ログリッチが落車リタイアし、総合順位が大きく変動したジロ第16ステージ。逃げからクリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ)がフォルトゥナートとワンツーフィニッシュを決め、カラパスがタイムを稼ぐなかデルトロは辛くもマリアローザを守った。



チームプレゼンから雨が降り続いた photo:RCS Sport
総合で巻き返し狙うログリッチ photo:RCS Sport


ピーダスンと言葉を交わす前日勝者のカルロス・ベローナ(スペイン、リドル・トレック) photo:RCS Sport

ジロ・デ・イタリア2025第16ステージ コースプロフィール image:RCS Sport
第108回ジロ・デ・イタリアの3週目は、総獲得標高差が5,000mにも迫る山岳ステージ&山頂フィニッシュで幕を開ける。第16ステージはまず2級と1級山岳をクリアし、中間スプリントを経て待ち受けるのは1級山岳サンタ・バルバラ(距離12.7km/平均8.3%)だ。そして急斜面の16.3kmダウンヒルをクリアし、選手たちの前に最終1級山岳サン・ヴァレンティーノ(距離18.2km/平均6.1%)が立ちはだかる。

平均勾配が比較的緩やかなのは途中2度の下りを挟むため。後半は特に9%の登りが続き、ラスト3kmは短い下りから始まるトリッキーな登り返しが待ち受ける。最大12%区間を経て、ラスト250mは幅の広い最終ストレートが待っている。

マリアローザ争いが本格的に動き出す203kmレースは、生憎の雨模様の中スタートした。ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が積極的に逃げを目指し、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)らと共に7名の逃げ集団を形成する。しかしターリングは直後に落車し、詳細は明らかになっていないものの、そのままレースを棄権した。

ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)ら7名がエスケープ photo:RCS Sport

2つ目の1級山岳で遅れを取ったフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

中間スプリントをファンアールトが先頭通過した逃げ集団は、最初の2級山岳に2分52秒のリードで入る。メイン集団を先導するUAEチームエミレーツXRGがペースを緩めるなか、6名の先頭集団に頂上手前1kmで追走集団が合流。そこに入ったロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ)が先頭で頂上を通過し、最大18ポイントの加算に成功している。

雨で路面の濡れた下りでは、逃げていたアレッシオ・マルティネッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が落車してコースアウトする。駆けつけた救助隊により首を固定され、担架によって病院へ緊急搬送されたマルティネッリ。しかし顎と右臀部の打撲のみで脳震盪や骨折はないと、笑顔でサムズアップした写真と共にチームがSNSを通じて報告した。

そして逃げのリードを8分まで許したプロトンでは、総合上位のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)とプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)も落車する。カラパスがすぐにレース&集団復帰した一方で、ログリッチはレースリタイアを選択。前日ステージの登りで遅れ、総合順位を10位まで下げていた2023年大会の総合優勝者がここで姿を消した。

最後から2つ目の1級山岳でプロトンを先導するEFエデュケーション・イージーポスト photo:CorVos

フォルトゥナートが続く雨の上がった1級山岳も先頭で通過するなか、プロトンではUAEに代わりイネオス・グレナディアーズがペースメイク。これにフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)が遅れたものの、頂上手前で何とか集団復帰を果たした。

そして雨が上がり、太陽が選手たちを照らすなか、逃げ集団が先に最後から2つ目の1級山岳サンタ・バルバラ(距離12.7km/平均8.3%)に脚を踏み入れた。最大勾配14%の登りでは、その序盤からマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るフォルトゥナートが加速して人数を絞っていく。そのためファンアールトなどが遅れるなか、約8分遅れで登りに入ったプロトンはEFエデュケーション・イージーポストがペースを作る。

その結果1つ前の山岳でも遅れを取った総合3位のアユソが、プロトンから脱落。結果的にアユソは14分47秒遅れでフィニッシュしたため、UAEはマリアローザを着るイサーク・デルトロ(メキシコ)に総合優勝の望みを託すことになった。

アユソを失いながらも、最終山岳で牽引したUAEチームエミレーツXRG photo:RCS Sport

1級山岳サンタ・バルバラもフォルトゥナートがトップで通過する。一方のプロトンはUAEチームエミレーツXRGが主導権を握り、ラファウ・マイカ(ポーランド)とアダム・イェーツ(イギリス)のベテラン2名が21歳の若きマリアローザのためにペースメイク。逃げではヤニス・ヴォワザール(スイス、チューダー・プロサイクリング)が飛び出し、単独先頭で最終1級山岳サン・ヴァレンティーノ(距離18.2km/平均6.1%)に足を踏み入れた。

