ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がコクサイデの砂地獄で圧勝。マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)は背中痛の再発に苦しみ2位でレースを終えた。



長く険しいサンドセクションが特徴の長く険しいサンドセクションが特徴の"砂地獄" photo:CorVos
X2Oバドカマートロフェー第5戦の舞台は、走る者を奮い立たせ、観客を熱狂させる有名サンドコースのコクサイデ。例年UCIワールドカップの1戦として開催されてきた"砂地獄"は今年X2Oシリーズとして開催された。フランドル地方の海に面した街が誇る、世界で最も象徴的なシクロクロスコースに数万人もの観客が詰め掛けた。

女子エリート:ファンアンローイが作戦通りの独走勝利

1周目の砂区間で先頭に立つシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)1周目の砂区間で先頭に立つシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
この日は"三強"のうちパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が不在。圧倒的勝率を誇るフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)と、タフレースで強いシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)、さらにトレーニングセッションを終えた世界女王マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が戦線へと戻ってきた。

落車発生のスタートダッシュを経て、1周目からペースを上げたのはファンアンローイだった。速いランニングを織り交ぜて走るファンアンローイは、ファンエンぺルや元世界女王ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)やセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)を含む2位グループにリードを築く。膝を痛め、テーピングを施して走るファンエンぺルは2周目に2番手グループを抜け出したものの、10秒以上先を走るファンアンローイとのラップタイムは終盤に入ってもなお拮抗し続けた。

膝故障を抱えたまま走ったフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)は2位膝故障を抱えたまま走ったフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)は2位 photo:CorVos
独走勝利を収めたシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)独走勝利を収めたシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
「(チーム監督の)スヴェン・ネイスと打ち合わせた通り、砂区間でペースを上げて中盤区間で休む作戦がうまくいった」と振り返るファンアンローイが勝利。「轍では誰にも邪魔されたくなかったのでスタート直後から攻めた」と振り返る通りの完全勝利だった。

膝の故障を抱え、スタートするかどうかも分からなかったと言うファンエンペルは2位でこの日を終えた。「それでもレース中にどう痛むのか見るために出走。日曜日のゾンホーヴェン(UCIワールドカップ)も苦しむと思うけれど、あまり酷くないことを願っている。考えすぎないようにして過ごしたい」と新チームに移籍したばかりの欧州女王は話している。



男子エリート:ファンアールトがファンデルプールを"ノックアウト"

マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)にワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が続くマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)にワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が続く photo:CorVos
世界王者トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が欠場したものの、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)とマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がスタートラインに並ぶ。この日は梶鉄輝(JPF)とアレクサンダー・ジェームズ(オーストラリア、SNEL CYCLOCROSS TEAM)も顔を揃えた。

この日序盤から積極的に攻めたのは、2017-18シーズンから3年連続で勝利しているファンデルプールだった。名物の長いサンドセクションで一気に先頭を奪った元世界王者だったが、レース前に「僕は砂のスペシャリストじゃない」と話していたファンアールトと、砂を得意とするローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・フリスタッズ)が追従する。何度もファンデルプールがリードするシーンがあったものの、決定的な差をつけるには至らない。

ファンデルプールらを引き離すワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)ファンデルプールらを引き離すワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
元世界王者ゼネク・スティバル(チェコ、ジェイコ・アルウラー)はDNF元世界王者ゼネク・スティバル(チェコ、ジェイコ・アルウラー)はDNF photo:CorVosオフトレーニングの一環として参戦したフロリアン・フェルメルシュ(ベルギー、ロット・デスティニー)オフトレーニングの一環として参戦したフロリアン・フェルメルシュ(ベルギー、ロット・デスティニー) photo:CorVos


すると4周目、レース時間が半分を経過しようかというタイミングでファンアールトが逆襲に出た。「砂が得意ではないけれどコンディションは良い」と言うベルギー王者は、母国ファンの声援を背に得意のランニング区間でリードを奪う。一方、レース中に何度か背中を伸ばす仕草を見せていたファンデルプールは「急に背中が痛み始めてしまった。出だしはかなり良かったけれど、ある時点で踏めなくなった」とペースダウン。独走体制に持ち込んだファンアールトに待ったをかける選手は現れなかった。

ファンアールトは圧倒的なパワーとスキルを武器にハイペースを保ち、2番手を走るファンデルプール以下に対し後半30分間で実に1分半差を積み重ねる。2日前の第4戦をパンクで落とした悔しさを、圧倒的なパフォーマンスで返上してみせた。

圧勝したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)圧勝したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
X2Oバドカマートロフェー2022-2023第5戦男子エリート表彰台X2Oバドカマートロフェー2022-2023第5戦男子エリート表彰台 photo:CorVos
コクサイデの砂地獄で、ファンアールトが実に8年ぶりに勝利した。2位ファンデルプールに1分38秒、3位スウェークに2分07秒をつける圧勝。「ここで勝つことを熱望していたよ。怪我とレーススケジュールのために何年もここでの勝負を逃していたから」とファンアールトはレース後のインタビューで喜びを話した。「ジョージ(前日2歳になった息子)のバースデーケーキはまだ未完成。お祝いのためにもう一勝を用意したい」とも。

ファンアールトは今週末土曜日のスーパープレスティージュ(ファンデルプールは不在)を経て、日曜日のワールドカップで再びファンデルプールと再戦する予定。失速したファンデルプールは「心配だけどおそらく大丈夫。背中をよくストレッチして日曜日はベストを尽くしたい」とインタビューに答えている。
X2Oバドカマートロフェー2022-2023第5戦女子エリート結果
1位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 46:46
2位 フェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +0:15
3位 ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +1:10
4位 セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +1:53
5位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +2:18
6位 デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) +2:28
7位 サンヌ・カント(ベルギー、クレラン・フリスタッズ) +2:55
8位 ラウラ・フェルドンショット(ベルギー) +3:17
9位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) +3:31
10位 インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、777) +3:57
X2Oバドカマートロフェー2022-2023第5戦男子エリート結果
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 1:02:47
2位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +1:38
3位 ローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・フリスタッズ) +2:07
4位 エリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) +2:13
5位 ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +2:31
6位 ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +3:12
7位 イェンス・アダムス(ベルギー) +3:13
8位 ピム・ロンハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +3:19
9位 ヘルベン・クイペルス(ベルギー) +4:00
10位 ダーン・ソエテ(ベルギー、デスハフト・グループヘンス・マースコンテナーズ) +4:02
text:So Isobe

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