コルナゴからフラッグシップレーサー"V4Rs"が発表された。掲げられたテーマは、"Built to Win"。名車V3RsのDNAを受け継ぎつつ、勝利を手繰り寄せるために必要な5つの要素を妥協することなく追求し、生み出された次世代主力機だ。



コルナゴ V4Rsコルナゴ V4Rs (c)アキボウ
2020、2021年のツールを連覇し、今ツールでも2位へつけたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)。最強のグランツールレーサーの走りを支えてきたのが、イタリアの老舗であるコルナゴの"V3Rs"だ。軽量なモノコックフレームとカムテールデザインの融合によって、登りから平坦、下りまであらゆるシーンで武器となるオールラウンドな一台として活躍してきた。

2019年の発表以来、多くの栄光を掴み取ってきたV3Rsがついにモデルチェンジを果たす。"V4Rs"と順当にナンバリングを更新し、第4世代へと進化した。モデル名に冠する"V"はVelocita(スピード)、そしてVictory(勝利)のイニシャル。つまり、何よりも速く、勝利することを目的として作られたのがこのVシリーズということだ。

風洞実験を経て、V3Rs以上の性能に磨き上げられたV4Rs風洞実験を経て、V3Rs以上の性能に磨き上げられたV4Rs (c)Colnago
"Built to Win"。コルナゴが掲げたV4Rsのコンセプトもまた、Vシリーズの使命を再確認するようなフレーズだ。高みを目指すライダーに勝利を約束する一台として、V4Rsはコルナゴの有する全てのテクノロジーと2年の開発期間を経て生み出された。

V4Rsの開発にあたり、コルナゴは勝利の為に必要な5つの要素を抽出。空力、重量、剛性、快適性、堅牢性。レーシングバイクとして欠かすことのできない要素でありながら、相反する部分も多いこれらを、過去に類を見ない高い次元でバランスすることが目標とされた。

ツール・ド・フランスで登場したプロトティーポが遂にベールを脱いだツール・ド・フランスで登場したプロトティーポが遂にベールを脱いだ (c)Colnago
更にコルナゴが重視したのが、これらの要素がテストによる理論上の数値ではなく、現実世界において意味のある性能として結実すること。そのために、フレームやフォーク、専用コックピットといった全ての構成部位に対して、社内テストや検査機による試験だけでなく、レースと同じ条件下に置いた検証を実施したという。

その最も象徴的なエピソードが、今ツールに投入した最終プロトタイプ"PROTOTIPO"の存在だろう。2022年の5月に最初の1本がポガチャルに供給されたのち、他のUAEの選手らにも順次供用を開始したPROTOTIPOは、その後4カ月の間に10人の選手らに23度の勝利を、14人の選手に表彰台をもたらした。こうして世界最高峰のレースシーンでPROTOTIPOは磨き上げられ、V4Rsへと完成した。

エアロロードに匹敵する空力性能を持つ軽量バイク

エアロ向上のために重要視したフロントエンド。ハンドル、ヘッドチューブ、フォークのトータルデザインにより大きな効果を発揮するエアロ向上のために重要視したフロントエンド。ハンドル、ヘッドチューブ、フォークのトータルデザインにより大きな効果を発揮する (c)アキボウ
現代のレーシングバイクにまず求められるのが空力性能。エアロか軽さか、どちらに重きを置くかはブランドやモデルごとに異なっているが、片方しかないバイクはプロトンから姿を消している。その両者を高い次元でバランスするバイクこそが、現代のレースシーンのスタンダードであり、コルナゴのV3Rsは、その象徴とも言える一台でもあった。

そしてV4Rsは、その前作をしのぐエアロダイナミクスと軽量化を実現している。空力性能向上にあたり、コルナゴが重要視したのは全体のCd値に大きな影響を与える前面部の設計だ。フォーク、ヘッドチューブ、そして専用のCC.01インテグレーテッドハンドルバーをトータルでデザインすることで、空気の流れを最適化している。

エアロダイナミクスを考慮したカムテール形状のシートポストエアロダイナミクスを考慮したカムテール形状のシートポスト (c)Colnagoフォーククラウンとヘッドチューブのデザインをまとめることで、エアロを向上させたフォーククラウンとヘッドチューブのデザインをまとめることで、エアロを向上させた (c)Colnago


前作ではケーブル内装化の為にD型コラムを採用していたが、V4Rsではフロントエンドの安定性向上のため、真円のフォークコラムを採用。そのため、ヘッドチューブの上側ベアリングは前作よりも大きなサイズを用いているが、ヘッドチューブ形状をブラッシュアップすることで前方投影面積を拡大することなく、更に優れた空力性能を発揮するという。

