前日にヴィンゲゴーなど総合上位勢が姿を消したイツリア・バスクカントリー5日目で、ランダが落車により鎖骨と肋骨を骨折。レースは集団スプリントで21歳のロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)が先着し、ワールドツアー初勝利を掴み取った。



総合リーダージャージを着用して大会5日目に臨むマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) photo:CorVos

前日の集団落車により総合優勝を争うビッグスリー(ヴィンゲゴー、ログリッチ、エヴェネプール)がリタイアしたイツリア・バスクカントリー(UCIワールドツアー)は5日目を迎えた。この日は中盤に1級山岳が登場するものの、後半は3級山岳を含む周回コースを2周する丘陵ステージ。しかしその山岳は登坂距離3.4kmに平均勾配が7.3%のため、ペース次第で集団の人数は絞られるタフなレイアウトだ。

集団の先頭でスタートの時を待ったのはリーダージャージを着用したマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)。新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)を含む148名まで減った選手たちがビトリア・ガステイスを出発し、序盤はアタックの連続で平均スピードが50km/hに迫った。

この日は序盤からアタックを吸収を繰り返す激しい展開となった photo:Itzulia Basque Country

逃げが形成されないままレースは約70kmを消化し、1級山岳の手前でミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)がチームメイトであるヒル・ヘルダース(ベルギー)を含む4名が落車する。これによりランダは右の鎖骨と肋骨2本を骨折。スーダルはレムコ・エヴェネプール(ベルギー)に続きエースを失い、また共に出場予定であるツール・ド・フランスへの影響も心配される。

依然として一つの集団は1級山岳ウルキオラ(距離5.6km/平均勾配9.2%)に入り、アタックと吸収を繰り返す集団からセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)とイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ)が加速する。先頭で頂上を越え、2人は逃げ切りを目指したものの残り63kmで吸収。その後周回コースに入り、マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)ら9名による飛び出しやサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)の仕掛けなどもあり、ハイペースのまま集団はこの日2度目の3級山岳へ。

1級山岳で仕掛けたセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)とイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

そこでもマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)らによる仕掛けが実ることはなく、約35名に絞られた集団はフィニッシュまで続く平坦路に突入。そこでもデルトロらによるアタックが繰り返されるなか、勝負はクライマーによる集団スプリントに持ち込まれた。

最終コーナーで先頭に立ち、後続との差を作ったカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)を捉える直前にマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がスプリントを開始する。その背後についていたロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)が横に並び、猛追したオールイス・アウラール(ベネズエラ、カハルラル・セグロスRGA)の3名がハンドルを投げた。

そして写真判定の結果、グレゴワールに勝利が告げられた。

ハンドルを投げ、フィニッシュに先着したロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos

ワールドツアー初勝利を飾ったロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos

「一日を通してとてもペースの速いレースだった。カンタン(パシェ)のリードアウトから完璧な位置につくことができ、最後は苦しみながらフィニッシュした。その後数分間は誰が勝ったのか分からなかったが、ワールドツアー初勝利が意味するものは大きい。とても嬉しいよ」とグレゴワールは喜んだ。

グレゴワールは育成に定評のあるグルパマの下部チーム出身の21歳。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージでは逃げから勝利に迫り(区間2位)、プロ2年目でワールドツアー初勝利を掴み取った。

総合順位に大きな動きはなく、終盤に孤立するシーンのあったスケルモースが首位をキープ。そして区間2位でボーナスタイム-3秒を加算したシャフマンが総合2位に順位を上げている。
イツリア・バスクカントリー2024第5ステージ結果
1位 ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ) 3:43:28
2位 オールイス・アウラール(ベネズエラ、カハルラル・セグロスRGA)
3位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 カンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)
5位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター)
6位 サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 ダミアン・ホーゾン(オーストラリア、Q36.5プロサイクリング)
9位 サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)
10位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)
個人総合成績
1位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) 12:19:39
2位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +0:02
3位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +0:04
4位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケアB&Bホテルズ) +0:06
5位 ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ) +0:08
6位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) +0:13
7位 ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) +0:14
8位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:15
9位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター) +0:23
10位 ジョルダン・ジュガット(フランス、トタルエネルジー) +0:30
その他の特別賞
ポイント賞 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター)
山岳賞 ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ)
ヤングライダー賞 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos