ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップ・アルファヴィニル)の逃げは残り200mを切って捉えられ、抜群のリードアウトを得たパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)が今季待望のビッグレース勝利を挙げた。



ツール・ド・ポローニュ4日目がスタートツール・ド・ポローニュ4日目がスタート photo:Tour de Pologne
ツール・ド・ポローニュ(UCIワールドツアー)4日目は、レスコからサノクまでポーランド南東部の丘陵地帯をぐるりと駆け抜ける。2級山岳が合計3ヶ所用意され、総獲得標高は2,600mを越えるものの、登坂耐性を持つスプリンターを振り落とすものではない。

チームスタッフ5名がPCR検査陽性となった(選手は全員陰性)アルペシン・ドゥクーニンクがレースを去ったこの日は、逃げを狙うアタック合戦と、横風による集団分裂など慌ただしい展開でスタート。40km以上を走ってナンス・ペテルス(フランス、AG2Rシトロエン)を含む5名の逃げが決まり、ようやくレースは落ち着きを見せた。

スタート直後からアタック合戦が活発化。40km以上を消化して逃げが決まったスタート直後からアタック合戦が活発化。40km以上を消化して逃げが決まった photo:Tour de Pologne
逃げグループを作るルイ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)たち逃げグループを作るルイ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)たち photo:Tour de Pologne
逃げに入ったカミル・マウェツキー(ポーランド、ロット・スーダル)が山岳ポイントを連取して翌日の山岳賞ジャージ着用を決め、後半にかけて徐々にスピードを上げるメイン集団からはマーク・カヴェンディッシュ(クイックステップ・アルファヴィニル)やフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) といった重量級スプリンターが脱落を喫してしまう。

初日勝者オラフ・コーイ(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)がギリギリ集団に食らいついて最終盤に入り、逃げグループから最後まで粘っていたルイ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)たちを残り3.3kmで引き戻す。すると「今朝コースマップを見て、何ができるかワクワクしていた」と言うゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップ・アルファヴィニル)がカウンターアタックで飛び出した。

春先にコロナ陽性となり2ヶ月間レースから離れていた鬱憤を晴らすべく、スティバルはアップダウン区間で人数を減らしていたメイン集団に対して一気に8秒リードを確保する。慌てて追走するメイン集団先頭付近では残り2kmを切って落車が起き、前日にバースデーウィンを挙げた総合首位セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)が路面に投げ出されるシーンも。大怪我を免れて再乗車したイギータは遅れてフィニッシュしたものの、救済措置適用によってリーダージャージを守っている。

メーウスやミランを抑えて勝利したパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)メーウスやミランを抑えて勝利したパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
待望の今季初ワールドツアー勝利を挙げたパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)待望の今季初ワールドツアー勝利を挙げたパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ) photo:Tour de Pologne
落車で傷ついたセルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)がフィニッシュ落車で傷ついたセルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)がフィニッシュ photo:Tour de Pologne
そんな混乱を味方につけて「イチかバチか」で逃げ続けたスティバル。残り1kmを切ってもなお10秒リードを維持してチャンスを広げたものの、それまでの向かい風でジャブを喰らい、最後の最後、残り300mを切って現れた登り勾配で失速してしまう。スプリント体勢に入ったメイン集団が圧倒的な速度差でスティバルを飲み込み、続いてフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)がパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)を発射する。ジョナタン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らの追撃を退けたアッカーマンが勝利した。

2021年のツール・ド・フランス出場を逃し、今年新天地UAEに移籍したアッカーマンにとって、ようやくの今季2勝目。勝てない日々が続いていた28歳は「怪我以降、ようやく自分の力が戻ってきたように思う。残りのシーズンのためにも重要な勝利だ。今日は登りが多かったけれど勾配がキツくなく僕向きだった。素晴らしいリードアウトを披露してくれたモラノをはじめ、チームメイトに感謝したい」とコメント。すぐに迫った今季自身初となるグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャに向けて弾みをつけることに成功している。
ツール・ド・ポローニュ2022第4ステージ結果
1位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ) 4:21:46
2位 ジョルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 ジョナタン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
4位 クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
5位 オラフ・コーイ(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
6位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)
7位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
8位 カンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)
9位 スタニスワフ・アニオコウスキ(ポーランド、ポーランドナショナルチーム)
10位 ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
個人総合成績
1位 セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) 19:52:46
2位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) 0:04
3位 クイントン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) 0:06
4位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:10
5位 マッテオ・ソブレロ(イタリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
6位 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)
7位 マウロ・シュミット(スイス、クイックステップ・アルファヴィニル)
8位 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 0:10
9位 カンタン・パシェ(フランス、グルパマ・エフデジ)
10位 ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
その他の特別賞
山岳賞 カミル・マウェツキー(ポーランド、ロット・スーダル)
ポイント賞 オラフ・コーイ(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
チーム総合成績 イネオス・グレナディアーズ
text:So Isobe
photo:CorVos

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