ここ数年、引退報道がなされていたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)が2024年末での現役引退を発表した。同選手は2017年のツール・ド・フランスで総合2位に入る他、3大ツールの全てで区間優勝を達成。またコロンビア随一のスター選手かつ実業家としての顔を持つ37歳だ。



引退を発表したリゴベルト・ウラン(コロンビア)。写真は2014年のジロ・デ・イタリア直前のチームプレゼン photo:Kei Tsuji

「自転車選手として終わりの時が来た。僕は朝起きて朝食を食べ、走りに行く生活をもう23年に渡り行ってきた。そのためこの決断に至るまでは長くの時間を要し、引退することに対して恐怖すら感じている。今年は出場するレースを楽しみ、ベストを尽くし、出場する全てのレースが最後のような気持ちで走る」と、リゴベルト・ウラン(コロンビア)はEFエデュケーション・イージーポストが公開した1時間に渡るインタビュー動画でそう語った。

ウランは2006年にテナックス・サルミラノでプロキャリアをスタートさせた37歳。2011年からは創設2年目のスカイサイクリング(現イネオス・グレナディアーズ)で走り、2013年のジロ・デ・イタリアではチームタイムトライアルでの勝利に加え、個人として初のグランツール区間優勝を飾った。

2013年のジロでステージ優勝を飾ったウラン(当時スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji

2014年のジロでコロンビア人初のマリアローザを着用したウラン(当時オメガファルマ) photo:Kei Tsuji

オメガファルマ・クイックステップ(現スーダル・クイックステップ)時代の2014年ジロではコロンビア人選手初となるマリアローザ(総合リーダージャージ)を着用し、2016年から現在までEF(当時キャノンデール)に所属。総合エースとして臨んだ2017年のツール・ド・フランス第9ステージでは落車してディレイラーの故障に見舞われながらも小集団スプリントで勝利を挙げ、クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)の次ぐ総合2位でパリの表彰台に登った。

それ以降は2019年シーズンで2度に渡る骨折を負うなど、目立った成績を残せないでいたウラン。しかし2022年のブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージで復活勝利を飾り、3大ツール(ジロ、ツール、ブエルタ)全てでの区間優勝を成し遂げた。

2017年ツール第9ステージで勝利を飾ったリゴベルト・ウラン(コロンビア、当時キャノンデール・ドラパック) photo:Kei Tsuji / TDWsport

総合2位でパリの表彰台に立ったウラン photo:Kei Tsuji / TDWsport

プロ通算は僅か14勝ながらもビッグレースに強く、コロンビア国内ではナイロ・キンタナ(モビスター)やエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)を凌ぐスター選手であるウラン。毎年オフシーズンには母国コロンビアで自身主催のジロ・デ・リゴを行い、昨年はワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)、その前年はタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を招待。また自身のサイクリングジャージブランドを立ち上げるなど実業家としての顔を持っている。

ウランの引退について、2025年までの現役続行を薦めていたEFのジョナサン・ヴォーターズGMは「リゴがいなくなることは寂しい。彼は我々チームが築いてきた礎のような選手で、彼のカリスマ性とリーダーシップを失うことは残念だ。リゴは疑いようのない素晴らしい選手で、同時に素晴らしい人間性を持っていた」とコメントしている。

ウランのグランツールを含めた詳細なレーススケジュールは明らかにされていないものの、直近では2月22日開幕のグラン・カミーニョ2023(UCI2.1)に参戦。そして8月3日に行われるパリ五輪にコロンビア代表として出場する予定だ。


text:Sotaro.Arakawa