山岳決戦を前に、今大会最後の逃げ切りチャンスとなったジロ・デ・イタリア第18ステージ。ニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が17.6kmの独走を決め、ログリッチが去り失意の中にいたチームに勝利をもたらした。

故郷モルベーニョを出発するピガンゾーリ photo:RCS Sport 
32歳の誕生日を迎えたカラパス photo:RCS Sport

この日もマリアローザを纏い、登場したイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport

ジロ・デ・イタリア2025第18ステージ コースプロフィール image:RCS Sport 休息日明け、選手たちにとって過酷な山岳での2日間が終わり、ジロ・デ・イタリア18日目に久々の平坦ステージがやってきた。登場する3つの山岳(2級、3級、3級)はコース中盤に固まっており、レッドブルKMが設定された丘の頂上からは56.9kmのほぼ平坦路だ。
そしてフィニッシュ地点はチェザーノ・マデルノの市街地。2周する12.5kmコースは鋭角コーナーを含むテクニカルなレイアウトだが、最後は750mの直線路。そのため最終日ローマでの集団スプリントを前に、白熱のスピードバトルも予想された。
22歳ながら総合14位と健闘するダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア、ポルティ・ビジットマルタ)の故郷かつ、スタート地点であるモルベーニョは晴天に恵まれた。また前日ステージでも切れ味鋭いアタックから勝利に迫ったリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)はこの日が32回目の誕生日。天候も相まって明るい雰囲気のなか、162名の選手たちがスタートを切った。

イル・ロンバルディアでお馴染みコモ湖 photo:RCS Sport

約40名の逃げに乗ったマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:RCS Sport
翌日から山岳2連戦が行われ、最終日は集団スプリントが予想されるため、逃げから勝利を狙う選手たちにとってこれが実質的なラストチャンス。そのため激しいアタック合戦が繰り広げられ、秋のイル・ロンバルディアでお馴染みコモ湖の横を過ぎる頃に、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)ら20名程度の逃げグループが形作られた。しかしメイン集団からその後も、合流を目指して選手たちが飛び出し、約40名の大所帯となった。
最大勾配11%とこの日最大の2級山岳に入ると、逃げに1分14秒のリードを許したプロトンはUAEチームエミレーツXRGが先導する。しかしその隊列にフアン・アユソ(スペイン)の姿はなく、そのままリタイアを選択。チームの総合エースとして臨みながら、前日のステージ中にヘルメットに侵入した蜂に刺され、また落車による膝の怪我も重なる不運の大会となった。

プロトンはUAEチームエミレーツXRGがペースを作った photo:RCS Sport

今大会の最高気温である、27度に達したジロ第18ステージ photo:CorVos
レース先頭では第16ステージの勝者であるクリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ)が逃げグループを飛び出し、先頭で2級山岳をクリアする。直後の中間スプリントでは大会初日からマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着続けるピーダスンが先頭通過。続く3級山岳でもスカローニがトップを獲り、山岳賞ランキングで2位の座を守った。
青空のなかレースは進行し、この日最後の3級山岳もスカローニが先頭で通過。そして続くレッドブルKM(残り56.9km)が設定された丘でVFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネの2名がスピードを上げ、マヌエーレ・トロッツィ(イタリア)がトップでクリア。チームメイトであるマルティン・マルチェルージ(イタリア)と、これに呼応したレミ・ロシャ(フランス、グルパマFDJ)の3名が先頭に立った。
一方、UAEがいまだ牽引するプロトンはレッドブルKMに10分遅れでやってきたため、この日の勝者は逃げ集団に委ねられることに。マルチェルージとロシャは残り40kmで後続集団に吸収され、一人粘ったトロッツィもすぐに引き戻される。その後も逃げに4名を乗せたアルペシン・ドゥクーニンクを中心に、アタックが続いた。

