「ラスト2時間で喜怒哀楽、全ての感情を体験した」と語ったのはジロとツール、ロード世界選手権のトリプルクラウンを達成したタデイ・ポガチャル(スロベニア)。敗れたファンデルプールやエヴェネプールなど、選手たちの言葉で男子エリートロードレースを振り返ります。



優勝 タデイ・ポガチャル(スロベニア)

パヴェル・シヴァコフ(フランス)と共に飛び出し、レース先頭に立ったタデイ・ポガチャル(スロベニア) photo:CorVos

レース直後インタビュー

信じられない勝利。ここまで(成功と言える)シーズンを送り、今日に向けて自分自身にプレッシャーをかけていた。またそれはチームからも感じていた。レースは予想よりも早い段階で動き、危険(強力)な逃げが決まった。愚かと思われるかもしれない(残り100kmからの)アタックをして、幸運にもヤン(トラトニク)が下がってきてくれた。そして最後まで諦めることなく踏み続けた。素晴らしい日になったよ。

もちろん(100kmアタックは)作戦ではなく、予定ではチームでレース展開をコントロールするはずだった。だが早くも展開が動き、自分でもよくわからないままアタックした。そして流れに身を任せて走ったら勝つことができた。でも本当にタフなレースだったよ。

何年にも渡りツール・ド・フランスや他のレースを狙うことはあっても、純粋に世界選手権を目標にしたことはなかった。今年は既に全てがスムーズ(思い通り)に進み、完璧と言えるシーズンで大きな目標を達成することができた。本当に信じられないし、チームメイトに感謝したい。彼らがいなければこの勝利は不可能だった。本当にスロベニアナショナルチームの一員として走れたことを誇りに思う。

雄叫びを上げ、勝利を喜んだタデイ・ポガチャル(スロベニア) photo:UCI

表彰式後インタビュー

本当に嬉しいし、勝ったという事実が信じられない。子どもの頃夢にも見なかったアルカンシエルだ。いまどれだけ嬉しいか、言葉に表すことは難しい。レース最後の2時間では、喜怒哀楽全ての感情を体験した。そして最後まで諦めることなく踏み続け、この勝利がいまだに信じられないよ。

―フィニッシュ後、一目散にジガートのもとへ駆けていった。

ウルシュカ(ジガート)は僕の大部分を占めている。彼女は言わないだろうが、彼女が僕の選手キャリアのために犠牲にしていることは多い。彼女のような存在が側にいてくれて、本当に嬉しいよ。

2位 ベン・オコーナー(オーストラリア)

2位で表彰台に上がったベン・オコーナー(オーストラリア) photo:UCI

タデイ・ポガチャルとマチュー・ファンデルプールという2人と共に表彰台に上がることができ、走りが報われた気持ちだよ。今年は良い成績を得ることができ、この表彰台も嬉しい結果。良いタイミングで集団から抜け出し、掴んだこの結果を誇りに思う。

3位 マチュー・ファンデルプール(オランダ)

3位スプリントを制したマチュー・ファンデルプール(オランダ) photo:CorVos

今日の結果を誇りに思う。なぜならこのような(アップダウンの多い)コースで見せた、過去最高の走りだから。(減量した)僕について様々な意見があるだろうが、このレースに向けた過程を楽しむことができた。また適切な準備ができれば登りの多いレースでも良い走りができることを証明した。だが今日はタデイがその強さを証明した。

(残り100km地点からのアタックは)決して賢い動きだったとは言えないが、彼にとっては適切だった。ベルギーが一丸となり追いかけ始めたのを見て「タデイは優勝のチャンスを逃した」と思ったが、力で自らの正しさを証明した。あんな走りは見たことがない。

5位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー)

追走集団を先導するレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos

彼(ポガチャル)が登りの頂上でアタックした瞬間、僕はマチュー(ファンデルプール)の隣を走っていた。僕らはそれが自殺行為で、最終的に集団は1つに戻ると思っていた。だが彼の調子はよく、速いペースで突き進んだ。そんな走りができた彼にこそ、今日の勝利はふさわしい。彼の今シーズンの成績を見れば、来年のアルカンシエルに相応しいのは明らかだ。

僕らがレース展開を掌握しているつもりだった。だからティシュ(ベノート)に「50秒〜1分の差であれば大丈夫だ」と伝えていた。向かい風や距離の長い登りがあればレースのコントロールは簡単なこと。だが勾配の厳しい登りでチームメイトが遅れていった。(追走)集団に残ったティム(ウェレンス)とマキシム(ファンヒルス)と、どうにかしなければいけなかった。

普通ならば残り100kmは遠い距離に感じるが、今年のタデイは例外だ。僕らチームとしてこの結果に怒りや悲しみを感じるべきではない。僕らはトライし、最大限の走りをしたのだからね。

プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)

素晴らしいし、この歴史的な偉業に関わることができたことを誇りに思う。彼は本能に従ったのではないかな。普段は違うチームで争っているが、今日はチームメイトとして走った。本当に嬉しいよ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos