ファクターがOSTRO VAMの第2世代を発表。同社が誇るエアロオールラウンダーがUCIルールの改変にいち早く対応し、より速く、より軽く進化を遂げた。デビュー戦となったツアー・ダウンアンダーで総合優勝を挙げた、期待のニューモデルだ。



ファクター OSTRO VAM 2.0(Pearl White/Chrome) (c)Factor Bikes

レーシングカーや航空宇宙産業に携わるエンジニアリング集団に端を発し、現在に至るまで高性能バイクを開発生産するのがファクターだ。イスラエル・プレミアテックやJCLチーム右京など、プロチームへの積極的なサポート、少数精鋭による研究開発など、他と一線を画すプレミアムブランドとして近年急速に人気と知名度を上げている。

新型OSTRO VAMは今年1月のツアー・ダウンアンダーに実戦投入されて注目をさらい、スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)の総合優勝という華を引っさげてデビュー。ハンドリング乗り心地、剛性はそのままに、よりエアロ、より軽量な現代オールラウンダーとして進化した。事前に開催されたウェブ発表会によれば、新型OSTROは先代と比べて48km/hで7ワットをセーブし、塗装済みフレーム重量は54サイズで820gと先代から45g軽量化。フォークは+9gと微増しているが、ハンドル、シートポストなどを含めた総重量で48.8gの軽量化を達成しているという。

ツアー・ダウンアンダー最終日に区間優勝を掴み、総合優勝を決めたスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos

2023年1月のUCIルール改変に伴い各部をリファイン。大幅な空力向上を叶えたという (c)Factor Bikes

新型OSTROに改革をもたらした大きな要素は2023年1月から施行されたUCIルール改変だ。これによって特にリア側を大幅にスリム化することで軽量化とエアロ化を改善でき、さらにくびれを持たせたヘッドチューブなど、人間が乗車した状態でエアフローが最適化されるよう注意が払われたという。

名車と呼ばれるフレームを手がけてきたグラハム・シュライブ氏主導による開発では、フレームセットを5つの「ゾーン」に分割して各パートごとにUCI規制緩和を鑑みつつ研究開発が進められた。発表会によれば5つのゾーンのうち4箇所で空力が改善され、3箇所で軽量化を達成。それも先代比較で剛性値は維持したままだ。

ヘッドチューブはアワーグラス型に変更。エアフローをフレームに沿わせるための造形だという (c)Factor Bikes

フロントフォークの新旧比較。僅かながらにスリム化してエアフローを改善した (c)Factor Bikes
こちらはヘッドチューブの断面図。先代から細く、かつ長くなっていることが分かる (c)Factor Bikes


大幅に進化を遂げたシートポストとシートチューブの断面形状比較。大きな軽量化と空力向上を達成した要素だ (c)Factor Bikes

ファクターの言う「ゾーン1」であるフロントフォークは9g増加したものの、「ゾーン2」であるヘッドチューブがより薄く、前方に突き出た形となったことを踏まえてスリム化を達成した。ワイドタイヤとのマッチングを踏まえていることはもちろん、剛性を整えるべくフォーククラウンも工夫を凝らした。前から見てアワーグラス(砂時計)のようにくびれをもたせたヘッドチューブはエアフローをできるだけバイクに沿わせるための工夫であり、断面形状もあらゆる角度からの風をいなす新設計が取られている。

「ゾーン3」トップチューブは上から見下ろした際の形状が、従来に比べてシートポスト側に移動するにつれて細くなるデザインに。続く「ゾーン4」シートポストとシートチューブはUCIの規制緩和が最も反映された部分であり、シートポストは36%、シートチューブ上部は20%のスリム化を達成。シートポストのクランプはシートチューブ後部に移動し、28mmタイヤ装着を踏まえたチューブのカットアウトも施している。「ゾーン5」ボトムブラケットは僅かに空力向上を叶えたが、空力よりも反応性に重きを置いたという。

シートポストは36%、シートチューブ上部は20%スリム化。脚によって巻き起こされる乱流の影響を受けずらくしている (c)Factor Bikes

シートクランプは後ろ側へと移動。メンテナンス性と軽量化を両立したものだという (c)Factor Bikes
28mmタイヤに沿わせたリア形状。剛性や反応性は維持されているという (c)Factor Bikes


ファクター独自の空力テスト結果。スペシャライズドのTarmac SL8とサーヴェロのS5よりも、ヨー角が大きくなるほど速いという (c)Factor Bikes

ファクター曰く、スペシャライズドのTarmac SL8とサーヴェロのS5と比較した際、新型OSTROはヨー角0°付近(S5が最速だという)を除いて最も低い空気抵抗値をマーク。先代モデル比で7ワット削減(48km/h時)という大きな改善を果たしている。

ブラックインクの新型軽量ホイールセットとエアロボトルケージも併売

ブラックインクの48/58ホイールセット。セット1,270gという軽さを誇る (c)Factor Bikes

また、ファクターの開発陣は新型OSTROに併せ、ブラックインクの48/58ホイールセットと専用のボトルケージも開発した。

「48/58」はその名の通りフロント48mm/リア58mmリムを採用した前後異形ホイールセットで、横剛性を高める新型の大型フランジとカーボンスポークによってホイールセット1,270gというカテゴリー破りの軽さを達成。28mmタイヤに最適化された内幅23mmのリムシェイプを採用し、今まで以上に横風を受け流し、安定したハンドリングを叶えるデザインを採用したという。ボトルケージはボトルとチューブ間の隙間を埋めるデザインを採用。シートチューブ用は(レースでゴールスプリントを争う際、軽量化のために)ボトルを捨てた時にもエアロ的に不利にならないデザインを採用しているという。

フレームセット2種類、完成車5種類で発売。完成車最安モデルは1,492,700円

ファクター OSTRO VAM 2.0(Team IPT) (c)Factor Bikes

ファクター OSTRO VAM 2.0(Chrome) (c)Factor Bikes

OSTRO VAMのフレームセット価格は895,400円(税込)で、48/58ホイールセットが付属するセットは1,304,600円。完成車はシマノコンポーネント搭載モデルがDURA-ACEとULTEGRAの2種類、スラムコンポーネント搭載モデルがRED eTap AXSがパワーメーターの有無で2種類、Force eTap AXSはパワーメーター付きの1種類。最高1,865,600円から最低1,492,700円まで、合計5種類での販売となる。

ファクターの分析によれば、昨年のツール・ド・フランス第9ステージで先代OSTRO VAMを駆り優勝したマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)は、新型OSTRO VAMに乗っていれば2分21秒速かった、とも。特に軽量パーツを使わずともUCI制限重量である6.8kgを切るバイクを組むことが十分可能と胸を張る。

シクロワイアードでは試乗車が届き次第インプレッションを実施する予定。ウェビナーでの細かな説明や、細部のディテールも含めて紹介していきたい。



ファクター OSTRO VAM 2.0
カラー:Team IPT、Pearl White/Chrome、Chrome
サイズ: 45、49、52、54、56、58、61
フレーム素材:TeXtreme Toray, Nippon Graphite Pitch-Based Fiber
シートポストセットバック:0mm、20mm
ハンドル:ブラックインク Integrated Aero Barstem
ヘッドセット:セラミックスピード SLT 1-1/8″ and 1-3/8″
ボトムブラケット:セラミックスピード T47A

フレームセット価格
フレームセット: 895,400円
Black inc 48/58 ホイール付き:1,304,600円
完成車価格
シマノ DuraAce :1,815,000円
シマノ Ultegra:1,492,700円
スラム RED eTap AXS:1,800,700円
スラム RED eTap AXS (パワーメーター付き):1,865,600円
スラム Force eTap AXS (パワーメーター付き):1,525,700円



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