ツアー・ダウンアンダーの名物坂ウィランガヒルで争われた最終第3ステージ。女子の登坂記録を持つサラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル)が強豪を退け、復活の区間優勝と共に第7代総合優勝者に輝いた。



総合リーダージャージを着て最終日に臨むセシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJ・スエズ) photo:CorVos

女子ワールドツアー初戦であるサントス・ツアー・ダウンアンダーは最終日を迎え、アデレード市内から南のウィランガヒル(全長3.6km/平均7.1%/最大14%)に向かう93.4kmで争われた。スタート直後に1級山岳を越えるものの、登坂距離4km/平均勾配5.7%と難易度は低く、その後はウィランガヒルの手前まで平坦路が続いていく。

レースは前日勝者で総合リーダーのセシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJ・スエズ)を先頭にスタート。最初の1級山岳はカティア・ラグーザ(イタリア、ヒューマンパワードヘルス)が狙い通り先頭通過し、山岳賞ジャージを確定させる。その後はコンチネンタルチームを中心に逃げ形成を狙ったものの決まらず、ボーナスタイムが与えられるこの日最初の中間スプリントがやってきた。

ボーナスタイムを加算してバーチャルで総合首位に立ったルビー・ローズマンギャノン(オーストラリア、リブ・アルウラー・ジェイコ) photo:CorVos

逃げが形成されないまま、プロトンはウィランガヒルに到着した photo:CorVos

中間スプリントを先頭通過したのはオーストラリ王者かつ、総合3位のルビー・ローズマンギャノン(リブ・アルウラー・ジェイコ)。ローズマンギャノンは-3秒のボーナスタイムを加算し、更に続く中間スプリントを3位通過(-1秒獲得)したため、ルドヴィグを抜いてバーチャルで総合首位に立った。

そしてプロトンはひと塊のままウィランガヒルに突入し、サラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル)が早くも先頭でスピードを上げる。コロナ禍だった2021年に8分13秒というウィランガヒルの登坂記録を打ち立てたジガンテは、ダンシングを織り交ぜながら軽快な登坂を披露した。

そのスピードにアマンダ・スプラット(オーストラリア、リドル・トレック)が遅れ、木々が揺れるほど強風のなか残り2.2kmでジガンテは再加速。食らいついていたルドヴィグとニンケ・フェインホーフェン(オランダ、DSM・フィルメニッヒ・ポストNL)も引き離し、単独先頭に立つ。そして自身の持つ最速登坂記録こそ向かい風に阻まれたものの、9分2秒という歴代2位の記録でジガンテは区間優勝と総合優勝を手に入れた。

ウィランガヒルでルドヴィグを引き離したサラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

独走勝利を飾ったサラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

フィニッシュ直後何度も左手で顔を覆い、喜びを表現したジガンテ。「これは信じられないほど価値ある勝利。3年前にここで勝利を挙げて以降、全てが理想とは真逆に進んでいった。初日にチームメイトのアリー・ウォラストンが勝ち、最終日は私が勝利と総合優勝を掴み取った。本当にクレイジーな結果だ」と喜んだ。

ジガンテはオーストラリア・メルボルン出身の23歳。2018年にオーストラリアとオセアニアのジュニアロード王者になると、翌年18歳にしてオーストラリア選手権の女子エリートロードレースを制覇。オーストラリア期待のクライマーとして注目を集めたジガンテは2022年にモビスターでプロデビューしたものの、怪我や体調不良で思うように走ることができず、契約3年目を迎えることなくチームを離れ、AGインシュランス・スーダルに移籍した。

「23歳と若いのにもかかわらず周りから”もう終わった”と思われる日々は辛かった。でもそれは自分自身でも思ったこと。だが再び自分を信じ、チームも私を信じてくれた。勝利を掴み、この幸せな気持ちに今は思い切り浸りたい」とジガンテは復活の喜びを噛み締めた。

区間優勝と共に、総合優勝を飾ったサラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

区間2位と総合2位には19歳のフェインホーフェンが入り、ジガンテと同じくオーストラリアの若手クライマー(21歳)であるニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア、キャニオン・スラム)が区間3位&総合3位で表彰台に上がっている。
女子ツアー・ダウンアンダー2024第3ステージ結果
1位 サラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル) 2:30:38
2位 ニンケ・フェインホーフェン(オランダ、DSM・フィルメニッヒ・ポストNL) +0:16
3位 ニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア、キャニオン・スラム) +0:16
4位 アマンダ・スプラット(オーストラリア、リドル・トレック)
5位 ドミニカ・ヴウォダルチク(ポーランド、UAEチームADQ) +0:46
個人総合成績
1位 サラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル) 7:57:33
2位 ニンケ・フェインホーフェン(オランダ、DSM・フィルメニッヒ・ポストNL) +0:20
3位 ニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア、キャニオン・スラム) +0:33
4位 アマンダ・スプラット(オーストラリア、リドル・トレック) +0:37
5位 ドミニカ・ヴウォダルチク(ポーランド、UAEチームADQ) +0:44
その他の特別賞
ポイント賞 ソフィア・ベルティツォーロ(イタリア、UAEチームADQ)
山岳賞 カティア・ラグーザ(イタリア、ヒューマンパワードヘルス)
ヤングライダー賞 ニンケ・フェインホーフェン(オランダ、DSM・フィルメニッヒ・ポストNL)
チーム総合成績 DSM・フィルメニッヒ・ポストNL
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos