超級山岳マドレーヌ峠でマイヨジョーヌが遅れる事態が発生したツール・ド・フランス第9ステージ。アルプス最大の山岳ステージを終えた選手たちのコメント。

サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)ステージ優勝
ガッツポーズでゴールするサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)ガッツポーズでゴールするサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー) photo:Cor Vos「第1週目で大きく遅れたので、すでに総合成績の野望は打ち砕かれていた。総合で遅れた瞬間から、このステージに狙いを定めていたんだ。山岳はとても厳しかったけど、頂上ゴールじゃないので僕向きのコースだった。2008年ツールでシリル・デッセルに敗れてステージ2位になってから、今日のようなタイプのフィニッシュには慎重に挑むようになった。レース前にレイアウトをチェックしていたので、最後から2番目のコーナーを先頭で抜ける必要があるのは分かっていたし、それが成功すれば勝てると思っていた」

「でもまさかアンディ・シュレクたちが追いついてくるとは思わなかったよ。シュレクが少し先行したけど、全力で先頭を取り返し、最後の350mを先行し続けた。その時アタマを過ったのは、これまで多くのレースで2位に入ったこと。昨年僕の前でステージ優勝を飾ったLLサンチェスは特に怖かった。スピードがあるクネゴも危険な存在。でも『負けるもんか』と考えながら最後の200mを牽いた。LLサンチェスは最後のマドレーヌ峠で力を使いすぎたのかも知れない。この勝利は父に捧げたい。スプリンターの見地から言うと、今日のようなシチュエーションでは先手必勝。今日は臆することなく攻めることが出来た」


ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)ステージ2位
先頭でマドレーヌ峠を駆け上がるルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)先頭でマドレーヌ峠を駆け上がるルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Makoto Ayano「今日初めてチームとして山岳コースで攻撃を仕掛けた。コースの難易度は高かったけど、それによも暑さがレースを厳しくした。ムルシア生まれで暑さには強いはずなのに、みんなと同じように暑さに苦しめられていた。総合上位のチームメイトがいないので、チームの狙いはステージ優勝一本勝負だった。明日もサプライズが起こりそうなコースだ。様子を見てまたステージ優勝を狙いたいと思う」

ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)ステージ3位
「全力でステージ優勝に挑戦した誇り高い気持ちと、あと一歩勝利に手が届かなかった悔しい気持ちが入り交じっている。ツール・ド・フランスのステージ優勝とはまだ縁が無い。序盤のアタック合戦に加わっているとき、パンクで後退してしまった。そこで逃げが決まってしまい、気持ちが沈んでしまった。でもチームメイトのサポートを受けてもう一度アタック。全力でペダルを回し続けたおかげで何とか先頭グループに追いついた。カザールとLLサンチェスのスピードは心得ていた。でもカザールが仕掛けたとき、反応出来る脚が残っていなかった。こうしてまた一つ、勝てるレースを落としてしまった」


アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)マイヨジョーヌ獲得
マイヨジョーヌに袖を通したアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)マイヨジョーヌに袖を通したアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vos「僕じゃなくてカデル(エヴァンス)にとってドラマチックな一日になるはずだった。今日は厳しいステージだったよ。序盤からハイスピードで、好きな展開だった。選手たちがアタックで応戦し合う白熱した闘いだった」

「逃げグループに入ったイェンス(フォイクト)はファンタスティックな走りだった。彼には感謝しても感謝しきれないよ。クリスアンケル(セレンセン)やヤコブ(フグルサング)はマドレーヌ峠で集団先頭に立ってサポートしてくれたし、それまでもファビアン(カンチェラーラ)やステューイ(オグレディ)、ニキ(セレンセン)、つまりメンバー全員がファンタスティックな走りを見せてくれた。このジャージ(マイヨジョーヌ)は彼らのおかげだ。昔マイヨジョーヌを見たとき『あのジャージが欲しい!』と思った。それが今、手元にある。もちろんずっと着ていたい。マイヨジョーヌを着る夢が叶ったんだ」

「最後のマドレーヌ峠では、コンタドールを振るい落とすためにアタックした。あれは様子見のアタックなんかじゃない。出し惜しみすることなく、全力でアタックを繰り返した。あれ以上アタックしていたら、逆に自分が千切れていたかも知れない。彼がアタックで応戦して来なくて本当に良かった。今年のツールでステージ初優勝を飾り、そしてマイヨジョーヌを初めて着た。ファンタスティックだ。タイム差40秒のコンタドールを除いて、ライバル選手たちは皆大きくタイムを失った。これからは一人の選手を徹底的にマークする」


リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)ステージ10位・総合6位
マドレーヌ峠を上るリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)マドレーヌ峠を上るリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) photo:Makoto Ayano「近年のアルプスステージで一二を争うほど厳しいステージだった。有力選手たちは最後のマドレーヌ峠からゴールまでずっとフルスロットルだったんだ。アンディはおそらくアルベルト(コンタドール)の調子が良くないと判断して、ピレネーを待たずにアタックしたんだと思う。すぐに2人は見えなくなったけど、アルベルトはこれまでよりも調子が良さそうだったし、アンディからは遅れないと思っていたよ。僕はアンディやコンタドールらに食らいついていたけど、上りで遅れてしまった。遅れてからはただ苦しさとの闘い。ヘーシンクとメンショフの2人と一緒のグループに入ることが出来てラッキーだった。彼らのワゴンをヒッチハイクしたようなもの。上りでは遅れたけど、下りと平地で感覚が戻って来た。これは明日からのステージに向けて良いサインだ」


ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)ステージ18位・総合31位
追走グループ内でマドレーヌ峠を上るランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)追走グループ内でマドレーヌ峠を上るランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Makoto Ayano「休息日のおかげで調子が戻って来た。リーヴァイのライバル2人(ファンデンブロックとバッソ)と同じグループに入ったので、彼らに前を牽かせて、後方で走り続けた。そこから飛び出そうとは思わなかったよ。リーヴァイは総合で好位置につけているし、本来の力とリカバリー能力を発揮すれば総合上位を狙えるだろう」

「最後のツールは立派な態度で闘い抜きたい。運がなかったことを悔やんでも今さらどうにもならない。頭を上げて、チームのために走り、楽しみながらツールを最後まで走りたい」


カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ステージ42位・総合18位
ゴール後に抱き合うマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)とカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ゴール後に抱き合うマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)とカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos「明らかにアヴォリアズのステージ(第8ステージ)と比べてコンディションが落ちている。第8ステージ序盤の落車から48時間が経って、落車の影響が大きく出てしまった。今年は2度も健康的なトラブルを抱えている。1回目はジロ・デ・イタリア。そして2回目が今だ。本来の調子からはほど遠い状態にある。支えてくれる人々、BMCのボスであるアンディ・リースとその周囲の人々、自分を信じてこのプロジェクトに賛同してくれている人々みんなに感謝している。これまで万事順調に進んでいただけに、彼らを落胆させる結果になって残念だ」

「とにかく、今日、ツール制覇の夢は途絶えた。でも結果を洗い直してこれからのチャンスを見いだしたい。第8ステージでの落車によって多くのエネルギーが奪われた。マイヨジョーヌを獲得したことは、自分の脆弱性の現れだったのかも知れない」

BMCレーシングチームのジム・オショウィッツ代表
「休息日に肘と臀部の痛みを訴えたカデルを病院に連れて行ったんだ。そこで肘の骨折が判明した。チーム全体がこのことを口外しないようにして、何事もなかったかのように乗り切る予定だった。もしライバルたちに知れたら、もっと早い段階でカデルに対してアタックを仕掛けていただろう。カデルの怪我をかばうように、チームは集団をコントロールし続けた。結果がどうなるかなんて分からなかった。カデルは肘を自由に動かせず、チームメイトが集団をコントロールしている時でさえ苦しい表情を見せていた」


アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)マイヨアポワ獲得
先頭グループでマドレーヌ峠を駆け上がるダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)とアントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)先頭グループでマドレーヌ峠を駆け上がるダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)とアントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano「マイヨアポワ獲得は今日の目標ではなかった。今日はステージ優勝だけを考えて逃げに乗ったんだ。マドレーヌ峠のような名峰に自分の名前を刻んだことを誇りに思う。でも走っているときはステージ優勝以外考えていなかった。ゴール前でシュレク、コンタドール、モローの3人が追いついて来てから状況が一変した。アンディがすぐにグループを牽き始めたので、少しパニックになってしまった。何とかアンディを抜いたけど、最後の勝負に絡むほどの脚は残っていなかった。今日の勝利の秘訣は早めに仕掛けてコーナーを先頭で抜けること。サンディ(カザール)はそれを体現してみせた」

「マイヨアポワを獲得出来たのがせめてもの救い。これからジェローム・ピノーと闘うことになる。理論上、難易度の低い上りでは彼のほうが速い。僕の強みは1級山岳や超級山岳でポイントを獲得出来ることだ」


イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)ステージ15位・総合10位
アームストロングらと一緒にマドレーヌ峠を上るイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)アームストロングらと一緒にマドレーヌ峠を上るイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) photo:Makoto Ayano「今日はコンタドールとシュレクが圧倒的な力を見せつけた。彼ら2人のペースには誰も反応出来なかった。今日のステージで危機を迎えたことは隠しようもない事実。今日のようなステージでは、ペースを保って、タイムロスを如何に小さく抑えるかが重要なんだ。そう言った意味では、今日の結果は悪くない。タイム差はそれほど大きくないし、まだ挽回可能なステージが残っている。総合争いは2人に絞られたけど、自分の野望は変わらないし、モチヴェーションをもって最後まで闘いたい。これからはリカバリー力が鍵を握る」


ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)ステージ19位・総合11位
「厳しい闘いだったけど、昨年の総合10位以上を目指す姿勢に変わりはない。今年も休息日明けのステージで失速してしまった。でも下りと平地で貴重なタイムを挽回して、総合順位を守った。まだまだこれから調子が戻ってくる可能性がある。シュレクとコンタドールは別次元の走りだった」

カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)ステージ27位・総合15位
マドレーヌ峠で遅れたトーマス・ロヴクヴィストとブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)マドレーヌ峠で遅れたトーマス・ロヴクヴィストとブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto Ayano「今日は非常に厳しいステージで、序盤からずっと苦しんでいた。出来る限り集団に食らいついたけど、やがて遅れてしまった。これで総合上位狙いはますます厳しくなった。でも諦めたくないし、何よりツールを楽しみ続けたい」

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ステージ30位・総合16位
「疲労困憊だ。全力を尽くしたが、ライバルたちに付いていけなかった。これが人生だ。これ以上の走りは出来なかった。これからもベストを尽くして闘い続けたい。今の目標は総合トップ10だ。ただ諦めたくない」

トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)マイヨヴェール着用
「今日もまた厳しいコースレイアウト。しかもまた暑い一日だった。アルプス通過後の比較的難易度の低いステージで勝利を狙う。ピレネー山岳ステージに突入するまでに何回かスプリントのチャンスがあると信じている」

選手コメントはレース公式サイト、ならびにチーム公式サイトより。

text:Kei Tsuji

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