スキーワックスブランドとしてウィンタースポーツではお馴染みのガリウムが展開を開始している自転車用ルブリカントとディグリーザー。液体ワックスを使用した新しいルブリカントとディグリーザーを合わせて使用してみた。



ガリウムのLong Ride、Long Ride Light、Hill Climb、Sprintをテストした

チェーン用ルブリカントと言ってもタイプは複数に分かれている。耐久性と潤滑性はほどほどで、防汚性に優れるドライタイプや、防汚性を維持しながら潤滑性能を高めたワックス系、各性能のバランスを整えたウェットタイプ、その中でも粘度を高めて耐久性を高めたモデルなどなど。

特にワックス系のルブリカントは、固形ワックスを湯煎などで溶かした後にチェーンをつけ込み、乾燥させる物も存在しており、決戦用というイメージが強く残っている。近年では溶剤で溶かしたワックスを通常のオイルのようにチェーンに滴下し、乾燥させてから使用する使い勝手に優れるプロダクトも定着しており、ワックス系ルブリカントが身近な存在になってきていた。

そんなワックス系ルブリカント"GIGA CHAIN LUB”を、スキー用ワックスブランドのガリウムが展開し始めている。もちろん自転車用にアレンジしたプロダクトであり、使用目的別に5種類がラインアップされている。今回はそれらの使用感をお届けしよう。

Perfect Offで汚れを落としてからワックスを塗布しよう
刷毛を使えば簡単にPerfect Offを塗布しやすい


オイルと砂汚れでギトギトになったスプロケット
Perfect Offを使用すればゴシゴシとブラシで擦らなくてもここまで綺麗になる



Long Ride、Long Ride Light、Hill Climb、Sprint、Rain & Dirtという5種類に共通するのはワックスながら液体ベースのウェット系となっていること。先述したように自転車用ワックス系ルブリカントは乾燥させて使用するものがポピュラーであり、ガリウムのワックスルブリカントは珍しい存在。

そのためチェーンへの施工方法は一般的なルブリカントとほぼ同様。チェーンを綺麗に清掃、乾燥させてから、ルブリカントを滴下、余分な液体を拭き上げるという工程だ。ガリウムはワックスのため、使用する前にオイルをしっかりと落とす必要があることには気をつけたいところ。

脱脂用のディグリーザーと、ルブとディグリーザーなど清掃キットをガリウムは用意しているため、ガリウムを初めて使う際はキットで購入すると良さそうだ。ルブの使用感に移る前にディグリーザーの使い勝手にも触れておこう。

タイプとしては汚れに直接塗布して、油汚れを溶解させてから水で洗い流すというもの。作業自体は簡単で、刷毛で塗布するだけでも油汚れを落とせる洗浄力を備えている。ただ刷毛で塗布するだけの場合は、細かい汚れが若干水垢のようにスプロケット表面に残ることもあるため、万全を期す場合はブラッシングを行った方が良さそうだ。

Long Ride 30はモリブデンが含まれた黒い液体となっている

さて、本題のルブリカントの話に戻そう。今回Rain & Dirt以外のプロダクトを試してみたところ、いずれも共通するような潤滑性能を備えているような印象を受けた。

ドライ系ルブやワックスのようにダイレクトな感じや、粘度が低めで油膜が薄いルブの感触とも異なり、チェーンのコマ内に液体が存在していることは感じ取れる。しかし、ロングライフを意識した粘度が高めなルブとも感覚的には差が大きく、スルスルっとチェーンが回ってくれる。まさに滑走しているかのよう。

変速時もオイルがしっかりと存在感を示すモデルだとスチャっと決まるところ、このルブではッカーン!と決まる。そのためいわゆるクッション感なども薄めだ。全体的にはサラッとした感触が伝わるルブであり、滴下する時に感じる粘度の低さから受ける印象がそのまま踏み心地にも現れているよう。

それぞれ粘度が異なるスプリント、ヒルクライム、ロングライド・ライト、ロングライド、レイン&ダート

サラッとしている言葉をネガティブな表現に置き換えると、シャバシャバと言えるが、チェーンからワックスが飛び散るほど粘度は低くない。チェーンにある程度定着する絶妙な塩梅はガリウムならではの性能だろう。

そして共通するのはチェーンが巻き込んだ砂塵を抱え込み、黒く濁った液体としてチェーン表面に流れ出てくること。そもそも液体ワックスのため、ウェット系オイルと同じように汚れるのは当然のことだが、実際の汚れはオイル系とは異なる印象を持った。

オイルが抱え込む汚れは、粘度が低いモデルの場合遠慮なくチェーンステーなどに飛び散り、粘度が高い場合は泥のようにチェーンに堆積していくというイメージを持つはずだ。しかしガリウムは真っ黒にワックスが汚れるものの、サラッとした液体感はそのままだが、チェーンやスプロケット表面に定着したままで飛び散る量は少なめ。ギトギトの油汚れよりもサッと拭き取れるのも好印象だ。

このガリウムの液体ワックスに対する全体的な印象をどのモデルにも持ちつつ、それぞれが異なる粘度と油膜感を備え、航続距離にも大きな影響を与えている。

ガリウム GIGA CHAIN LUBE(Long Ride Light、Long Ride)

今回試したプロダクトの中で好印象を強く抱いたモデルがLong Rideだ。Rain & Dirtを除いた4種類の中でも最も粘度が高めな製品だが、いわゆる高粘度オイルよりは明らかにチェーンが軽く回り、なおかつ耐久性も高い。

テストでは雨天ライドも含めた約360kmを走行しており、300kmを超えたところからチェーンが駆動する音が大きくなってきた。しかし、そこで油膜が切れたようなチェーンの軋みではなく、潤滑はそのまま維持されており、最後の最後まで液体ワックスがチェーンから汚れを抱えて滲みでてきたため、本来であればもう少し走行させられそうだった。雨天に見舞われてしまったため、Long Ride Lightに変更することにした。

Long Ride Lightは通常モデルよりもサラッとしており、油膜も薄め。潤滑性能に大きな差はなさそうだが、軽くチェーンが回ることが好みであればこちらをお勧めする。こちらのルブリカントでのテスト距離は300km。使用中の様子の変化は通常モデルと同じで、200kmほどでチェーンの駆動音が大きくなる。こちらも雨に降られてしまい、通常モデルで耐えられた状況でも、ワックスが流れてしまったようだ。

ガリウム GIGA CHAIN LUBE(Hill Climb)

Hill Climbは200km、Sprintは150kmのテストとなった。Hill Climbは非常に軽やかな潤滑を感じさせるが、Sprintの場合はワックスなどの存在感が無い。先述したようにドライや固形ワックスにはない液体による潤滑感はあるものの、走りを阻害するものが無いような印象だ。短距離でライドにフォーカスしたい場合はこちらがマッチする。

とはいえチェーンの潤滑が切れるまでの距離はLong Rideシリーズよりもタイトで、Hill Climbでは50km程度でチェーン駆動に影響が現れつつも、最終盤までオイル切れを感じさせなかった。Sprintが輝くのは30km程度。その後はチェーンの駆動音や変速のショックが大きくなり、ライドでノンストレスというわけにはいかなさそうだ。最終的には150kmまで使うことができたが、100kmまでくらいという印象だ。

ガリウム GIGA CHAIN LUBE(Sprint)

複数の種類を使用して抱いた印象は、ガリウムのワックスは耐久性に優れながらも潤滑性能や防汚性能までも素晴らしい点だった。特にLong Rideはホビーライダーにぴったりで、使い勝手の良さを感じられるだろう。

対してHill ClimbとSprintは使用するシチュエーションが明快で、短距離で優れた潤滑性能を求める場合。ステップアップカテゴリーのロードレースやクリテリウム、その名の通りヒルクライムレースで性能を追求したい方に向けたハイコストパフォーマンスな製品だ。
ガリウム GIGA CHAIN LUBE
モデル名 素材 素材 容量(税込価格) 容量(税込価格)
Long Ride パラフィン モリブデン 100ml(3,300円) 30ml(1,100円)
Long Ride Light パラフィン PTFE 100ml(3,300円) 30ml(1,100円)
Hill Climb パラフィン モリブデン 100ml(3,300円) 30ml(1,100円)
Sprint パラフィン PTFE 100ml(3,300円) 30ml(1,100円)
Rain & Dirt パラフィン モリブデン 90ml(3,520円) 25ml(1,210円)
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