9月28・29日の2日間、長野県白馬村で開催されたiRC白馬グラベルミーティングを体験レポート。走る距離は1日25kmづつで難易度低め。ヨガ体験、乗馬、BBQ、グルメなどを楽しむ2日間のグラベルフェスは、初心者から親子連れまで楽しめる優しさに溢れていた。



会場は白馬グリーンスポーツの森キャンプ場

地元白馬の珈琲ロースターなどが出店
会場で出迎えてくれた可愛いデコレーション



白馬グラベルミーティングはiRCタイヤが企画した初のグラベル系イベント。グラベルレースの最高峰イベント、アメリカのアンバウンドグラベルの公式スポンサーをつとめる同社だが、意外にも今回の対象はグラベル初心者。場所は長野県の白馬村。しかもイベントは2日間で、ライドの距離は一日25kmずつという短さ。しかもコース難易度は誰でも走れるようにかなり低めになっているという。

親子で参加です
フルサスMTBとグラベルバイクの女性ペア

バイクもファッションもおしゃれに決まったグラベル夫婦 photo:Makoto AYANO

招待状には「お腹をすかせてきてね」とある。イベントのメイン会場は白馬グリーンスポーツの森キャンプ場。初日のイベントスタートも10時からと、のんびりなタイムスケジュール。広々とした芝生広場の会場に到着してみると、LAVAGGIO(ラバッジョ)の消防車にiRCブース、マッサージやいろんなグルメ店の出店があり、遊び回る子どもたちの笑い声。さっそくほんわかした空気が流れている。集まっている参加者の出で立ちからもレースイベントとは違うユルさが伝わってくる。

配布されたチケットの使い途をあれこれ考える
Tシャツにシルクスクリーンプリントしてみました



グラベル以前にサイクリングが初めてという人も多い photo:Makoto AYANO

地元ロースター「山笑う珈琲」オリジナルブレンドをいただきます
白馬産フルーツのスムージーをいただく



受付すると渡されるのがイベントチケット。白馬豚の丸焼きふるまい券、BBQ券、ドリンク券、翌日の朝食補助券など、2日間のイベント中に乗馬体験やヨガ、マッサージなど各種アクティビティに使うことができ、飲食チケットも会場内に出店している地元のグルメなお店やコーヒー、クラフトビールなどと引き換えに使用することができる。もちろん洗車のラバッジョにも。

会場は馬とふれあえるキャンプ場だ photo:Makoto AYANO

会場がキャンプ場だから、キャンプして2日間参加するという人もいるようで、グラベルとキャンプは相性が良いんだなぁ、と納得。ライドのスタートは昼12時スタートことで準備をすすめる。立派なフォトブースが用意され、参加者の皆さんは記念撮影に余念がない。

芝生のメイン広場にはこんなに立派なステージが photo:Makoto AYANO

ライドは両日とも距離25kmと短い。グラベル率は約40~50%で、大会側の案内では「コース難易度は日本のグラベルイベントではかなり低い方です。急な山道の下りなどはありません」とある。自転車はオフロード走行可能なバイクならグラベルバイクやMTB、クロスバイク、そしてEバイクでもOK。足回りに不安があればiRCタイヤのサポートがあるので心配なし。会場でアドバイスを受けてお目当てのタイヤを購入して装着する人もちらほら。

ラバッジョ消防車の放水を浴びながらスタート! photo:Makoto AYANO

ライドに出る前にさっそく乗馬体験する人、ヨガをする人、ブランチする人など、それぞれ過ごす。昼までおしゃべりして、のんびりしてからライドへ出発。スタートラインではLAVAGGIO消防車の放水を受けて、数人づつのグループごとに姫川沿いのグラベルへと走り出していく。

キャンプ場を出てすぐグラベルに。ジャリジャリと走るのは新鮮だ photo:Makoto AYANO

1日目の走るエリアは神城から青木湖にかけて。JR大糸線沿いに広がる里と田園風景のなか、地元の人が農作業で使うようなローカル道や農作業道みたいな小径をつないで走る。

味のある人里を走り抜ける photo:Makoto AYANO

黄金に色づいた田んぼの脇に早くもソファが登場。グラベルでおなじみのソファは記念撮影用で、他のグラベルイベントで設置されているのを知ったスタッフが用意したものだとか。iRCのグループ企業のINOACはクッション材などを製造するメーカーということもあり、ソファに関しては一家言あるらしい(笑)。メイン会場に用意されたそれは50万円もするという超高級ソファ!。

