BMCの新型Roadmachine 01 Fourをテスト。独自のカーボン設計によって反応性と乗り心地を高次元でバランスし、最大40mmのタイヤクリアランスによって走行シチュエーションを選ばないオールロードの実力に迫る。



BMC Roadmachine 01 Four

ロードレースシーンでも28Cや30Cというワイドなタイヤが装着されるようになった現在、グランフォンドや長距離ライド向けのエンデュランスロードのタイヤクリアランスはそれ以上の拡幅傾向にあり、32C以上を想定するモデルが続々と登場している。

加速するワイドタイヤ化のトレンドの中、BMCのエンデュランスロード"Roadmachine"も、4年の時を経て第3世代へと進化。舗装路を快適に走ることを主眼に置いたエンデュランスロードバイクの枠を超え、あらゆる路面に対応するオールロードバイクとして生まれ変わった。

扁平したシートステーで快適性を高めている
洗練されたシェイプのチューブ集合部
カムテールデザインのフォークを採用する



2016年に発表された初代Roadmachineは、グランフォンドレース用に開発されたGranfondoシリーズの血統を受け継ぐマシンとしてラインアップされたモデルだ。2020年の第2世代では33mmまでのタイヤクリアランスと高剛性フレームにより、快適性と走行性能の両立を実現した。そして2024年、2度目のフルモデルチェンジを果たした第三世代Roadmachineは、コンセプトはそのままに正統進化を果たしている。

新型の最大の特徴は、32〜35mmタイヤに最適化されつつ最大40mmまでのクリアランスを確保した点だ。シクロクロスバイクと同等、あるいは凌駕するワイドタイヤは、大きなエアボリュームによる快適性や接地面積の広さによる安定性をもたらし、ロードバイクとして位置付けられる車体であってもオフロードへの適性を与えてくれる。

トップチューブにはボルト式のマウントが用意されている
ICS2ステムでケーブルをフル内装する


リアエンドのスルーアクスルは隠されている
フレーム形状はエアロを意識している



そのワイドなタイヤクリアランスを備えながらも、短めのリアセンター、最適化されたBB位置、そして反応性に優れたフロントエンドにより、ロードバイクとしての俊敏な走行性能を確保している。舗装路をリラックスして走りたい方や、サイクリングの途中に現れる荒れた路面にチャレンジしたい時に応えてくれるバイクに仕上がった。

フレームの剛性設計の面では、BMC独自のTCC ENDURANCE(TUNED COMPLIANCE CONCEPT)技術を採用。Angle Complianceと呼ばれる革新的な設計手法が用いられており、シートステー、フォーク、そしてシートポストの特定部分が、垂直荷重を受けた際に事前に計算されたパターンでたわむように設計されている。

ワンアクションでストレージにアクセスできる
内部には専用ポーチが備えられている



このTCC ENDURANCE技術により、横方向の剛性を損なうことなく垂直方向のしなやかさを生み出すことに成功。最も過酷な路面状況においても衝撃を効果的に吸収し、より長時間、より高強度の走行を可能にしている。

実用面での進化もトピックだ。D型シートポストとインテグレートできるリアライトやD-Fenderとの互換性、ダウンチューブ内蔵ストレージ+専用ポーチなどを備えており、スマートにサイクリングの準備を整えられる。

統合されたリアライトも用意されている
ボトルケージは2つともオリジナル設計だ
フォークエンドも封じられている



今回テストを行うBMC Roadmachine 01 Fourは、プレミアムカーボンを使用したハイエンドモデル。コンポーネントはシマノ ULTEGRA DI2で、ホイールはBMCオリジナルのカーボンモデル、タイヤはヴィットリア CORSA N.EXT(28C、クリンチャー)だ。なるしまフレンドの小畑郁とシクロワイアード編集部の高木三千成によるインプレッションをお届けしよう。



ーインプレッション

「高い剛性感とバランスの取れた乗り味を両立」小畑郁(なるしまフレンド)

「しっかりとした剛性は意図して設計されている」小畑郁(なるしまフレンド)

ロードバイクらしい剛性をしっかりと感じられた一台です。BMCはGranfondo(GF)シリーズをパリ〜ルーべ用の快適性と高い剛性を兼ね備えたレースバイクとして開発をしていて、その流れを汲むRoadmachineもGFシリーズのような開発意図が秘められている印象がありました。

エンデュランス系のバイクだからといって乗り心地が良いだけのバイクとせず、ペダリングに関わる剛性を十分に備えてることで踏み込んだ時の反応もしっかりしています。フレームの特性としてペダリング入力に対するバランスが非常に良く、バック部分が弱いとかフォークが弱いといった偏りは感じられません。

ペダリングに対する反応はTeammachine SLRを思わせるものがありながら、ジオメトリーなどで安定性を高めています。ダンシング時の振りの軽さや、直進走行時に風を受けた時、路面の起伏に対する手元のリアクションなどはルーズではなく、全体的にバランスの取れた特性を持っています。

