2010年7月13日、ツール・ド・フランス第9ステージがアルプスの難関山岳コースで行なわれ、総合首位エヴァンスが大きく遅れる中、逃げグループ内での闘いを制したサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)が優勝。アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)が念願のマイヨジョーヌに袖を通した。

マドレーヌ峠でマイヨジョーヌ脱落の衝撃

逃げグループを形成してコロンビエール峠を上るルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)逃げグループを形成してコロンビエール峠を上るルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Makoto Ayanoピレネー山脈ばかりに注目が集まっていたツール・ド・フランス第97回大会。休息日明けの第9ステージは、アルプス最大の山岳ステージでありながら、頂上ゴールではないことでどこか見下されていた感がある。しかしゴール32km手前の超級山岳マドレーヌ峠は、思わぬ総合変動を生み出した。

序盤のアタック合戦を攻略し、逃げグループを形成したのは11名。

コロンビエール峠で先頭グループを追うダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)コロンビエール峠で先頭グループを追うダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) photo:Makoto Ayanoこの中にはマイヨヴェールを着るトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)やマイヨアポワのジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)、総合20位ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)の姿が。

25km地点のスプリントポイントでマイヨヴェールのリードを広げることに成功したフースホフトは、1級山岳コロンビエール峠の上りが始まると役目を終えて後退。代わってダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)とレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が先頭グループに合流した。

コロンビエール峠でBMCレーシングチームがコントロールするメイン集団コロンビエール峠でBMCレーシングチームがコントロールするメイン集団 photo:Makoto Ayanoマイヨアポワのピノーは、最初の1級山岳コロンビエール峠でクリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ)に先頭通過を許しながらも、順調に山岳ポイントを加算した。しかしピノーのすぐ後ろでは、第8ステージ終了時点で山岳賞18位につけていたアントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)がコツコツと山岳ポイントを積み重ねていく。

LLサンチェスを含む12名の逃げグループは、BMCレーシングチームがコントロールするメイン集団から最大6分35秒のアドバンテージを得て超級山岳マドレーヌ峠に突入。登坂距離25.5km・平均勾配6.2%というこの破壊力抜群の上りでレースは動いた。

先頭でマドレーヌ峠を駆け上がるルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)先頭でマドレーヌ峠を駆け上がるルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Makoto AyanoBMCレーシングチームに代わってサクソバンクが集団ペースアップを図ると、そこからアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)がアタック。しかしヴィノクロフは先頭グループに追いつけないままメイン集団に引き戻される。

ハイペースで進むメイン集団からは脱落者が続出し、総合6位ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)や総合12位カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)に続いて、一番遅れてはならない人物、マイヨジョーヌのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)までも遅れてしまう。

アタックを仕掛けるアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)にアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)がついていくアタックを仕掛けるアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)にアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)がついていく photo:Cor Vosメイン集団の先頭ではエヴァンス脱落の一報を聞いたアスタナが急激にペースを上げ始め、アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とマイヨブランを着るアンディの2人だけが飛び出したカタチに。サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)の追撃は届かず、アンディとコンタドールの一騎打ちが始まった。

執拗にアタックを繰り返すアンディ。しかしコンタドールが千切れないことを悟ると、2人は協力してライバルたちを引き離しにかかる。逃げグループから脱落したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)がアンディの風よけとして献身的な走りを見せた。

懸命に追走するマイヨジョーヌのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)懸命に追走するマイヨジョーヌのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos総合争いが加熱する中、先頭ではLLサンチェス、クネゴ、シャルトー、そしてサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)の4名がグループを形成してマドレーヌ峠をクリア。このマドレーヌ峠で先頭通過を果たしたシャルトーは40ポイント(最終山岳はポイント2倍)を荒稼ぎし、ピノーと同ポイントの山岳賞トップに。規定によりマイヨアポワの移動が決まった。

マドレーヌ峠の頂上通過時で、コンタドールとアンディは2分遅れ、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)やデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)は3分30秒遅れ、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)やランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)は4分10秒遅れ。マイヨジョーヌのエヴァンスは実に10分近く遅れて頂上をクリアした。


ベテランカザールの雄姿 エヴァンス涙のマイヨジョーヌ喪失

先頭で最終コーナーを抜けたサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)先頭で最終コーナーを抜けたサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー) photo:Cor Vos先頭4名は1分45秒リードのままマドレーヌ峠の下りを終え、ゴールに至る約10kmの平坦区間に突入した。4名によるスプリント勝負に持ち込まれると思われたが、ゴールが近づくと牽制が入ってペースが落ちてしまう。

一方で総合のライバルたちを引き離したいコンタドールとアンディは、逃げグループから脱落したモローを吸収しながらハイスピードで巡航。ラスト1kmを切ってから先頭4名に合流し、7名によるゴールスプリント勝負に持ち込まれた。

ガッツポーズでゴールするサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)ガッツポーズでゴールするサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー) photo:Cor Vos事前にゴール前のコースレイアウトをチェックしていたカザール。それまで逃げグループを牽き続けたカザールが先行し、クネゴとLLサンチェスが追激する展開に。カザールは最後まで先頭を譲らず、そのままガッツポーズでゴールに飛び込んだ。

カザールは2007年にもステージ優勝を飾っており、これが自身2度目のステージ優勝。これまで目立つ結果を残せていなかったフランセーズデジューに念願の勝ち星をもたらした。

追走に力を尽くしたマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)に感謝するマイヨジョーヌのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)追走に力を尽くしたマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)に感謝するマイヨジョーヌのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos「第1週で失速し、総合成績の望みがすでに絶えていたので、このステージ優勝に狙いを定めていた。上りは厳しかったけど、頂上ゴールではなかったので、今日は自分向きのコース。今日のような状況では先手必勝なんだ(レース公式サイトより)」

下りと平坦区間で少しペースを取り戻したエヴァンスは、チームメイトのマウロ・サンタンブロジオ(イタリア)に連れられて8分09秒遅れでゴール。マイヨジョーヌを失ったばかりか、総合18位に転落。総合争いから完全に脱落してしまった。

マイヨジョーヌに袖を通したアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)マイヨジョーヌに袖を通したアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vos第8ステージの落車で肘を骨折し、その痛みに堪えながら出場していたエヴァンス。ゴール後、力を尽くしたサンタンブロジオの胸に収まり、涙に暮れた。

代わってマイヨジョーヌを獲得したのは、コンタドールに山岳バトルを挑んだアンディ。前々日に「出来るだけ早く着たい」と語っていたマイヨジョーヌに、初めて袖を通した。

アルプス最大のステージを終えて、総合争いはアンディvsコンタドールの様相を呈している。この2人の山岳バトルはピレネー山岳ステージまでお預け。翌日からサクソバンクが集団コントロールを担うことになる。

マドレーヌ峠でメイン集団から脱落した新城幸也(Bboxブイグテレコム)は、25分56秒遅れのグルペットでゴール。連日果敢にアタックを繰り返しているBboxブイグテレコムは、シャルトーのマイヨアポワ獲得に沸いていることだろう。


ツール・ド・フランス2010第9ステージ結果
1位 サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)     5h38'10"
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)
4位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ)         +02"
5位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
7位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
8位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)         +52"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)          +2'07"
10位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)
11位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
13位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)            +2'10"
15位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)            +2'50"
17位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
18位 ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)
19位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)          +3'48"
20位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
27位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)    +4'55"
30位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
42位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)   +8'09"
96位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)             +25'56"

第9ステージ敢闘賞
ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)      43h35'41"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)          +41"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)         +2'45"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)             +2'58"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +3'31"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)     +3'59"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)           +4'22"
8位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)      +4'41"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)          +5'08"
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)            +5'09"
11位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)          +5'11"
13位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)     +6'31"
15位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)    +7'13"
16位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)        +7'18"
18位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)   +7'47"
107位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)           +1h16'51"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)124pts
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)      114pts
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)    105pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)  85pts
2位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)      85pts
3位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ)      62pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)  43h35'41"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)       +4'22"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)       +5'11"

チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 131h05'36"
2位 レディオシャック    +31"
3位 アスタナ        +35"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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