11名の先頭集団から飛び出したニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

追走を強いられたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)たち photo:RCS Sport
そして残り30kmを過ぎ、先頭では第10ステージの個人タイムトライアルで勝利したダーン・ホーレ(オランダ、リドル・トレック)を含む、11名の先頭集団が形成される。この動きにスプリント勝利を狙うカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)は入ることができず、2周する12.5kmコースに先頭集団は1分24秒差で突入。そして残り17.6km地点で、ニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が仕掛けた。
2日前に総合エースであるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がリタイアし、ステージ優勝を狙う自由を得たデンツ。2023年大会で逃げ切りから区間2勝を飾った31歳は、スムーズにテクニカルなコーナーをクリアしていく。追走では過去にパリ〜ルーベを制したディラン・ファンバーレ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)や、ベテランのローレンス・ワーバス(アメリカ、チューダー・プロサイクリング)が仕掛けるも、30秒差はなかなか縮まらない。
そして抜群の嗅覚からアタックを決め、1分までリードを拡げたデンツがフィニッシュラインに到達。大観衆の中、何度もガッツポーズを繰り返し、自身3度目となるジロのステージ優勝を掴み取った。

独走から自身3度目となる、ジロ区間優勝を飾ったニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

スタッフと共に勝利を喜ぶニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:RCS Sport
失意のチームに、記念すべき通算300勝目をもたらしたデンツ。「選手キャリアのなかでこれが最も感動的な勝利だろう。プリモシュ(ログリッチ)での総合優勝を狙うため力を尽くし、それは選手だけではなくスタッフも共に励んだ。長く高地トレーニングを行い、家を3ヶ月も離れ、妻や子どもたちと会えなかった。そしてプリモシュを失い、総合優勝の夢も失った。でも僕にとって1つしかなかったチャンスをこうやって掴むことができた」とデンツは喜びを語った。
1分1秒遅れでフィニッシュした追走集団の先頭は、ミルコ・マエストリ(イタリア、ポルティ・ビジットマルタ)が獲り2位。グローブスたちは3分40秒遅れでフィニッシュし、マリアローザを含むプロトンは13分51秒遅れで山岳決戦前のステージを終えている。

チームに通算300勝目をもたらしたニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

マリアローザで翌日からの山岳2連戦に臨むイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport




そしてフィニッシュ地点はチェザーノ・マデルノの市街地。2周する12.5kmコースは鋭角コーナーを含むテクニカルなレイアウトだが、最後は750mの直線路。そのため最終日ローマでの集団スプリントを前に、白熱のスピードバトルも予想された。
22歳ながら総合14位と健闘するダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア、ポルティ・ビジットマルタ)の故郷かつ、スタート地点であるモルベーニョは晴天に恵まれた。また前日ステージでも切れ味鋭いアタックから勝利に迫ったリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)はこの日が32回目の誕生日。天候も相まって明るい雰囲気のなか、162名の選手たちがスタートを切った。


翌日から山岳2連戦が行われ、最終日は集団スプリントが予想されるため、逃げから勝利を狙う選手たちにとってこれが実質的なラストチャンス。そのため激しいアタック合戦が繰り広げられ、秋のイル・ロンバルディアでお馴染みコモ湖の横を過ぎる頃に、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)ら20名程度の逃げグループが形作られた。しかしメイン集団からその後も、合流を目指して選手たちが飛び出し、約40名の大所帯となった。
最大勾配11%とこの日最大の2級山岳に入ると、逃げに1分14秒のリードを許したプロトンはUAEチームエミレーツXRGが先導する。しかしその隊列にフアン・アユソ(スペイン)の姿はなく、そのままリタイアを選択。チームの総合エースとして臨みながら、前日のステージ中にヘルメットに侵入した蜂に刺され、また落車による膝の怪我も重なる不運の大会となった。