里山にセットされたグラベルソファ&チェアで記念写真をパチリ photo:Makoto AYANO

前半は舗装路多めでもペースはまったり。7歳の子どもがリードするキッズグループも居る。時々登場するグラベルも、小さなMTBに乗った子どもたちが器用に走り抜けていく。MTBの女性や親子連れ一家も走っている。

小学生の子どもがリードするグループ photo:Makoto AYANO

エイドは2箇所に用意され、1箇所目でさっそくジェラート登場。このアイスは隣の「農かふぇ」作で、地元でも知られた美味しさ。皆でのんびりアイスを食べておしゃべりが弾む。

最初のエイドでさっそくジェラートをいただく
ジェラートいただきます



田んぼや丘をつないで走る里山のグラベル photo:Makoto AYANO

アップダウンの多い林を抜けたら白馬スノーハープに到着。長野五輪のクロスカントリースキー競技会場となったトラックにもソファが置かれ、皆で記念写真をパチリ。信州名物のおやきをいただく。この先に設けられたEXコースは青木湖の外周道路を一周するエクストラライドで、もっと走りたい人はそちらへ。

走りやすい森のグラベルを抜けて photo:Makoto AYANO

エイドでは信州名物おやきがふるまわれた
地元白馬の女子高生がボランティアでサポートしてくれた



白馬スノーハープに用意されたチェアに座って記念写真パチリ photo:Makoto AYANO

余裕がたっぷりあったのでEXコースに行ってみれば、木々に囲まれた湖畔道路は涼しくて走りやすかった。5kmと聞いていたけど舗装オンリーの9kmの寄り道は、速すぎる人の調整にもぴったり?

農作業に使われる田園のグラベルを行く photo:Makoto AYANO

サイクリングの道標が立つ白馬小径を行く
収穫を待つ稲穂がみごとな田園を行く



子どもや女性を含んだグループもグラベルを走りきった photo:Makoto AYANO

姫川沿いのサイクリングロードや田んぼの間の小径を走り、会場の白馬グリーンスポーツの森キャンプ場に戻る。まだ夕方と言うには早い時間で、イベントはここからが本番? 立ち並ぶ飲食ブースのフードトラックを前に、朝に受け取ったチケットの使い途を考えながら迷う時間も楽しい。

半日かけてこんがり焼かれた豚をさばきます photo:Makoto AYANO

手際よくさばかれる豚の丸焼き。美味しそうな匂いがたまらない photo:Makoto AYANO

グルメのメインイベントは白馬の精肉店「大国屋」による白馬豚の丸焼きの振る舞いショー。午前中からバーバキューグリルにセットされた豚はいい感じにローストされていい香りが漂っている。大国屋の社長さんがナイフで切り分けて、特製のタレをつけてふるまってくれるのはちょっとしたエンターテインメントだ。筆者も豚の丸焼きをクラフトビールとともにいただき、大満足でした。

日頃の疲れを取り去ってくれるマッサージで極楽時間
丹野夏波さん(弱虫ペダルサイクリングチーム)と白川幸希選手(キナンレーシングチーム)、MCオッチーさんのトークショー



グラベルを走り終わってのランチに話も弾む photo:Makoto AYANO

そしてディナーは地元白馬のTracks Barのハンバーガーや地野菜と肉を使ったBBQプレートが嬉しい。軽食、ビール、コーヒー、スィーツなど地元白馬の人気店が軒を並べ、マッサージブースも大人気で行列ができるほど。ライドの疲れを癒やしてくれるというよりは、日頃の疲れが癒えるチルタイムだ。

地元ライダーによる華麗なMTBエアショーを観戦

日暮れからはMTBのエアショーが開催された。BMXプロライダーの丹野夏波さん(弱虫ペダルサイクリングチーム)をはじめ地元マウンテンバイカーによる華麗なジャンプ&エアーを観戦。地元の名産やIRC製品、INOACの製品など豪華賞品がもらえる大抽選会も大いに盛り上がった。

豪華賞品がもらえる大抽選会は大いに盛り上がる photo:Makoto AYANO

2日間のイベントなので夜はそれぞれの宿へ。白馬のリゾートホテルやペンションに泊まる人、キャンプ場で焚き火を囲んでからテントに潜り込む人など、それぞれ。



2日目のスタートにモーニングヨガで身体をほぐす photo:Makoto AYANO

2日目の朝はモーニングヨガからスタート。INOAC製のマットを芝生に敷いて、インストラクターさんの指導付きでヨガ&ストレッチ。白馬の爽やかな空気のもとで身体をほぐせば昨日のライドの疲れも日常のストレスもどこかへ飛んでいく。

