チャレンジマヨルカ最終日は大集団スプリントで決着。盤石のリードアウトからイーサン・ヴァーノン(イギリス、スーダル・クイックステップ)がビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)を退け、チームに今季2勝目をもたらした。



この日の優勝候補に挙げられたビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) photo:CorVos

今年で32回目を迎えたチャレンジマヨルカも最終日の5日目。5つのワンデーレースが連なったレースシリーズは、マヨルカ島の半分人口を有するパルマをスタート/フィニッシュする141.6kmレースで締めくくられた。

序盤の4級山岳を除き平坦基調のこの日は、昨年頸椎を骨折しこれが復帰第2戦となるナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)が出場。他にもJCFチーム右京が出場する翌日開幕のサウジ・ツアーに向かったマックス・カンター(ドイツ)に代わり、モビスターはイバン・ガルシア(スペイン)がエースを担った。

いずれも2000年生まれかつ、プロチームに所属するヴィンセント・ファンヘーメレン(ベルギー、フランダース・バロワーズ)ら3名と共に逃げたのは、トラック選手でスタート地点ソン・サネール出身のマルク・テラサ(スペインナショナルチーム)。冷たい雨が降り注いだ昨日とは異なり、時折太陽も顔を覗かせたレースはアンテルマルシェ・サーカス・ワンティがメイン集団でコントロールした。

逃げグループを形成したヴィンセント・ファンヘーメレン(ベルギー、フランダース・バロワーズ)たち photo:CorVos

マヨルカ島の中心地パルマを巡るチャレンジマヨルカ5日目 photo:CorVos

チャレンジマヨルカではいまいち調子の上がらないマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

残り16kmまで一人粘ったファンヘーメレンを捉え、残り500mの180度コーナーをクリアした大集団は最終ストレートへ。フランス王者フロリアン・セネシャル(スーダル・クイックステップ)のリードアウトからダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)に先頭が代わり、エーススプリンターのイーサン・ヴァーノン(イギリス)がスプリントを開始した。

ヴァーノンの加速に反応したガルシアのスプリントは伸びを欠き、2人の間を縫うようにビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が2番手へ。横のライバルを確認する余裕を見せたヴァーノンが、圧巻のリードアウトに報いる勝利を掴んだ。

「まるでトラック競技のチームパシュートみたいだった。だから僕の長所を活かし、勝利に繋げることができた。(登りの厳しかった)初日を乗り越え、それでコンディションの良さを実感することができた。それが自信となり、この喜ばしい勝利を手に入れることができたんだ」と語るヴァーノンは今季初勝利を喜んだ。

圧巻のリードアウトから勝利を決めたイーサン・ヴァーノン(イギリス、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

トロフェオ・パルマ2023表彰台:2位ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)、1位イーサン・ヴァーノン(イギリス、スーダル・クイックステップ)、3位ヤルネ・ファンデパール(ベルギー、ロット・デスティニー) photo:CorVos

昨年プロデビューを果たしたヴァーノンはトラック競技の中距離種目出身の22歳。2021年UCIトラック世界選手権のチームパシュートで銅メダルを獲得した後、ロードに転向1年目だった昨年はボルタ・ア・カタルーニャ第5ステージでワールドツアー初勝利を飾った注目の若手スプリンターだ。

5日間に渡り行われたチャレンジマヨルカもこれにて閉幕。初日を元世界王者ルイ・コスタ(ポルトガル)が制し、3日目でプロ初勝利を飾ったコーブ・ホーセンス(ベルギー)が翌日に2連続勝利を決めるなど、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティにとってこれ以上ない、新シーズンの滑り出しとなった。
トロフェオ・パルマ2023結果
1位 イーサン・ヴァーノン(イギリス、スーダル・クイックステップ) 3:17:57
2位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
3位 ヤルネ・ファンデパール(ベルギー、ロット・デスティニー)
4位 イバン・ガルシア(スペイン、モビスター)
5位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
6位 スタニスワフ・アニオコウスキ(ポーランド、ヒューマンパワードヘルス)
7位 トム・ファンアスブルック(ベルギー、イスラエル・プレミアテック)
8位 ダニエル・バボール(チェコ、カハルラル・セグロスRGA)
9位 アクセル・ジングレ(フランス、コフィディス)
10位 オウェイン・ドゥール(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos