると、再びリドル・トレックが牽引する。その結果残り2km地点で逃げ集団を捉えたが、フラムルージュ(残り1km)を越えた直後、総合首位のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)やロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL)を巻き込む落車が発生する。しかし救済措置が取られる残り3km以内だったためタイムを失うことはなく、またエヴェネプール本人はSNSを通して怪我がなかったことを伝えている。

そして集団はリドル・トレックを先頭に最終ストレートに突入。これまで数多の勝利をもたらしたエドワルト・トゥーンス(ベルギー)からシモーネ・コンソンニ(イタリア)へと繋ぐ完璧なリードアウトを受け、ミランがスプリントを開始した。しかしその背後からスチュワートが先に仕掛けると、トップスピードの伸びを欠くミランとは対照的に、他を圧倒する爆発力を見せつけ勝利した。

スプリント勝利したジェイク・スチュワート(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos

ワールドツアー初勝利を手に入れたジェイク・スチュワート(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:A.S.O.

本来はアッカーマンのリードアウト役を務める予定だったスチュワートが、チームに起死回生の勝利をもたらした。「最高の気分だ。アッカーマンの落車は残念だったが、そのおかげで勝利のチャンスが僕に回ってきた。彼にうってつけのステージだっただけに、彼の分まで勝利できて嬉しい。チームの素晴らしい走りを勝利に繋げることができた」と、スチュワートはコメントした。

プロ通算4勝目を飾ったスチュワートにとって、これがワールドツアー初勝利。下部チームを経て昇格したグルパマFDJを2023年に離れたスチュワートが、チームに加入後初の勝利をもたらした。

2位はアクセル・ローランス(フランス、イネオス・グレナディアーズ)で3位はソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)。スプリントが不発に終わったミランは5位だった。
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2025第5ステージ結果
1位 ジェイク・スチュワート(イギリス、イスラエル・プレミアテック) 4:03:46
2位 アクセル・ローランス(フランス、イネオス・グレナディアーズ)
3位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
4位 ローレンス・ピシー(ニュージーランド、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
5位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)
6位 ポール・ペンウェット(フランス、グルパマFDJ)
7位 エミリアン・ジャニエール(フランス、トタルエネルジー)
8位 フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
10位 バスティアン・トロンション(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)
個人総合成績
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 18:34:54
2位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:04
3位 イバン・ロメオ(スペイン、モビスター) +0:09
4位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:14
5位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +0:16
6位 エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー) +0:30
7位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) +0:38
8位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:39
9位 ルイ・バレ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ) +1:03
10位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) +1:13
その他の特別賞
ポイント賞 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
山岳賞 ポール・ウルスラン(フランス、コフィディス)
ヤングライダー賞 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績 ヴィスマ・リースアバイク
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.