レース先頭では第16ステージの勝者であるクリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ)が逃げグループを飛び出し、先頭で2級山岳をクリアする。直後の中間スプリントでは大会初日からマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着続けるピーダスンが先頭通過。続く3級山岳でもスカローニがトップを獲り、山岳賞ランキングで2位の座を守った。
青空のなかレースは進行し、この日最後の3級山岳もスカローニが先頭で通過。そして続くレッドブルKM(残り56.9km)が設定された丘でVFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネの2名がスピードを上げ、マヌエーレ・トロッツィ(イタリア)がトップでクリア。チームメイトであるマルティン・マルチェルージ(イタリア)と、これに呼応したレミ・ロシャ(フランス、グルパマFDJ)の3名が先頭に立った。
一方、UAEがいまだ牽引するプロトンはレッドブルKMに10分遅れでやってきたため、この日の勝者は逃げ集団に委ねられることに。マルチェルージとロシャは残り40kmで後続集団に吸収され、一人粘ったトロッツィもすぐに引き戻される。その後も逃げに4名を乗せたアルペシン・ドゥクーニンクを中心に、アタックが続いた。


そして残り30kmを過ぎ、先頭では第10ステージの個人タイムトライアルで勝利したダーン・ホーレ(オランダ、リドル・トレック)を含む、11名の先頭集団が形成される。この動きにスプリント勝利を狙うカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)は入ることができず、2周する12.5kmコースに先頭集団は1分24秒差で突入。そして残り17.6km地点で、ニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が仕掛けた。
2日前に総合エースであるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がリタイアし、ステージ優勝を狙う自由を得たデンツ。2023年大会で逃げ切りから区間2勝を飾った31歳は、スムーズにテクニカルなコーナーをクリアしていく。追走では過去にパリ〜ルーベを制したディラン・ファンバーレ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)や、ベテランのローレンス・ワーバス(アメリカ、チューダー・プロサイクリング)が仕掛けるも、30秒差はなかなか縮まらない。
そして抜群の嗅覚からアタックを決め、1分までリードを拡げたデンツがフィニッシュラインに到達。大観衆の中、何度もガッツポーズを繰り返し、自身3度目となるジロのステージ優勝を掴み取った。


失意のチームに、記念すべき通算300勝目をもたらしたデンツ。「選手キャリアのなかでこれが最も感動的な勝利だろう。プリモシュ(ログリッチ)での総合優勝を狙うため力を尽くし、それは選手だけではなくスタッフも共に励んだ。長く高地トレーニングを行い、家を3ヶ月も離れ、妻や子どもたちと会えなかった。そしてプリモシュを失い、総合優勝の夢も失った。でも僕にとって1つしかなかったチャンスをこうやって掴むことができた」とデンツは喜びを語った。
1分1秒遅れでフィニッシュした追走集団の先頭は、ミルコ・マエストリ(イタリア、ポルティ・ビジットマルタ)が獲り2位。グローブスたちは3分40秒遅れでフィニッシュし、マリアローザを含むプロトンは13分51秒遅れで山岳決戦前のステージを終えている。


ジロ・デ・イタリア2025第18ステージ結果
1位 | ニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 3:12:07 |
2位 | ミルコ・マエストリ(イタリア、ポルティ・ビジットマルタ) | +1:01 |
3位 | エドワルト・プランカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
4位 | フィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ) | |
5位 | アレクサンダー・エドモンソン(オーストラリア、ピクニック・ポストNL) | |
6位 | ドリース・デボント(ベルギー、デカトロンAG2Rラモンディアール) | |
7位 | ダーン・ホーレ(オランダ、リドル・トレック) | |
8位 | ダヴィデ・デプレット(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | |
9位 | ニコラ・コンチ(イタリア、XDSアスタナ) | |
10位 | ローレンス・ワーバス(アメリカ、チューダー・プロサイクリング) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | 68:56:32 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +0:41 |
3位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:51 |
4位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +1:57 |
5位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +3:06 |
6位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | +4:43 |
7位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +5:02 |
8位 | エイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター) | +6:09 |
9位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツXRG) | +7:45 |
10位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) | +7:46 |
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 276pts |
2位 | オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | 135pts |
3位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | 107pts |
マリアアッズーラ(山岳賞)
1位 | ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ) | 355pts |
2位 | クリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ) | 161pts |
3位 | マヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ) | 66pts |
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
1位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | 68:56:32 |
2位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +5:02 |
3位 | マックス・プール(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +8:00 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツXRG | 206:55:36 |
2位 | XDSアスタナ | +23:21 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +28:22 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, RCS Sport
photo:CorVos, RCS Sport
Amazon.co.jp