落車が続出した混沌のパリ〜トゥールは40名超の集団スプリントで決着。アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が2年連続優勝に輝き、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)とニキ・テルプストラ(オランダ、トタルエネルジー)が華々しいキャリアにピリオドを打った。



スタート前にクリスティアン・プリュドム氏から記念品を受け取るフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)スタート前にクリスティアン・プリュドム氏から記念品を受け取るフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
パリ〜トゥール2022 コースプロフィールパリ〜トゥール2022 コースプロフィール image:A.S.O.今年で116回大会を迎えた伝統のパリ〜トゥール(UCI.Pro)がフランス中部シャルトルで開催された。前日のイル・ロンバルディアがクライマーやパンチャーの最終戦ならば、パリ〜トゥールはクラシックレーサーやスプリンターにとってのシーズン最後の大一番だ。

プロフィールだけ見ればスプリンター向きのフラットコースだが、終盤70kmには「コート」と呼ばれる登坂区間が8箇所も凝縮されている。また同日開催となったグラベル世界選手権ほどではないにせよ、10箇所の未舗装路区間が設定されている。

今シーズンを締めくくる大会だけに2連覇を狙うアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)や過去に2度優勝経験のあるマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)ら豪華メンバーが集結。2008年、09年と2連覇を達成したフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)も現役ラストレースとして出場した。

晴天の中スタートした第116回パリ〜トゥール晴天の中スタートした第116回パリ〜トゥール photo:CorVos
ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング チーム)を含む5名が逃げ集団を形成したヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング チーム)を含む5名が逃げ集団を形成した photo:A.S.O.
総距離213.5kmのレースの序盤で飛び出したのはアレクシー・グジャール(フランス、B&Bホテルズ KTM)ら地元フランスの選手たち。そこにヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング チーム)が加わった5名が逃げグループを作り、ユンボ・ヴィスマやUAEチームエミレーツが中心にコントロールするメイン集団に対し最大7分弱のリードを築いた。

パリ〜トゥールの代名詞と言われる強風が鳴りを潜めたこの日、プロトンでは狭い道幅の影響もあり落車が連発した。レース序盤にフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)やこれがラストレースとなるニキ・テルプストラ(オランダ、トタルエネルジー)らが落車。登坂区間や未舗装路が登場する残り70km地点に入ると、ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)も路面に叩きつけられレースを去った。

落車や未舗装路区間でバラバラになったプロトンからは、この日2つ目の未舗装路を利用して優勝候補の1人であるサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)とキム・ハイドゥク(ドイツ、イネオス・グレナディアーズ)が抜け出す。アレックス・キルシュ(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)らも追いつき、この5名が2分先にいる逃げ集団を追走した。

メイン集団から飛び出したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)とキム・ハイドゥク(ドイツ、イネオス・グレナディアーズ)メイン集団から飛び出したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)とキム・ハイドゥク(ドイツ、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
現役ラストレースとなったセバスティアン・ラングフェルド(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)現役ラストレースとなったセバスティアン・ラングフェルド(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos
逃げ集団から最後まで奮闘したアブラハムセンにハイドゥクらが合流した4名が、逃げ切り勝利を目指してフィニッシュを目指す。しかし、デマールを擁するグルパマFDJがプロトンのペースを上げ、残り1.3km地点で敢え無く吸収。いくつもの未舗装路や登坂区間を越えたレースは、本大会では珍しい40名超の大集団スプリントに持ち込まれた。

アルケア・サムシックやトレック・セガフレードが先頭を争ったものの、最終ストレートではグルパマFDJが主導権を奪取。残り150mでシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)のリードアウトを受けたデマールが発進し、背後についたエドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)や逃げからスプリントに加わったベネットらを退け大会2連覇を達成した。

未舗装路区間を駆けるメイン集団未舗装路区間を駆けるメイン集団 photo:CorVos
2連覇を達成したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)2連覇を達成したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos
「チームで掴んだ勝利だ。ほとんどのチームメイトがこの先頭集団でフィニッシュしたんじゃないかな。未舗装路区間は厳しかったものの、逃げに選手を送っていたので最小限の力で走ることができた。この2ヶ月間、多くのレースで7位以内に入っていたが勝利はなかった。最も勝ちたいレースでようやくの勝利を挙げることができた。シーズンを締めくくる最高の勝利だよ」とデマールは語った。

一方、現役最後のレースをジルベールは先頭集団内の27位でフィニッシュ。「アタックする脚はなかったものの、勝負を争う集団でフィニッシュできて本当に嬉しかった。楽しくも混沌のレースとなり、多くの落車が発生した。無傷で最終レースを終えることができて嬉しいよ」とジルベールは語り、20年に渡る選手生活にピリオドを打った。

また2014年にパリ〜ルーベを制し、2018年にはロンド・ファン・フラーンデレンで優勝するなど輝かしい実績を誇るテルプストラは20分10秒遅れの128位でレースを終えている。

パリ〜トゥール2022表彰台:2位エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)、1位アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、3位サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)パリ〜トゥール2022表彰台:2位エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)、1位アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、3位サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
フィニッシュ後、笑顔でインタビューに答えるフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)フィニッシュ後、笑顔でインタビューに答えるフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
パリ〜トゥール2022結果
1位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 4:53:01
2位 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)
5位 ルーカ・モッツァート(イタリア、B&Bホテルズ KTM)
6位 ドリス・ファンゲステル(ベルギー、トタルエネルジー)
7位 サンディ・デュジャルダン(フランス、トタルエネルジー)
8位 マティス・ルーヴェル(フランス、アルケア・サムシック)
9位 アモリ・カピオ(ベルギー、アルケア・サムシック)
10位 ユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック)
27位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)
128位 ニキ・テルプストラ(オランダ、トタルエネルジー) 20:10
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos