2024/12/13(金) - 17:45
11月30日、千葉県浦安市でJBCFロードシリーズの2024年最終戦「浦安クリテリウム」が開催された。このレースをもって2024年の各カテゴリーのランキングが確定。Jエリートツアーでは「ミネルヴァあさひ」が2年連続のチーム総合優勝を決めた。自転車専門店サイクルベースあさひの従業員で構成されたチームはどのようなものなのか、メンバーに話を聞いた。
「ミネルヴァあさひ(MiNERVA-asahi)」は、自転車専門店「サイクルベースあさひ」の従業員で構成されたチーム。2020年に結成され、ロードレースだけでなく、シクロクロスやMTBを走るメンバーが揃い、2024年は22名が所属する。特にロードレースでは、JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)が主催するJBCFロードシリーズをメインに活動。JエリートツアーではトップカテゴリーのE1以下、各カテゴリーに参戦する。
2024年はE1カテゴリーで計7勝、布田直也が年間ランキング3位となり、チームランキング連覇を果たした。さらにマスターズカテゴリーでは中村将也が11勝を挙げ、年間ランキング2位にダブルスコア以上の大差をつけて総合優勝を決めた。
チームの母体となる「サイクルベースあさひ」は、北海道から九州まで(青森県と沖縄県を除く)日本全国に540店以上を展開する国内有数の規模を誇る自転車専門店として知られる。一般向けのシティサイクルからスポーツサイクル、子供用の補助輪付き自転車やストライダー(一部店舗)まで、幅広い種類の自転車を取り扱う。街中や大通り沿いなどで看板を見かけたことのある方も多いだろう。そうした店舗で働きながらレース活動をする「ミネルヴァあさひ」はどのようなチームなのか?ランキング3位の布田と、マスターズ総合優勝の中村に話を聞いた。
布田直也
陸上競技の経験を活かして自転車競技の世界へ
今年は調子を落とすことなく、落車や怪我もなく安定して過ごせたと思います。開幕戦の鹿屋・肝付ロードレースでの3位がベストリザルトでしたが、同じレースで優勝した武井裕さんが年間チャンピオンになりました。そこで勝てていれば年間総合首位に手が届いたかなと思うと、ベストでもありワーストでもあるレースでしたね。
最終的には高岡亮寛さんと競って年間3位に終わり、昨年までと比べれば良い成績ではあるのですが、最後の詰めが甘かったなと感じています。それが今年の反省点です。
ヒルクライマーというほどではないですが、アップダウンのあるコースで少人数に絞っていけるような厳しいレースが得意です。今年は1勝も出来なかったので、来年は得意な展開に持ち込んでなんとか1勝したいですね。でも仕事もあるので、怪我せず楽しく出来るのが一番だと思っています。
2018年にあさひに入社して、宮城県内の店舗で働いています。元々は陸上競技の中長距離種目をやっていて、あさひ入社前は趣味程度に自転車に乗るくらいでした。競技として自転車に乗るようになったのは、ミネルヴァあさひが立ち上がって加入してからなので、今年で4年目です。練習方法や苦しくなった時のメンタリティとか、陸上競技と共通するところも多いので、経験が活かせていると思います。
普段の練習はチームのオンラインミーティングやSNSでのやりとりを通じて共有し、経験豊富な選手にアドバイスをもらったり質問して各自の練習に反映させています。僕らの仕事は春が忙しいのでシーズンの開幕時期と重なりますが、どの仕事にも繁忙期はあると思うので、それを言い訳にはしたくないと思っています。その中で工夫してどれだけやれるのか、それがうまく出来れば仕事の忙しさに関係なく自転車に取り組めると考えています。
自分の好きなことを仕事に結びつけられる分野と、それを理解してくれる会社はそう多くないと思います。あさひは仕事をやりながら自転車競技をする環境が揃っているので、競技を続けたい人だけでなく、これから始めてみようと思う人にも良い環境になると思います。
中村将也
「目指すところが同じ点が他チームと大きな違い」
昨年は一桁のポイント差でマスターズリーダーを逃してしまったので、今年はもう一度チャレンジするつもりで臨みました。全戦入賞を目標に掲げ、それを達成してマスターズリーダーになれたので充実したシーズンだったと思います。特にタイムトライアルで勝つことを最大の目標にしていて、おんたけタイムトライアル(長野県、5月開催)と、ながわまちタイムトライアル(長野県、7月開催)で優勝出来たことが良かったです。逆に東日本ロードクラシック(群馬CSC、4月開催)と、群馬CSCロード9月大会は消極的なレースをしてしまい、表彰台も逃してしまったワーストレースでした。
僕は本社でネット通販サイトに関わる仕事をしているので、基本的には土日が休みになるのですが、たまに店舗勤務のメンバーと休みを合わせて一緒に練習することもありますが、基本は1人で練習したり、関西圏の強豪チームの練習に混ぜてもらうこともあります。レース以外でメンバーが集まるのは難しいので、トレーニングはメンバー個々にすることになりますが、隔週でオンラインミーティングを行なって意思統一や目標、練習の進捗状況などを話し合っています。
同じ会社のメンバーの集まりなので、仕事もレースも目指すところが同じという点は他のクラブチームと大きな違いだと思います。会社からサポートして頂きながら活動する中で、なんとなく走っているのではなく、一人一人が仕事目線も交えて自覚をもって走っていることが強さにもつながっていると考えています。
仕事もレースも自転車に関われることで羨ましいと言われることもありますが、とは言っても好きなことばかり関わっていられるわけではないので、一長一短はあります。特に自転車業界は春が一番忙しい時期なので、シーズンの前半戦は十分な練習時間が取れないこともあるし、レースに出ること自体が難しいこともあります。だからシーズン中盤から後半にかけて調子を上げていくことが多いですね。それでもレースでの経験を仕事に活かすことができる場なので、興味のある方はぜひ来てほしいと思います。
僕は来年40歳になるので、どこまでこの力を維持していけるかは分かりませんが、来年も1年間終わったあとに「今年もしっかり走れた」と思えるようなシーズンにしたいです。
text:Satoru Kato
協力:株式会社あさひ
「ミネルヴァあさひ(MiNERVA-asahi)」は、自転車専門店「サイクルベースあさひ」の従業員で構成されたチーム。2020年に結成され、ロードレースだけでなく、シクロクロスやMTBを走るメンバーが揃い、2024年は22名が所属する。特にロードレースでは、JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)が主催するJBCFロードシリーズをメインに活動。JエリートツアーではトップカテゴリーのE1以下、各カテゴリーに参戦する。
2024年はE1カテゴリーで計7勝、布田直也が年間ランキング3位となり、チームランキング連覇を果たした。さらにマスターズカテゴリーでは中村将也が11勝を挙げ、年間ランキング2位にダブルスコア以上の大差をつけて総合優勝を決めた。
チームの母体となる「サイクルベースあさひ」は、北海道から九州まで(青森県と沖縄県を除く)日本全国に540店以上を展開する国内有数の規模を誇る自転車専門店として知られる。一般向けのシティサイクルからスポーツサイクル、子供用の補助輪付き自転車やストライダー(一部店舗)まで、幅広い種類の自転車を取り扱う。街中や大通り沿いなどで看板を見かけたことのある方も多いだろう。そうした店舗で働きながらレース活動をする「ミネルヴァあさひ」はどのようなチームなのか?ランキング3位の布田と、マスターズ総合優勝の中村に話を聞いた。
布田直也
陸上競技の経験を活かして自転車競技の世界へ
今年は調子を落とすことなく、落車や怪我もなく安定して過ごせたと思います。開幕戦の鹿屋・肝付ロードレースでの3位がベストリザルトでしたが、同じレースで優勝した武井裕さんが年間チャンピオンになりました。そこで勝てていれば年間総合首位に手が届いたかなと思うと、ベストでもありワーストでもあるレースでしたね。
最終的には高岡亮寛さんと競って年間3位に終わり、昨年までと比べれば良い成績ではあるのですが、最後の詰めが甘かったなと感じています。それが今年の反省点です。
ヒルクライマーというほどではないですが、アップダウンのあるコースで少人数に絞っていけるような厳しいレースが得意です。今年は1勝も出来なかったので、来年は得意な展開に持ち込んでなんとか1勝したいですね。でも仕事もあるので、怪我せず楽しく出来るのが一番だと思っています。
2018年にあさひに入社して、宮城県内の店舗で働いています。元々は陸上競技の中長距離種目をやっていて、あさひ入社前は趣味程度に自転車に乗るくらいでした。競技として自転車に乗るようになったのは、ミネルヴァあさひが立ち上がって加入してからなので、今年で4年目です。練習方法や苦しくなった時のメンタリティとか、陸上競技と共通するところも多いので、経験が活かせていると思います。
普段の練習はチームのオンラインミーティングやSNSでのやりとりを通じて共有し、経験豊富な選手にアドバイスをもらったり質問して各自の練習に反映させています。僕らの仕事は春が忙しいのでシーズンの開幕時期と重なりますが、どの仕事にも繁忙期はあると思うので、それを言い訳にはしたくないと思っています。その中で工夫してどれだけやれるのか、それがうまく出来れば仕事の忙しさに関係なく自転車に取り組めると考えています。
自分の好きなことを仕事に結びつけられる分野と、それを理解してくれる会社はそう多くないと思います。あさひは仕事をやりながら自転車競技をする環境が揃っているので、競技を続けたい人だけでなく、これから始めてみようと思う人にも良い環境になると思います。
中村将也
「目指すところが同じ点が他チームと大きな違い」
昨年は一桁のポイント差でマスターズリーダーを逃してしまったので、今年はもう一度チャレンジするつもりで臨みました。全戦入賞を目標に掲げ、それを達成してマスターズリーダーになれたので充実したシーズンだったと思います。特にタイムトライアルで勝つことを最大の目標にしていて、おんたけタイムトライアル(長野県、5月開催)と、ながわまちタイムトライアル(長野県、7月開催)で優勝出来たことが良かったです。逆に東日本ロードクラシック(群馬CSC、4月開催)と、群馬CSCロード9月大会は消極的なレースをしてしまい、表彰台も逃してしまったワーストレースでした。
僕は本社でネット通販サイトに関わる仕事をしているので、基本的には土日が休みになるのですが、たまに店舗勤務のメンバーと休みを合わせて一緒に練習することもありますが、基本は1人で練習したり、関西圏の強豪チームの練習に混ぜてもらうこともあります。レース以外でメンバーが集まるのは難しいので、トレーニングはメンバー個々にすることになりますが、隔週でオンラインミーティングを行なって意思統一や目標、練習の進捗状況などを話し合っています。
同じ会社のメンバーの集まりなので、仕事もレースも目指すところが同じという点は他のクラブチームと大きな違いだと思います。会社からサポートして頂きながら活動する中で、なんとなく走っているのではなく、一人一人が仕事目線も交えて自覚をもって走っていることが強さにもつながっていると考えています。
仕事もレースも自転車に関われることで羨ましいと言われることもありますが、とは言っても好きなことばかり関わっていられるわけではないので、一長一短はあります。特に自転車業界は春が一番忙しい時期なので、シーズンの前半戦は十分な練習時間が取れないこともあるし、レースに出ること自体が難しいこともあります。だからシーズン中盤から後半にかけて調子を上げていくことが多いですね。それでもレースでの経験を仕事に活かすことができる場なので、興味のある方はぜひ来てほしいと思います。
僕は来年40歳になるので、どこまでこの力を維持していけるかは分かりませんが、来年も1年間終わったあとに「今年もしっかり走れた」と思えるようなシーズンにしたいです。
text:Satoru Kato
協力:株式会社あさひ
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