参加者数は実に9000人弱。富士山を駆け上がる日本一のヒルクライムレースでチャンピオンに輝いたのは石井雄悟(MASXSAURUS)と三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)だった。各選手のコメント入りの詳報レポートをお伝えします。



大会お馴染みの存在となった別府史之さん。オルベアブースでもトークショーを行った photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会 @小野口健太
畑中勇介さん(KINAN)も参加。奥様の絹代さんは大会MCとして盛り上げました photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会 @小野口健太


朝6時30分、男子主催者選抜クラスがスタート photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会 @小野口健太

参加者実に9000人という、日本一のヒルクライムイベントの頂点を争うのが「主催者選抜」クラス。過去の富士ヒルや他のレースなどでの戦績が考慮され、大会主催者が選考した強豪のみがエントリー出来るカテゴリーであり、今年も日本一のヒルクライマーの称号を掛けて熱い戦いが繰り広げられた。

天気は晴れ。気温12〜3度ほど。ツアー・オブ・ジャパンを総合10位で走り終えたばかりで、大会3連覇が掛かった金子宗平(群馬グリフィン)を筆頭に男子主催者選抜クラスが午前6時30分にスタート。その2分後に続いたのが女子ディフェンディングチャンピオンの三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)らを含む女子主催者選抜クラスだ。

男子主催者選抜:石井雄悟(MASXSAURUS)が中盤から独走。初優勝を挙げる

2合目手前区間。大人数の男子選抜クラスが進む photo:So Isobe

玉村喬(天照CST)や宮崎泰史(KINAN RACING TEAM)が先頭を引っ張る photo:So Isobe
石井雄悟(MASXSAURUS)に成田眸(mkw)が合流し、先頭グループを形成する photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会 @小野口健太



会場を出発し、胎内交差点を過ぎて計測開始地点を通過。男子選抜クラスは比較的スローペースで動き出したため、1合目〜2合目までは大人数のまま隊列が進む。ゲスト参加の宮崎泰史(KINAN RACING TEAM)や玉村喬(天照CST)らが先頭を引っ張った末、まず12km地点で昨年覇者の金子が動きを作った。

ペースアップした金子に続いたのは、初優勝することとなる石井雄悟(MASXSAURUS)、山口瑛志(レバンテフジ静岡)、田中裕士、そしてKINAN宮崎。そこから「去年に比べて辛くなかったので、ガンガン前に出ました」と振り返る石井がアタックして独走に持ち込む。このアタックが独走勝利へと繋がった。

強い走りでレースを作った石井雄悟(MASXSAURUS) photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会 @小野口健太

初の富士HC主催者選抜での勝利を掴んだ石井雄悟(MASXSAURUS) photo:Naoki Yasuoka

金子宗平(群馬グリフィン)は追い上げ叶わず2位。3連覇の夢は潰えた photo:Naoki Yasuoka
金子に交わされつつ、自身初の3位表彰台を射止めた成田眸(mkw) photo:Naoki Yasuoka



金子や宮崎など、一度抜け出したメンバーは人数を減らしながら追い上げるメイン集団に引き戻され、独走に持ち込んだ石井には「逃げグループに入れなかったので、どこかでブリッジをかける必要があった」と言う成田眸(mkw)が大沢手前で追いつき先頭は二人。奥庭手前時点で十数名に減っていたメイン集団からは、金子と山口、田中、そして真鍋晃(EMU SPEED CLUB)が抜け出して追走グループを形成した。

先頭では「余裕があった」と振り返る石井が独走態勢を築き、追走グループから抜け出して猛追する金子が「脚を使い切ってしまった」と言う成田をフィニッシュ手前でパスして2位浮上。混戦の2位争いを尻目に、一人中盤から独走を続けた石井が富士ヒルクライム初制覇を遂げた。

フィニッシュ後に涙を流す石井雄悟(MASXSAURUS) photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会 @小野口健太

「表彰式が終わっても勝った実感が全くないですね。『まさか自分が』という感じです」と言う石井は、プロバイクショップ「走輪LABO・大阪鶴橋店」に勤務し、ロードレースをメインに走るホビーレーサー。「フィニッシュでは嬉しくて、今までの苦しさがふわっと抜けた感じがして、泣いちゃいました(笑)。フジヒルに限らず、他のレースでもまた勝てたらといいなという思いが強くなったように思います」と率直な気持ちを打ち明ける。今後は2週間後のニセコクラシックと全日本選手権にも出場するという。

