今大会最初の山岳フィニッシュで争われたジロ・デ・イタリア第7ステージ。精鋭集団からアタックしたフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)がデルトロとワンツーフィニッシュを決め、区間4位のログリッチがマリアローザを取り戻した。

チームプレゼンで笑顔のベルナル photo:RCS Sport 
最初の山岳ステージの臨むサイモン・イェーツ photo:RCS Sport

リーダーチームとして臨むリドル・トレック photo:RCS Sport

ジロ・デ・イタリア第7ステージ コースプロフィール photo:RCS Sport 第108回ジロ・デ・イタリアの本格的なマリアローザ争いが、第7ステージからからようやく動き出す。アペニン山脈を舞台とするこの日は、スタート直後から3級山岳を登坂し、長い下りを経て2つの2級山岳を立て続けにクリア。レッドブル・ポイントを経て、フィニッシュする1級山岳タリアコッツォは登坂距離11.9kmに平均勾配5.5%と大人しい。
しかしこの山岳が本領を発揮するのは残り3km地点から。最大勾配13%から平均は一気に10.1%まで跳ね上がり、フィニッシュ手前約300mはフラットのため、クライマーによるスプリントバトルも予想された。
前日の落車で2022年大会の覇者ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がレースを去るなか、同じ落車でヤン・ヒルト(チェコ、イスラエル・プレミアテック)が大腿骨骨折により不出走。そのため174名まで減った集団は、多くの選手がアームウォーマーを着用する寒さのなか午後12時55分にスタート。逃げはすぐに決まらず、ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ)が最初の3級山岳を先頭通過し、着用するマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)のリードを拡げた。

7名による逃げグループ photo:RCS Sport

プロトンは長時間に渡り、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエが先導した photo:RCS Sport
逃げ切りの可能性も十分考えられるステージで逃げ集団を形成したのは、クリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ)を含む7名の選手たち。続く2級山岳をポール・ダブル(イギリス、ジェイコ・アルウラー)がトップ通過し、その時点でレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが牽引するプロトンは2分25秒差と、あくまでもプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)で勝利を狙う姿勢をライバルたちに示した。
そして選手たちは登坂距離21.6kmの2級山岳ヴァード・デッラ・フォルチェッラに突入。逃げグループはそこでリードを4分10秒まで拡大させ、頂上ではダブルがここでもマヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)を退けて先頭通過を果たす。プロ3年目で28歳のダブルはバーチャルで総合リーダーにも立ち、念願のグランツールデビュー戦で見せ場を作った。
最終山岳に向け下り基調の道のりでは、総合エースであるジュリオ・チッコーネ(イタリア)を擁するリドル・トレックもプロトンを牽引する。スタート前に「これがマリアローザ着用する最後の日だ」と語ったマッズ・ピーダスン(デンマーク)も、リードアウトしてくれたチッコーネへの恩を返すように集団先頭でペースを作る。そんなハイペースで進むプロトンではロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL)とダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)らが落車し、バルデはレース復帰したものの、結果的に5分9秒遅れの57位と総合争いから脱落した。

1度縮まったタイム差を、再び拡げた逃げ集団 photo:RCS Sport

レース後半に入り、リドル・トレックのプロトン牽引に加わった photo:CorVos
一方のゴデュはチームメイトの力を借り、残り16km地点でプロトンに合流を果たす。その頃までに逃げとのタイム差は1分30秒まで縮まっており、1級山岳タリアコッツォ(距離11.9km/平均5.5%)に入った地点で、逃げのアドバンテージは1分を切った。
最終山岳ではバーレーン・ヴィクトリアスがペースを作り、逃げの選手たちを次々と飲み込んでいく。そして残り5km地点で逃げは吸収され、プロ1年目のアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス)がさらにスピードアップを敢行。平均勾配が10.1%まで上がる残り3km地点からは、集団の先頭はイネオス・グレナディアーズからリドル、そしてUAEチームエミレーツXRGと目まぐるしく変わっていった。
残り2kmを示すバナーを通過し、ベテランのラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG)がフアン・アユソ(スペイン)やイサーク・デルトロ(メキシコ)ら若手選手のために速度を上げる。そして20名まで絞られた集団から、残り600mでエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が仕掛けた。

最終山岳で集団の人数を絞るラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

アタックしたフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport
コロンビア王者ジャージを着る2021年大会覇者の加速には、デルトロやチッコーネがピッタリとマークする。この動きにログリッチが出遅れ、1度ペースが落ち着いた隙をつき、今度はアユソがアタック。高出力で踏み続けるアユソにベルナルやチッコーネは引き離され、そのままフィニッシュに飛び込んだ。
4秒遅れの2位にはデルトロが入ったため、UAEは今大会最初の山岳ステージでワンツーフィニッシュを達成。3位はベルナル、フィニッシュ手前でチッコーネを追い抜いたログリッチが4位に入っている。

後続を引き離し、グランツールで初のステージ優勝を挙げたフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
グランツールで自身初となるステージ優勝を手に入れたアユソ。「これが4度目のグランツールで、2度出場したブエルタ・ア・エスパーニャでは勝利を目前で逃していた。だからこの勝利を特別に感じ、2度と忘れないだろう。一度きりのアタックで決めるしかないと思っていた。だから他の選手たちの仕掛けには静観し、自分の距離になったことを確信してからフルガスでフィニッシュを目指した」と、マリアビアンカ(ヤングライダー賞ジャージ)を獲得した22歳のアユソはそう喜んだ。
そしてピーダスンが手放したマリアローザは、ログリッチが取り返す。「もちろん常に勝利は狙っている。今日は勝てなかったが、再びマリアローザを着る事ができて嬉しい。だけどまだジロは始まったばかりだ」とコメントしている。