レンタサイクルで走るグラベル初体験グループ photo:Makoto AYANO

そして2日めに合流する名古屋からのバスツアーによる約40人の参加者一行は、皆がスポーツサイクリングとは無縁の初心者だとか。インストラクターさんから変速やブレーキ操作の基礎からの説明を受け、今日のグラベル体験ライドツアーにチャレンジする。女性や10歳前後のキッズも多く、僕らサイクリストにとっては簡単なライドでも、実際それは大冒険に違いない。

2日目のスタート。親子でスタートに並ぶ photo:Makoto AYANO

2日目のコースは初日と違うもので、白馬から北の八方にかけてのエリアへ。姫川沿いに北上したらアルプスあづみのセンチュリーライドでもおなじみの白馬連峰が望める橋へ。そこでは美味しい葡萄が振る舞われた。

走りやすい姫川沿いのグラベルを行く photo:Makoto AYANO

インフルエンサーのもえぞーさんもグラベルを楽しみながら走る
里道では道祖神が見守ってくれる



前半にさっそく登場したEXコースは野平ヒルクライムを経てグラベルの長いダウンヒルへ。行った人によればこのグラベルの下りはちょっと難しかったけど、かなり楽しめたという。

AACRでもおなじみ山岳パノラマが楽しめる橋で photo:Makoto AYANO

地形的にアップダウンが多く、白馬岩岳から白馬大橋エリアを経て八方スキー場の脇へと登っていくグラベルヒルクライムに。このあたりは初心者には登りが厳しいが、難しいルートを走らずにショートカットするエスケープルートも用意してあり、速い人と遅い人が結局は同時にエイドに着くような設定がしてあった。

エイドで提供された長野の葡萄
2日目のEXコースは森の中のグラベルダウンヒル!



このあたりになるとグラベルというよりもトレイルに近いルートとなっていて、MTBに乗った人が喜びそうなテクニカルな上り下りが登場する。

白馬八方のペンション街を抜けるグラベルを走る photo:Makoto AYANO

登りでの子どもサポートにゴムチューブで牽引するパパも
スキー場の管理道をヒルクライムして標高を上げていく



筆者は地元サポートライダーとキナンレーシングチームの白川幸希選手と一緒に難しいグラベルの登りにチャレンジしたが、登った先はゲレンデ上から白馬の町並みが一望できるパノラマダウンヒルとなり、かなりチャレンジングなルート設定に驚いた。ユルいと思っていたコースは、実はエキサイティングな隠し味があった。

パノラマ広がるスキー場のゲレンデから下るダウンヒル photo:Makoto AYANO

そして白川選手はグラベルライドは初めての経験で、ロードバイクに32Cのグラベルタイヤを取り付けてのライドだったが、上手い人はどんなバイクでも上手い!。そして楽しすぎてなんとコースを2周走ってしまったんだとか(笑)。

コルナゴのロードバイクにBOKEN PLUS 32Cタイヤを取り付けて走ったキナンの白川幸希選手
地元白馬の赤だすき製麺所のひやむぎをいただきます



ゲレンデの斜面を臨むエイドでは信州といえばの地元・赤だすき白馬製麺所提供のひやむぎも供され、設置されたグラベルソファでは記念撮影を楽しめた。

自然いっぱいの森の中の小径は気持ちがいい photo:Makoto AYANO

おしゃれなリゾートホテルが立ち並ぶ白馬八方の奥を縫うように走り、白馬八方尾根スキー場ではジャンプ競技の練習シーンを見物できた。そこからは後立山連峰に見守られての川沿いのグラベルダウンヒルで一気に白馬グリーンスポーツの森キャンプ場へとフィニッシュ。

せせらぎの小径を行く
白馬八方尾根スキー場ではジャンプ競技の練習風景が観れた



走り終わってみれば距離は短くても変化に富んだルートで、中上級者もそれなりに満足な走り応え。まして初心者には冒険ライドだったことだろう。

ダイナミックな山岳風景をバックにダウンヒル photo:Makoto AYANO

昼過ぎに会場に着き、お待ちかねランチタイム。完走証を受け取り、一緒に走った参加者の皆さんと一緒に軽めのランチいただきながら談笑。筆者はこの日はがっつり食べたくてフードトラックのハワイアンチーズバーガーを頂きました。

グラベル初体験の女性も完走証を手にニッコリ
フィニッシュしてからもグルメタイムは続きます



ライドは早めに終えられたので、乗馬体験やマッサージを楽しむ参加者たち。LAVAGGIOも今日はセルフ洗車デーということで、福井さんのアドバイスを聞きながら消防車のホースと洗車器を使って自分でバイクウォッシュを楽しむ。

