第77回ブエルタ・ア・エスパーニャ最初のスプリントバトルをサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が制した。ステージ4位に食い込んだマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)がマイヨロホのチーム内引き継ぎに成功している。



8月20日(土)第2ステージ
スヘルトーヘンボス〜ユトレヒト 175.1km(平坦)


チームプレゼンテーションに多数のファンが集まったチームプレゼンテーションに多数のファンが集まった photo:Unipublic
8月20日(土)第2ステージ スヘルトーヘンボス〜ユトレヒト 175.1km8月20日(土)第2ステージ スヘルトーヘンボス〜ユトレヒト 175.1km image:Unipublic8月20日(土)第2ステージ スヘルトーヘンボス〜ユトレヒト 175.1km8月20日(土)第2ステージ スヘルトーヘンボス〜ユトレヒト 175.1km photo:Unipublic


前日に3年ぶりのチームタイムトライアルを終え、第77回ブエルタ・ア・エスパーニャのマスドステージがこの第2ステージから始まった。

マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)の故郷スヘルトヘンボスを出発し、湖水地方をジグザグに北上しながら開幕地ユトレヒトを目指す175.1kmコースは、オランダ国土を表現するかのように真っ平ら。コース中盤にある標高69.2mの4級山岳はこの州の最高標高地点だ。

マイヨロホのロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が登場マイヨロホのロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が登場 photo:Unipublic
マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)の故郷スヘルトヘンボスを出発マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)の故郷スヘルトヘンボスを出発 photo:Unipublic
集団スプリント予想100%のこの日、スタート直後にジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)を含む5名がするすると抜け出し、追走の気配すらないメイン集団を置き去りにして逃げを決める。タイム差はすぐさま3分、4分と開いていった。

逃げグループを形成した5名
ジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)
イェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)
パウ・ミケル(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)
シャビエル・アスパレン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
ティボー・ゲルナレック(フランス、アルケア・サムシック)

今回ワイルドカード(招待枠)で参戦した4つのUCIプロチームがそれぞれ一人ずつメンバーを加え、スペイン籍のチームで活動するオランダ人選手のボルもその中にジョイン。この日が誕生日でグランツール初参加のパウ・ミケル(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)を含め、第77回ブエルタのファーストブレイクを飾るに相応しいエスケープが形成された。

レース観戦日和の週末。沿道には多数のファンが詰めかけたレース観戦日和の週末。沿道には多数のファンが詰めかけた photo:Unipublic
ロベルト・ヘーシンク(オランダ)らユンボ・ヴィスマ勢が固まって走るロベルト・ヘーシンク(オランダ)らユンボ・ヴィスマ勢が固まって走る photo:CorVos
運河沿いの平坦路を駆け抜ける運河沿いの平坦路を駆け抜ける photo:Unipublic
順調にローテーションを回し、平均スピード45km/hに達しようかというハイペースで逃げる先頭5名を追ったのは、マイヨロホ擁するユンボ・ヴィスマではなく、スプリント狙いのアルペシン・ドゥクーニンクだった。フロリス・デティエ(ベルギー)の一人引きをチームメイトが引き継ぐとタイム差はみるみるうちに減少し、100km以上を残して2グループは僅か200〜300m差まで急接近してしまう。しかし吸収に伴うレース激化を誰もが嫌ったためか、アルペシンは逃げを飲み込むことなくペースダウンを選んだ。

今大会最初の山岳ジャージ着用(チームTTで勝利したユンボ・ヴィスマのクリス・ハーパーが着用していたものの)を目指し、105km地点の4級山岳では先頭5名間に緊張感が高まった。次々とアタック合戦が掛かり、最終的に母国オランダファンの大声援を受けたファンデンベルフがティボー・ゲルナレック(フランス、アルケア・サムシック)をスプリントで下す。ツール・ド・フランスのマグナス・コルト(デンマーク/ファンデンベルフのチームメイト)を思い起こさせる展開に沿道のボルテージは最高潮に達した。

メイン集団先頭でタイム差を縮めるフロリス・デティエ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)メイン集団先頭でタイム差を縮めるフロリス・デティエ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:Unipublic
逃げに乗り、山岳ポイントを取ったジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)逃げに乗り、山岳ポイントを取ったジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos
世界王者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)世界王者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:Unipublic
2グループ間の差は1分〜30秒程度で伸び縮みを繰り返していたが、4級山岳で脚を使った先頭グループは徐々にペースダウンし、フィニッシュまで残り60kmを切ったところでついに集団に飲み込まれる。暫しタイミングを置いてルイス・マテ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が一人飛び出した。

アスパレンからチーム内の逃げバトンを繋いだマテは、メイン集団がスプリントに向けて活性化するまで逃げて引き戻される。加速度的に熱を帯びるメイン集団内では落車も発生し、激しく投げ出されたステフ・クラス(ベルギー、ロット・スーダル)が今大会の第一号リタイアとなってしまう。

幅広の2車線道を、スプリントだけでなく総合エースの危険回避を狙うチームもが列車を横一列に並べて突き進む。残り5kmから始まるユトレヒト市街地コースのコーナーのたびに伸び縮みをくり返す中、残り1kmを切って主導権を握ったのはUAEチームエミレーツやトレック・セガフレードだった。

前に押し出される形になったUAEトレインが一度ペースを落とし、その間隙を突いたアレックス・キルシュ(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)がマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)を発射させる。しかし加速に手間取るピーダスンに対してサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)を引き連れたダニー・ファンポッぺル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)が後方から猛然と追い上げ、最高速でベネットを解き放つ。呼応して踏み込むピーダスンと、追い上げるティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)を退けたベネットが右手を振り上げた。

頭一つ抜け出してフィニッシュを目指すサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)頭一つ抜け出してフィニッシュを目指すサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Unipublic
今大会最初の集団スプリントを制したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)今大会最初の集団スプリントを制したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
「ダニーは高速状態から僕を発進させてくれたんだ。遅すぎるかもしれないけれどそこから数秒待ってスプリント。正直言えばあの状況からさらに加速できるか分からなかったけれど、最終的に全てうまくいった。またこのブエルタで勝つことができて本当に嬉しいよ。時間の問題だったけれどハッピーだ」と振り返るベネットにとっては2020年大会に続く約2年ぶりのグランツールステージ優勝だ。

マイヨロホのロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)たちは危なげなく集団内フィニッシュし、4位に入ったマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が着順によってマイヨホロを譲り受けることになった。

約2年ぶりのグランツールステージ優勝を遂げたサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)約2年ぶりのグランツールステージ優勝を遂げたサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
マイヨロホの感触を確かめるマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)マイヨロホの感触を確かめるマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:Unipublic
近年のグランツールのような荒れた展開にもならず、骨折リタイアしたクラスを除き、ほぼ平穏な展開でブエルタ初日のマスドステージが閉幕。翌日の第3ステージもスプリンター向きの平坦基調コースが設定されているため、この日後方に埋もれたメルリールやピーダスンはリベンジを狙ってくるはず。マイヨロホを着たテウニッセンのステージ優勝にも期待が掛かっている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第2ステージ結果
1位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 3:49:34
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
3位 ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
4位 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
5位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)
6位 ダニエル・マクレー(イギリス、アルケア・サムシック)
7位 イタマル・アインホルン(イスラエル、イスラエル・プレミアテック)
8位 ジェイク・スチュアート(イギリス、グルパマFDJ)
9位 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チームDSM)
10位 カーデン・グローブス(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
マイヨロホ 個人総合成績
1位 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) 4:14:14
2位 エドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ)
3位 サム・オーメン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
4位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
5位 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)
6位 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
7位 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) +0:13
8位 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
9位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)
10位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)67pts
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) 50pts
3位 ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) 20pts
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 ジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) 2pts
2位 ティボー・ゲルナレック(フランス、アルケア・サムシック) 1pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 4:14:27
2位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)
3位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)
チーム総合成績
1位 ユンボ・ヴィスマ 11:53:22
2位 イネオス・グレナディアーズ +0:13
3位 クイックステップ・アルファヴィニル +0:14
text:So Isobe
photo:Unipublic