自転車専門店「サイクルベースあさひ」で働くスタッフで構成されたチーム「ミネルヴァあさひ」が、JBCFが主催する「Jエリートツアー」で2023年チームランキング総合1位となった。「ミネルヴァあさひ」とはどんなチームなのか、キャプテンの川勝敦嗣さんに話を聞いた。



高岡亮寛(Roppongi Express)と共に最前列からスタートするミネルヴァあさひのメンバー E1カテゴリーの一大勢力だ photo:Satoru Kato

「サイクルベースあさひ」は、北海道から九州まで、青森県と沖縄県を除く都道府県に530店舗以上(2023年10月19日現在)を展開する国内有数の規模を誇る自転車販売店。取り扱う自転車は、いわゆる「ママチャリ」をはじめとする一般用から本格的なスポーツサイクル、さらには子供用の補助輪つき自転車やストライダー(一部店舗)まで幅広い。その多彩さは店舗の前を通りかかっただけでも窺い知れるほどだ。

その「サイクルベースあさひ」の社員で結成されたレースチームが「ミネルヴァあさひ(MiNERVA-asahi)」。2020年に結成され、今年で4年目。現在24名が所属し、JBCF(一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟)が主催する大会を中心にレース活動をしている。

Jエリートツアー2023 チームランキング1位となったミネルヴァあさひ(JBCFかすみがうらロードレースにて) photo:Satoru Kato

中でもJBCFのJエリートツアーは、実力別にE1、E2、E3と3つのカテゴリーがあり、最上位カテゴリーのE1は国内トップアマチュアが集まってハイレベルなレースが展開される。「ミネルヴァあさひ」は、2021年に川勝敦嗣がE1の年間ランキング4位、2022年は布田直也が8位、そして今年は中島渉の3位をはじめ、ランキングトップ10以内に3名が入り、チームランキング1位を獲得した。

「E1カテゴリーには、今年個人ランキングトップになった高岡亮寛(Roppongi Express)さんをはじめ、強い選手がたくさんいます。彼らと1対1で勝てるほどの力はないけれど、チームとして各々がしっかりと役割を果たして最善のリザルトを取るという意識で、今年1年間やってきました。短いようで長い1年間でしたが、チームランキング1位はそうして取り組んできた結果だと思います」と、チームキャプテンの川勝は2023年シーズンの結果を誇る。

2012年までサイクルベースあさひレーシングチームに所属していた萩原麻由子(写真は2010年全日本選手権) photo:Hideaki.TAKAGI

サイクルベースあさひのチームと言えば、欧州チームに所属していた萩原麻由子や針谷千紗子(現姓・雨谷)、吉川美穂ら女子有力選手を輩出したチームを思い出す方も多いだろう。女子チームの活動終了後は地方ごとにサークル活動として自転車好きなメンバーが集まって走っていたが、あさひのサポートの下、本格的にレース活動するチームが再結成された。

萩原らもスタッフとして働きながらレース活動をしていたが、「ミネルヴァあさひ」のメンバーも、チームに関わるスタッフも含めてメンバー全員が全国各地の店舗スタッフや本社スタッフとして働きながらレース活動をしている。ちなみにチーム名の「ミネルヴァ」は、1980年代に設立・活動していたチームの名前を継承しているという。

サイクルベースあさひ新金岡店に勤務する川勝敦嗣 ©️あさひ

自身もサイクルベースあさひ新金岡店に勤務する川勝は、「メンバーはたくさんいますが、北は仙台から南は高知まで住んでいるところがバラバラなので、近い人同士で練習したり、月間で各々がどのくらい練習したかを共有しながら取り組んでいます。基本は平日休みなので、他チームとの合同練習のようなことはできませんが、休みの日はしっかり練習時間を取り、仕事の日もすき間時間を見つけて有効活用するようにしています」と話す。

ずらりと自転車が並ぶサイクルベースあさひの店舗 ©️あさひ
自転車組み立て作業中の川勝敦嗣 ©️あさひ


自転車店で働きながらレース活動するという、自転車好きの多くが夢見るであろう理想形に「ありがたい環境で走らせてもらっています」と言う川勝。とは言え、店舗勤務は決まった曜日に休みが取れるわけではなく、練習時間の確保は苦労するのではないだろうか?

その疑問に川勝は「サイクルベースあさひで働くことがハンデになっているとは思っていませんし、働きながらレースに出るという点はE1で走る他の選手と一緒と思っています」と答える。それは前述の通り、年間ランキングトップ10に3名が入る結果が証明している。

「仕事でも自転車に携わり、自分自身も自転車を楽しみたいという人には良い環境だと思います。これからも同じ志を持ったメンバーがサイクルベースあさひに入社し、チームとして走る人が増えてくれるといいなと思っています」。


text:Satoru Kato
協力:株式会社あさひ