会場のキャンプ場を巡る乗馬体験が出来た photo:Makoto AYANO

皆が早めに帰路につけるよう、閉会式と2日目の昼のプログラムは簡易的。でも参加者の皆さんはイベントで過ごした2日間の名残惜しさいっぱいで、芝生で談笑を続けていた。

ラバッジョの消防車でセルフ洗車でバイクをクリーニング photo:Makoto AYANO

世界的に人気急上昇中のグラベルイベント。欧米ではレースが人気で、日本ではファンライド形式のグラベルライドイベントが主流。しかし人気のニセコグラベルやグラベルクラシックやくらいなどはファンライドながらもいずれも100km近い長距離を走る過酷なもの。それぞれに距離の短いクラスは用意されるが、イベント丸ごとが初心者向けに設定されたイベントは他に類を見ない。

参加者はほとんどがグラベル初心者で、子どもや家族連れ、女性も多かった。そうした人が余裕を持って楽しめるコースで、クロスバイクやMTBで参加してもまったく問題なし。そして走る以外は会場周辺でグルメやアトラクションを楽しむ時間もたっぷりとあった。これならサイクリストでない誰を誘っても大丈夫。まったりとくつろぎながら楽しめる。そんなチルなイベントだった。



アメリカのアンバウンドグラベルではオフィシャルスポンサーも努めているiRCが、こうしたグラベル入門者に優しいイベントを企画したのはなぜだろう。主催側の中心となったお二人にお話を伺った。

イベントを企画した田中国大さん(iRCタイヤ広報)
イベント企画・田中国大さん(iRCタイヤ広報)

目指したのはフェスです。走る距離は短いし、それが物足りないと思う人もいると思いますが、初心者の人には十分走り応えがあって楽しめるコース。実は昨年自分でニセコグラベルを走って、「もっとユルくしたい」と思ったんです。もっと気軽に参加できるグラベルイベントが欲しい、と。

狙ったのはグラベルの裾野を広げるということ。まだ知られていないグラベルという遊びを知ってもらいたい。誰もが参加できて、グラベルを始める人が増えてくれること。いろんな人を惹きこむためには、自転車だけじゃなく他のコンテンツが必要だということはわかっているので、ならばいろんなことをやってみよう!と。

子どもでも走れるグラベルイベント。親子連れ参加は大歓迎だ

豚の丸焼き、走る前のヨガ、乗馬体験、Tシャツのシルクスクリーンプリント体験などなど、誰でも楽しめるコンテンツ満載のイベントにしました。そこにニセコグラベルでみたこと、アンバウンドでみたテイストを取り入れてみようと、レストランをジャックしたり、コース上にソファを置いたりしました。地元白馬の方々とつくった手作り感がすごいです(笑)。

2日間、皆さんが楽しんでくれている様子が見れたので良かった。ライドの方も小学生の子供達が完走できて喜んでくれたのがとても嬉しかったです。楽しくて、美味しい、誰もが楽しめるグラベルのフェス。全体としてブラッシュアップしたいところはありますが、やり尽くした感はありますので来年はどうしようかな、と今からワクワクしています。もっと参加者が増えたらいいなと思います。

大会実行委員長 原知義さん(白馬MTBクラブ/北アルプス自転車協議会) photo:Makoto AYANO
大会実行委員長・原知義さん(白馬MTBクラブ/北アルプス自転車協議会)

素人の集まりですが白馬にはイベントをつくるスキルがあります。IRCさんの「この先10年は続けたい」という熱い思いを伝えていただき、地元としても白馬エリアの自転車フィールドを増やしたいという思いと同調できました。一度きりのイベントではなく、地元の活性化につながって、トレイルの整備など僕らの普段の活動の延長線上でできるのなら歓迎と、全面的なご協力を決めました。

エイドでは地元白馬の皆さんがサポートにあたってくれた photo:Makoto AYANO

白馬には年間10以上のMTBイベントが有って、すでに白馬岩岳MTBパークがあります。そして白馬の良さも感じてもらいたいから、幅広い年代の人に自転車を楽しんでもらうには子どもや家族連れ、初心者でも楽しめるようなルートがいいと考えました。ご家族連れや子どもたちの笑顔を見ていると、これぐらいの難易度のコースで正解だったんだなと思います。走れる人にも満足してもらえるエクストラは設定しつつも、イベントの方向性はこの「初心者向け路線」でいきたいなと思っています。

グラベルで白馬がにぎわっていけば嬉しいです。今回イベントがあったことで、今後自分たちで走りに来ようという人もいるかと思いますが、そうした場合にも地域の方が自然にサイクリストを受け入れてくれる環境づくりは大切です。来年はもっと多くの人たちに白馬に走りに来てもらいたいです。



text&photo:Makoto AYANO