母国で表彰台に上がったマイケル・マシューズ(オーストラリア)は「脚の痛みが消えるほどの大声援に思わず涙が溢れてきた」と喜んだ。他にも2位のラポルトやファンアールト、チームメイトの優勝を喜ぶアラフィリップなど、世界選手権男子エリートロードレースを選手たちの言葉で振り返ります。



2位 クリストフ・ラポルト(フランス)

2位争いのスプリントを制したクリストフ・ラポルト(フランス)2位争いのスプリントを制したクリストフ・ラポルト(フランス) photo:CorVos
何位でフィニッシュラインを通過したのかわからなかった。銀メダルは嬉しいけれど、僕たちはここにアルカンシエルを狙いにやってきたので満足はできない。レースの詳しい状況は把握できず、残り1周の時点で状況が分かっていればもっと早く対処できたはずだ。

毎回勝てるほど勝負は易しくない。ジュリアン(アラフィリップ)は早い段階で自らのコンディションを伝えてくれていた。「大丈夫だがいつもよりは悪い」とね。僕はその言葉を「自分の脚の状態が不明のなか、僕たちに力を使うリスクを負ってほしくない」と理解した。逆に彼は僕たちをアシストしたいと思っていたのだが、レムコ(エヴェネプール)相手にできることは少なかった。

チームの誰一人として後悔はなく、不満を口にする理由もない。もちろん勝ちたかったが、この銀メダルは十分に嬉しい結果だよ。

3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア)

2位クリストフ・ラポルト(フランス)、1位レムコ・エヴェネプール(ベルギー)、3位マイケル・マシューズ(オーストラリア)2位クリストフ・ラポルト(フランス)、1位レムコ・エヴェネプール(ベルギー)、3位マイケル・マシューズ(オーストラリア) photo:CorVos
もし今朝3位という結果を告げられたら少し残念と思っただろう。けれど、良いレース運びができたので満足しているよ。母国であるオーストラリアで表彰台に上がることができたのでこれ以上の喜びはない。残念ながら僕の胸に虹色はないけれど、これは勝利を掴み取りにいった結果だ。

無線がない状況でレース状況を把握するのは難しく、僕たちは何位を目指しスプリントしているのか分かっていなかった。残り500mで前にいた集団を捉え、何もわからずスプリントした。

(ウロンゴン市街地の周回に入り)最初の数周回は集団前方に出て、詰めかけた観客の中を走る喜びを感じていた。その後は集団後方に戻り、レースモードに突入した。ラスト2周の観客の盛り上がりは凄まじく、特に登りではハイスピードで駆け上がったのにもかかわらず、観客の声援で脚の痛みを忘れるほどだった。特別な体験で、思わず涙が溢れてきたよ。

4位 ワウト・ファンアールト(ベルギー)

レムコ・エヴェネプールを祝福するワウト・ファンアールト(ベルギー)レムコ・エヴェネプールを祝福するワウト・ファンアールト(ベルギー) photo:CorVos
最終周に入ってから彼(エヴェネプール)が先頭で1人抜け出したことを知った。無線もなく、ナショナルチームで走るレースは奇妙な感覚だったよ。だからこそ自分が何位を目指しスプリントしているのか分からなかった。だがそれに対して不満はないし、チームとして勝利を挙げることができ本当に嬉しいよ。

レムコがクィンティン(ヘルマンス)と早い段階で先頭集団に合流することは作戦の一部だった。それによって僕にとっても完璧な状況が出来上がる。他国がレムコの独走が危険だと気づくまで大分時間がかかったね。でも全力で追ってくれれば僕にとってはますます有利な展開となるんだ。しかしレムコはそのまま力を発揮し、勝利を掴み取った。

僕たちはエクセレントなレースができた。チームメイトがレース先頭にいることは良い形だった。もしこれが違うレース(集団スプリント)であったとしても、僕は最高の位置取りができていた。多くの選手が僕をマークしており、それもレムコ(エヴェネプール)に独走勝利の助けになったはずだ。自分の役割を全うすることができて嬉しいし、最も力のある選手が勝ったということだ。

51位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス)

アルカンシエルをエヴェネプールに明け渡したジュリアン・フィリップ(フランス)が祝福アルカンシエルをエヴェネプールに明け渡したジュリアン・フィリップ(フランス)が祝福 photo:CorVos
最も強い選手が勝利したので後悔はない。だが(ラポルトの)2位は良い結果だ。僕らは素晴らしいチームで良いレースができた。自分たちで展開を作り、必要なところで動くことができた。

前にいた選手が勝ったのではない。前にいたのがレムコだから勝ったんだ。今日の彼は強く、またそれは今日に限ったことではない。彼は素晴らしいシーズンを送っている。彼の勝利に加え、アルカンシエルが(クイックステップに)残ったこともまた嬉しい。

様々な感情が入り混じっている。これからアルカンシエルではないジャージを着る自分を受け入れなければならない。2年もの間アルカンシエルの喜びを感じることができ、特別な思いでいっぱいだよ。

マチュー・ファンデルプールの状況について語るオランダのクリストフ・ルードフート監督

オランダ代表監督のクリストフ・ルードフート氏オランダ代表監督のクリストフ・ルードフート氏 photo:CorVos
マチューは9時にベッドに入り、12時になっても廊下で子どもたちが騒ぎ、マチューの部屋のドアを叩いた。3度目で彼は我慢の限界に達し、(扉の外には)両親が側にいない子どもたちがいたそうだ。そうしたら誰かが警察を呼び、マチューは警察に連れて行かれ状況の説明を求められた。

何があったかについて彼と話し合ってはいないが、彼は競技ができる状態ではないほど落ち込んでいた。一睡もすることなく、精神的に参っていた。途中棄権となったツール・ド・フランス以降、彼はこの2ヶ月間この日を目指しすべてを懸けていたんだ。彼は再び競技に楽しさと喜びを感じ、良いレースができることを望んでいた。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos