8月20日(日)に開催されたドイツ最大のワンデーレース「ベーメルクラシック」。先行する3名をフィニッシュ手前で捉えたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が勝利し、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は37位でUCIポイントを獲得した。



世界選手権後、初レースとなった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

ヨーロッパ随一の港湾都市であるハンブルクを舞台に、UCIワールドツアーであるベーメルクラシックが行われた。2019年まではユーロアイズ・サイクラシックスと呼ばれ、コロナ禍により2年連続で中止となった今大会。昨年より健康器具メーカーのベーメル社をタイトルスポンサーに迎え、今年無事もドイツ最大のワンデーレースとして開催された。

205.6kmコースはほぼ平坦路のため、歴代の優勝者にはスプリンターの名がずらりと並ぶ。しかし終盤に最大勾配16.3%のヴァーゼベルグ(長さ800m/平均勾配8.7%)を3度越えるため、ピュアスプリンターとパンチャーとの駆け引きが見所となる。

スタート地点にはワールドツアーにふさわしい豪華メンバーが揃い踏み。特に3日後にベルギーで開幕するレネウィ・ツアー(旧ベネルクス・ツアー)を控えるディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)や、8月1日よりアルケア・サムシックに電撃移籍したアルノー・デマール(フランス)などトップスプリンターに加え、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も世界選手権後初レースとして出場した。

単独で逃げ続けたセルヒオ・サミティエル(スペイン、モビスター) photo:CorVos

ユンボ・ヴィスマなどスプリンターを擁するチームがプロトンを牽引した photo:CorVos

序盤に3名の逃げグループが形成され、その中の1人であるジュリアン・シモン(フランス、トタルエネルジー)のパンクで脱落。その後セルヒオ・サミティエル(スペイン、モビスター)の単独逃げとなる。それを追うメイン集団ではボーラ・ハンスグローエのエーススプリンターであるサム・ベネット(アイルランド)が胃腸系のトラブルにより途中棄権し、新城が牽引するバーレーン・ヴィクトリアスやジェイコ・アルウラーがサミティエルとの差をコントロールした。

残り40km地点でサミティエルを捉え、ひと塊の集団は2度めのヴァーゼベルグに突入する。そこで前年3位のクインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が仕掛け、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)やアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)が追従。この動きによりプロトンはバラけ、マルク・ヒルシ(スイス)らUAEチームエミレーツ3名が入った15名の先頭集団が形成された。

終盤で集団牽引する姿を見せた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

最後のヴァーゼベルグ(残り16km地点)で人数の利があるUAEがペースアップし、ヒルシとディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、アルノー・デリー(ベルギー、ロット・デスティニー)など4名が飛び出す。しかし平坦路で後続が追いつき、今度はニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)、イヴ・ランパールト(ベルギー、スーダル・クイックステップ)の3名が飛び出した。

力のある3名による先行を許した後続集団には、登りで遅れたスプリンターたちが合流。フルーネウェーヘンを擁するジェイコ・アルウラーが中心となり追いかけたものの、なかなかその差は縮まらない。しかしフラムルージュ(残り1km)でプロトンは3名の姿を捉え、ピーダスンが飛び出し先頭にブリッジした。

先頭3名を捉え、追い抜いたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:CorVos

後続を振り切り勝利したマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:CorVos

フィニッシュ手前200mで先頭に追いついたピーダスンは、シッティングのまま先頭へ。そして後方から迫るダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)やエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)を退けたピーダスンが、両手を高々と振り上げた。

今年6月に新しくタイトルスポンサーとなったリドル(スーパーマーケットチェーン)が本社を構えるドイツで、劇的な勝利を飾ったピーダスン。「先頭の3名をめがけて飛び出し、追いつくことができるかはわからなかった。だが、僕は全力で駆け抜けた。ツール・ド・フランスから世界選手権まで続いた好調のまま、このレースを迎えることができた。このコンディションがどこまで続くか見てみよう」と喜ぶ。

ベーメルクラシック2023表彰台:2位ファンポッペル、1位ピーダスン、3位ヴィヴィアーニ photo:CorVos

7月のツールで区間優勝を挙げ、過酷を極めた世界選手権ロードでは4位入賞と今季好調のピーダスン。前日に閉幕したのポストノルド・デンマーク・ルント(UCI2.Pro)では最終ステージの個人タイムトライアルを制して総合優勝を飾ったため、違うレースで2日連続の勝利となった。

2位には棄権したベネットの代わりに勝利を狙ったファンポッペルが入り、ヴィヴィアーニは3位。トップと同タイムでフィニッシュした新城は37位に入り、来年のパリ五輪に重要となるUCIポイント(8点)を獲得している。
ベーメルクラシック2023結果
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 4:36:35
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)
4位 アルノー・デマール(フランス、アルケア・サムシック)
5位 ローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ)
6位 イヴ・ランパールト(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
7位 アルノー・デリー(ベルギー、ロット・デスティニー)
8位 ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
9位 マックス・カンター(ドイツ、モビスター)
10位 マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ)
37位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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