一方、「正直残念でした。無難に最後までついて行ってスプリント勝負に持ち込んだら勝率は高かったと思うんですけど、ちょっと欲張って動いちゃいましたね」と敗れた金子宗平は言う。「今回3連覇がかかっていたのでとても悔しいですが、すぐに大事なレースが続くので気持ちはもう切り替えてます。全日本ロードの目標はロードとタイムトライアルの両制覇。TOJでだいぶ調子が上がったので、このまま維持して6月末まで持っていけたらと思ってます」とコメントを寄せている。

共に戦ったライバルに称えられる石井雄悟(MASXSAURUS) photo:Naoki Yasuoka

金子に交わされつつも、3位に入り自身初めての富士ヒル表彰台に乗ったのが成田だ。「序盤はあまり速くなかったので、これは後半勝負だなと思っていました。最後は金子さんにやられてしまいましたが、表彰台に乗れて良かったです。シャンパンファイトは難しかったですね(笑)」とコメントを加えている。



女子主催者選抜:三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)が2連覇達成

三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)が先頭を牽引 photo:So Isobe

全日本マスターズチャンピオンジャージを着て走った河田朱里(Infinity style) photo:So Isobe
選抜女子で圧倒的な強さを見せたのが連覇が掛かる三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)だった。2022年、2023年大会を連覇した佐野歩が不在の中、三島は序盤区間をローテーションしながら回し、3合目では2位に入る大石由美子のペースアップによって、三島と3位に入る河田朱里(Infinity style)という表彰台メンバーが選び出された。

3合目を過ぎたアップダウン区間で「全日本ロード前の力試しで参加した」と言う河田が千切れ、「行ける、と思った瞬間があった」と振り返る三島が終盤のトンネル区間で独走に持ち込む。左手を力強く振り上げた三島が大会連覇を果たした。

「バイクが変わり、スポンサーもたくさんついた中で臨んだ今年の富士ヒル。今年は主催者選抜女子ゴールドや2連覇といった目標を自分で掲げていたこともあり、応援の声がいい意味でプレッシャーになって、それが後押しになりました。普段はいろいろと深く考えないタイプなんですが、今年はちょっと違いましたね」と、トライアスロンからヒルクライマーに転身した三島は言う。

女子選抜クラスを連覇した三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT) photo:Naoki Yasuoka

三島に食らいつき、2位に入った大石由美子 photo:Naoki Yasuoka
昨年大会2位、全日本マスターズ女王の河田朱里(Infinity style)は3位フィニッシュ photo:Naoki Yasuoka



「今日は苦しさよりも嬉しさの方が勝って、笑いながらゴールできました。『にやけながら走ってたね』っていろんな人に言われました(笑)。とりあえず2連覇できたことは自分の中で大きな収穫として受け止めて、一度ご褒美モードに入って、また2ヶ月後の乗鞍に向けて頑張りたいです」。

昨年の全日本ロードマスターズで優勝した証のチャンピオンジャージを着て走る最後のレースとなった河田は、育児をこなしながらの2年連続表彰台。「前の二人が強くて凄かったです。今年の全日本選手権はエリートで出場するので、リザルトが残るように頑張りたいと思います」と話している。

主催者選抜クラス表彰台 photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会 @小野口健太

好天に恵まれた今年の富士ヒルクライムは、プラチナ(60分切り)を達成した選手が28人という好記録大会となった。選抜クラスチャンピオンのバイクは別記事で紹介します。
第21回Mt.富士ヒルクライム主催者選抜男子リザルト
1位 石井雄悟(MASXSAURUS) 57:35
2位 金子宗平(群馬グリフィン) 57:45
3位 成田眸(mkw) 57:48
4位 田中裕士 57:50
5位 山口瑛志(レバンテフジ静岡) 57:55
6位 真鍋晃(EMU SPEED CLUB) 58:00
第21回Mt.富士ヒルクライム主催者選抜女子リザルト
1位 三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT) 1:11:55
2位 大石由美子 1:12:02
3位 河田朱里(Infinity style) 1:13:55
4位 佐藤恵美 1:15:05
5位 大西麻代(Cycling-gym) 1:15:08
6位 栗原裕美子(髪人) 1:15:11
text:So Isobe