「高い剛性感とバランスの取れた乗り味を両立」小畑郁(なるしまフレンド)

ただレースバイクのようなクイックなハンドリングでは長時間乗り続けると疲れてしまう、常に集中している必要があり、楽に乗れないと感じる方もいるでしょう。そういう面でストレスなく乗りたい方には、このRoadmachineは魅力的な選択肢となるはずです。

完成車のパッケージでテストした印象では、発進時にこそホイールの重量を感じるものの、一度巡航速度に乗ってしまえば気持ちよく走ることができました。チューブレスタイヤに換装すれば、また印象は変わってくるでしょう。このままエンデューロレースに出ても良いですし、太めのタイヤを低圧で運用してグラベルに行ったとしても十分対応できます。あるいはより軽量なホイールを選んでヒルクライムレースに出場しても、性能としては申し分ありません。

BMCにはエアロロードのTeammachine RやオールラウンドバイクのTeammachine SLRが用意されていて、ユーザーは自分に合ったバイクを選ぶことができます。全体的に完成度が上がってきている中で、それぞれのバイクの特徴を実際に体感することが、選択の決め手になるでしょう。

「あらゆるシーンでライダーを助けてくれる高性能バイク」高木三千成(シクロワイアード編集部)

「ライダーの走りをアシストしてくれる走行性能を備えている」高木三千成(シクロワイアード編集部)

素直に良いバイクです。エンデュランスロードへのイメージを良い意味で裏切るような加速の鋭さがあり、気持ちよく走ってくれました。もし自分がレースに出ず、サイクリングを楽しむのであれば次のバイクの最有力候補になるでしょう。それくらい気に入りました(笑)。

フレームの剛性感が非常に特徴的で、ライダーの力を受け止めるところは高い剛性を備えてつつ、ウィップする部分が随所にあります。イメージとしては高剛性の部分が撓む部分を押し出して、その反発で進んでいくような動きをしています。走らせ方としてはダンシングよりも、シッティングで荷重をかけるペダリングの方がフィットすると思います。

「想像以上に走りがよく、とても好印象」高木三千成(シクロワイアード編集部)

さらにハンドリングも直進安定性一辺倒ではなく、扱いやすさも感じられます。グラベルに持ち込んでみましたが、アグレッシブな動作にも機敏に反応してくれる素直なハンドリングを見せてくれました。試乗車には28Cのタイヤが装備されていたのですが、もっと太いタイヤを装備すれば、どこにでも行けると思います。

扁平形状のシートステーは適度にしなりますが、より顕著に感じられたのはシートポストのしなりです。オフロードでバイクが跳ねた時にリアサスのように働くおかげで、腰が跳ねずにリアタイヤへ荷重出来るので、路面へトラクションをかけ続けられます。急ブレーキ時もしっかりと路面を抑えてくれる感覚があり、あらゆる場面でフレームがライダーを助けてくれるように機能する印象です。

ライトグラベルをモノともしない走破性を備える

かつ巡航スピードを維持するのも楽だったので、本格的な競技とまではいかないものの、サーキットエンデューロに参戦して楽しむようなポテンシャルは十分にあります。例えば、剛性が高いバイクが好き、気持ちよく進むバイクが好きな元レーサーのような脚力がある方が乗っても満足できるバイクかもしれませんね。

レースにも対応できる能力を備えていますが、ダウンチューブストレージやインテグレートデザインのリアライトはサイクリングユースで実用的ですし、このバイクでは色々な場所を走ることを楽しんでもらいたいです。サイクリングでも加速性能や巡航性能を求める場面はあるので、その性能をしっかりと作りこむことには納得できます。ライダーの足りない部分を補ってくれるような性格のRoadmachineは、サイクリングやロングライドで心強い味方となってくれるでしょう。

BMC Roadmachine 01 Four

BMC Roadmachine 01 Four
フレーム:Roadmachine 01 Premium Carbon with Tuned Compliance Concept Endurance
フォーク:Roadmachine 01 Premium Carbon with Tuned Compliance Concept Endurance
コンポーネント:Shimano Ultegra DI2 2x12
ハンドル:Easton EC70 SL Carbon もしくはEC90 SLX Carbon
ステム:BMC ICS 02 - Integrated Cockpit Design
シートポスト:Roadmachine 01 Premium Carbon
サドル:Fizik Argo Tempo R5 150mm
ホイール:CRD-321
タイヤ:Vittoria Corsa N.EXT 30mm
重量:7.8 kg
サイズ:47、51、54、56
価格:1,430,000円(税込)



インプレッションライダープロフィール

小畑郁(なるしまフレンド)
小畑郁(おばたかおる)
圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2020年以来、ベルマーレレーシングチームの一員として国内レースを走る。

なるしまフレンド神宮店(レコメンドショップページ)
なるしまフレンド HP


高木三千成(シクロワイアード編集部)
高木三千成(シクロワイアード編集部)

学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。



text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO、Naoki Yasuoka
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