新型のCC.01インテグレーテッドハンドルバーもまた、エアロダイナミクス向上の大きな要因だ。厳密にはC68と同時に発表されていたこのコックピットは、革新的なワンピースモノコック構造による軽量性と高い剛性を有しつつ、優れた空力性能も発揮するという。そして、CC.01インテグレーテッドハンドルバー専用に作成された3Dプリント製のサイクルコンピューターマウントも用意され、50km/h時に0.75Wを削減するという。なお、現時点ではワフー ELEMNT BOLT V2のみ対応となり、今後他モデルへの対応も検討されているとのことだ。

ボトルケージ台座部分を窪ませ、ボトルとチューブの距離を近づける事でエアロ向上を狙ったボトルケージ台座部分を窪ませ、ボトルとチューブの距離を近づける事でエアロ向上を狙った (c)アキボウ
これらの設計により、V4Rsは同条件の前作に対し50km/h時に3%、数値にして13.2Wの空力性能向上を実現。これはケイデンス90でペダリングするライダーが乗車した際の結果かつ、様々な風向きを現実的に遭遇する確率に従って加重平均した数値となっており、リアルな使用環境を想定したデータとなっているという。なお、様々なホイールとのマッチングを模索した結果、もっとも優れた組み合わせでは27.7W、割合にして6%もの抵抗削減を果たしたという。

これだけのエアロダイナミクス向上を果たしつつ、重量面においてもV4Rsは進化を果たしている。フレーム重量(塗装前)の比較では、798gとV3Rs(795g)に対して3g増加しているものの、フォークは375g(V3Rs:390g)と15g軽量化し、合計で12gを削減。更に、コックピットとヘッドセットを含むモジュール重量では1,668g(V3Rs:1,715g)と、47gもの減量を果たしている。

レースパフォーマンスに繋がる剛性向上を可能とした新指標、リアルダイナミックスティフネス

リアルダイナミックスティフネスというアプローチで剛性の設計を行なったリアルダイナミックスティフネスというアプローチで剛性の設計を行なった (c)アキボウ
ライダーのパフォーマンスを損なうことなく推進力に変換する、効率的なパワー伝達を示す指標として、多くのブランドが重要視してきたのがフレーム剛性だ。これまで一般的だったのは、フレームの特定部位に対して一つのベクトルの力を静的に加えるという手法により計測された数値であった。

しかし、コルナゴは実際の走行時において、そういったテストのように単純な力のみがかかることは無いことに着目。異なる様々な荷重が、同時に自転車全体に作用した際にフレームがどのような反応をするのかを重視した開発を行ったという。

そのために、コルナゴのエンジニアたちは、静的/動的、曲げ方向/ねじれ方向それぞれに対する負荷への反応を測定する試験方法を開発することから始めた。その結果生み出されたのが「リアルダイナミックスティフネス」という独自の剛性指標だ。

シーテッドクライムポジションという考えのもと剛性の調整が行われたシーテッドクライムポジションという考えのもと剛性の調整が行われた (c)ColnagoUAEチームエミレーツは来シーズンこのV4Rsでレースを戦うUAEチームエミレーツは来シーズンこのV4Rsでレースを戦う (c)Colnago


リアルダイナミックスティフネスでは、実際に使用シーンに応じた2つの数値を測定できるという。

一つはスプリントポジション。自転車を振るダンシングによって自転車の軸とはズレた方向へとペダリングパワーが加えられ、かつヘッドチューブやフォークといったフロントエンドへの強い捻じれ荷重がかかるシーンでの剛性を示すものだ。

もう一つがシーテッドクライムポジション。登りをシッティングで走るような状況では、スプリントのようなフロントへの荷重は少なくなり、体重はリアトライアングルへと集中する。そういったシチュエーションで、フレームが発揮する剛性を示す指標となる。

V4Rsは、スプリントポジションで4%、シッティングポジションで5%、それぞれV3Rsに対して剛性向上を果たしているという。参考までに、剛性指数を示す根拠として良く用いられる第三者機関のゼドラ―ラボによるテストでは、V3Rsに対してV4RsはBB付近で同等、ヘッドチューブ付近では5~10%低い数値を記録している。