スタッフと勝利を喜ぶフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport

表彰台で勝利を祝うフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport 
総合首位に返り咲いたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:RCS Sport




しかしこの山岳が本領を発揮するのは残り3km地点から。最大勾配13%から平均は一気に10.1%まで跳ね上がり、フィニッシュ手前約300mはフラットのため、クライマーによるスプリントバトルも予想された。
前日の落車で2022年大会の覇者ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がレースを去るなか、同じ落車でヤン・ヒルト(チェコ、イスラエル・プレミアテック)が大腿骨骨折により不出走。そのため174名まで減った集団は、多くの選手がアームウォーマーを着用する寒さのなか午後12時55分にスタート。逃げはすぐに決まらず、ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ)が最初の3級山岳を先頭通過し、着用するマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)のリードを拡げた。


逃げ切りの可能性も十分考えられるステージで逃げ集団を形成したのは、クリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ)を含む7名の選手たち。続く2級山岳をポール・ダブル(イギリス、ジェイコ・アルウラー)がトップ通過し、その時点でレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが牽引するプロトンは2分25秒差と、あくまでもプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)で勝利を狙う姿勢をライバルたちに示した。
そして選手たちは登坂距離21.6kmの2級山岳ヴァード・デッラ・フォルチェッラに突入。逃げグループはそこでリードを4分10秒まで拡大させ、頂上ではダブルがここでもマヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)を退けて先頭通過を果たす。プロ3年目で28歳のダブルはバーチャルで総合リーダーにも立ち、念願のグランツールデビュー戦で見せ場を作った。
最終山岳に向け下り基調の道のりでは、総合エースであるジュリオ・チッコーネ(イタリア)を擁するリドル・トレックもプロトンを牽引する。スタート前に「これがマリアローザ着用する最後の日だ」と語ったマッズ・ピーダスン(デンマーク)も、リードアウトしてくれたチッコーネへの恩を返すように集団先頭でペースを作る。そんなハイペースで進むプロトンではロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL)とダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)らが落車し、バルデはレース復帰したものの、結果的に5分9秒遅れの57位と総合争いから脱落した。


一方のゴデュはチームメイトの力を借り、残り16km地点でプロトンに合流を果たす。その頃までに逃げとのタイム差は1分30秒まで縮まっており、1級山岳タリアコッツォ(距離11.9km/平均5.5%)に入った地点で、逃げのアドバンテージは1分を切った。
最終山岳ではバーレーン・ヴィクトリアスがペースを作り、逃げの選手たちを次々と飲み込んでいく。そして残り5km地点で逃げは吸収され、プロ1年目のアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス)がさらにスピードアップを敢行。平均勾配が10.1%まで上がる残り3km地点からは、集団の先頭はイネオス・グレナディアーズからリドル、そしてUAEチームエミレーツXRGと目まぐるしく変わっていった。
残り2kmを示すバナーを通過し、ベテランのラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG)がフアン・アユソ(スペイン)やイサーク・デルトロ(メキシコ)ら若手選手のために速度を上げる。そして20名まで絞られた集団から、残り600mでエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が仕掛けた。


コロンビア王者ジャージを着る2021年大会覇者の加速には、デルトロやチッコーネがピッタリとマークする。この動きにログリッチが出遅れ、1度ペースが落ち着いた隙をつき、今度はアユソがアタック。高出力で踏み続けるアユソにベルナルやチッコーネは引き離され、そのままフィニッシュに飛び込んだ。
4秒遅れの2位にはデルトロが入ったため、UAEは今大会最初の山岳ステージでワンツーフィニッシュを達成。3位はベルナル、フィニッシュ手前でチッコーネを追い抜いたログリッチが4位に入っている。

グランツールで自身初となるステージ優勝を手に入れたアユソ。「これが4度目のグランツールで、2度出場したブエルタ・ア・エスパーニャでは勝利を目前で逃していた。だからこの勝利を特別に感じ、2度と忘れないだろう。一度きりのアタックで決めるしかないと思っていた。だから他の選手たちの仕掛けには静観し、自分の距離になったことを確信してからフルガスでフィニッシュを目指した」と、マリアビアンカ(ヤングライダー賞ジャージ)を獲得した22歳のアユソはそう喜んだ。
そしてピーダスンが手放したマリアローザは、ログリッチが取り返す。「もちろん常に勝利は狙っている。今日は勝てなかったが、再びマリアローザを着る事ができて嬉しい。だけどまだジロは始まったばかりだ」とコメントしている。



ジロ・デ・イタリア2025第7ステージ結果
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | 4:20:25 |
2位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | +0:04 |
3位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | |
4位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | |
6位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
7位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
9位 | マックス・プール(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +0:08 |
10位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) | |
11位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) | |
12位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +0:11 |
13位 | エイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター) | |
14位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツXRG) | +0:14 |
15位 | クリス・ハーパー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 24:32:30 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | +0:04 |
3位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | +0:09 |
4位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:27 |
5位 | マックス・プール(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +0:30 |
6位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) | +0:33 |
7位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツXRG) | +0:34 |
8位 | マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) | +0:37 |
9位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:39 |
10位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) |
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 141pts |
2位 | アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、ポルティ・ビジットマルタ) | 59pts |
3位 | オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | 55pts |
マリアアッズーラ(山岳賞)
1位 | ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ) | 58pts |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | 50pts |
3位 | ポール・ダブル(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | 36pts |
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | 24:32:34 |
2位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | +0:05 |
3位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:23 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツXRG | 73:38:12 |
2位 | リドル・トレック | +4:09 |
3位 | モビスター | +4:16 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, RCS Sport
photo:CorVos, RCS Sport
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