グランツールのデビュー戦で見せ場を作りたかったヴォワザールだったが、残り13km地点で敢えなく後続の逃げグループに吸収された。そしてヴォワザールが遅れ、レース先頭は共にXDSアスタナ所属のイタリア人であるフォルトゥナートとクリスティアン・スカローニ、そしてジェフェルソン・セペダ(エクアドル、モビスター)の3名に絞られた。

4分後方のプロトンでは逃げから遅れたファンアールトが、総合2位サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)のために牽引する。そしてファンアールトが役目を終えると再びマイカが引き始め、ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)のアタックは静観。レース先頭ではスカローニが残り11km地点でアタックし、追走するセペダに脚を使わせ、その背後にフォルトゥナートが控える教科書通りの攻撃を仕掛けた。

ロレンツォ・フォルトゥナートとクリスティアン・スカローニ(共にイタリア、XDSアスタナ)がレース先頭で進む photo:RCS Sport

精鋭集団を作ったサイモン・イェーツとデルトロ、カラパスの3名 photo:CorVos

しかし早々とセペダは遅れ、フォルトゥナートがスカローニに合流する。後続ではサイモン・イェーツのアタックにデルトロとカラパスが反応し、遅れてデレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)も追いつき4名に。そして今度はカラパスがアタックし、ライバルたちから総合タイムを奪いに行った。

レース先頭ではフォルトゥナートとスカローニがローテーションを回しながら、フィニッシュまでの残り距離を減らしていく。そして2名は手を繋ぎながらフィニッシュラインを通過。ステージ優勝をスカローニが飾り、区間2位のフォルトゥナートも山岳ポイントを319点まで伸ばし、最終的なマリアアッズーラ獲得を大きく引き寄せた。

フォルトゥナートとワンツーフィニッシュを飾ったクリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ) photo:CorVos

フォルトゥナートに感謝を伝えるクリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ) photo:RCS Sport

前日も逃げから3位と勝利に迫り、遂にグランツール初勝利を掴んだスカローニ。「この勝利がいまだ信じられない。チームにとって最高の1日となった。長い登りは得意ではないのだが、チームメイト(フォルトゥナート)と共に最高の作戦を実行することができた。その勝利はロレンツォのおかげ。2人で掴んだ勝利であり、これをチームや家族、彼女に捧げたい」とスカローニは語る。

スカローニは所属していたガスプロム・ルスヴェロ解散によって、2022年の7月からXDSアスタナで走る27歳。3年連続で出場するジロでは、いずれも逃げから勝利を狙い続け、そして今大会初となるイタリア人勝利を手に入れた。

辛くもマリアローザを守り、笑顔のイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport

一方、総合争いはカラパスが快調に脚を回すなか、ジーもデルトロ&イェーツという総合1位&2位を引き離す。デルトロたちにはマイペースで登るマイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング)が合流する一方、そのデルトロが遅れを喫する。そしてカラパスは1分10秒遅れの区間4位でフィニッシュし、そこから13秒遅れでジー。イェーツが42秒遅れでタイムロスを最小限にした一方、デルトロはカラパスから1分36秒遅れてレースを終えた。

この結果、デルトロは辛くもマリアローザの保持に成功。総合2位は26秒遅れでイェーツ、そして2分7秒遅れから31秒遅れまで大幅に迫ったカラパスが総合4位から3位まで順位を上げている。
ジロ・デ・イタリア2025第16ステージ結果
1位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ) 5:35:05
2位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ)
3位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:55
4位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +1:10
5位 デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) +1:23
6位 ジェフェルソン・セペダ(エクアドル、モビスター) +1:43
7位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) +1:52
8位 サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)
9位 ハイス・レイムライゼ(オランダ、ピクニック・ポストNL) +2:19
10位 ヤニス・ヴォワザール(スイス、チューダー・プロサイクリング) +2:31
13位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +2:46
マリアローザ 個人総合成績
1位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) 61:31:56
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) +0:26
3位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:31
4位 デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) +1:31
5位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +2:40
6位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 3:23
7位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) +3:31
8位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +4:07
9位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:36
10位 アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツXRG) +5:08
17位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) +13:27
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 240pts
2位 オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) 135pts
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 98pts
マリアアッズーラ(山岳賞)
1位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ) 319pts
2位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ) 125pts
3位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) 54pts
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
1位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) 61:31:56
2位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +4:07
3位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:36
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツXRG 184:38:55
2位 バーレーン・ヴィクトリアス +29:13
3位 XDSアスタナ +33:14
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, RCS Sport

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