ポガチャル「剛性が上がって、反応が良くなったのは確かだ。ダンシングで、より鋭く反応しリアクションも早くなっている」ポガチャル「剛性が上がって、反応が良くなったのは確かだ。ダンシングで、より鋭く反応しリアクションも早くなっている」 (c)Colnago
一方で、実走テストを行ったポガチャルは「剛性が上がって、反応が良くなったのは確かだ。ダンシングで、より鋭く反応しリアクションも早くなっている。高速の集団の中でも、アタックでも、スプリントでも僕を助けてくれる。とても大きな変化だよ」とV4Rsを評した。この2つの間にある齟齬を埋めるのが、リアルダイナミックスティフネスという指標の持つ意味なのだろう。

そして、この性能を実現するために大きな役割を果たしたのが、先ほども触れた最終プロトタイプの"PROTOTIPO"だ。多くのテストを経て残った5つの異なるカーボンレイアップを施した試作機を、極限環境であるワールドツアーに持ち込みテストすることで究極の一を導き出すというアプローチによって、室内試験機では到達できない高みへとV4Rsを羽ばたかせた。

より選びやすいサイズ展開へ

最小サイズは420から用意されたV4Rs最小サイズは420から用意されたV4Rs (c)Colnago
細やかで豊富なサイズ展開は、イタリアの老舗であるコルナゴの矜持でもある。V3Rsでは8サイズが展開されており、今作では7サイズが用意されている(国内では6サイズのみ)。数字だけ見れば1サイズを廃止したようにも見えるが、実際のところはジオメトリーを調整することでサイズ間の「かぶり」を無くし、より選択しやすい展開へと整理しなおした、というのが実際だ。

具体的には、リーチおよびスタックがサイズごとにリニアに変化する設定となっている。サイズ間でリーチの変動が大きかったり、少なかったりといったことが無く、更にリーチに対してのスタックの変動量も一貫しているため、サイズ選択を間違える心配が少なくなっている。またこの変更により、大きなサイズのチェーンステー長も短くなり、全サイズで408mmに統一、BBドロップも72mmに統一されている。

過酷なツールで証明された堅牢で高い信頼性

セラミックスピード社製のSLTヘッドセットは、固体ポリマーによる長期間の潤滑を実現セラミックスピード社製のSLTヘッドセットは、固体ポリマーによる長期間の潤滑を実現 (c)アキボウ
レースを戦う上で落車は避けられないアクシデント。それでも前に進むために、コルナゴはV4Rsを衝撃に強く、頑丈なバイクとして仕上げた。レース中に大きなダメージを受ける可能性の高い部位、例えばシートステーは、エアロなだけでなく曲げ耐性と耐衝撃性を大幅に向上させているという。

また、メンテナンス面でも可能な限りトラブルを排除する設計やパーツが用いられている。代表的な例となるのがヘッドセット。セラミックスピード社製のSLTヘッドセットは、固体ポリマーによる長期間の潤滑を実現。コルナゴとセラミックスピードの両者によって生涯保証されるほど、長期間の使用に耐えるシステムとなっている。

また、BB規格も前作で採用していた独自規格のスレッドフィット82.5から、T47へと変更されている。大口径でありならメンテナンス性に優れるスレッド式の汎用規格を用いることで、作業性にも配慮された仕様となった。

フレームセットおよび3種の完成車で展開

来シーズンの活躍に期待が高まるコルナゴ V4Rs。カラーは国内ではフレームセット(891,000円)およびシマノ DURA-ACE DI2とエンヴィ SES3.4のチームスペック完成車(2,200,000円)、DURA-ACE DI2×フルクラム WIND400完成車(1,760,000円)、ULTEGURA DI2×フルクラム WIND400完成車(1,485,000円)という4つのパッケージでの展開となる。価格は全て税込。

コルナゴ V4Rs(RVRD)コルナゴ V4Rs(RVRD) (c)アキボウコルナゴ V4Rs(RVBK)コルナゴ V4Rs(RVBK) (c)アキボウ


コルナゴ V4Rs(RVWH)コルナゴ V4Rs(RVWH) (c)アキボウコルナゴ V4Rs(WT23/チームADQ)コルナゴ V4Rs(WT23/チームADQ) (c)アキボウ




コルナゴ V4Rs
カラー:SDM3(UAEチームエミレーツ)、WT23(Team ADQ)、RVBK、RVRD、RVWH
サイズ:420、455、485、510、530、550
フレームセット:891,000円(税込)
DURA-ACE DI2&ENVE SES 3.4完成車:2,200,000円(税込)
DURA-ACE DI2&FULCRUM WIND 400完成車:1,760,000円(税込)
ULTEGURA DI2&FULCRUM WIND 400完成車:1,485,000円(税込)
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