アルプス山脈からマイヨジョーヌを争う舞台はピレネーへ。初日から勾配18%の壁(ミュール)を越え、ペイラギュード峠、オタカム峠といった険しい山岳に臨む。40.7kmの個人TT、そして最終シャンゼリゼ決戦。多彩なツール第3週目のステージを紹介します。



7月19日(火)第16ステージ
カルカッソンヌ 〜 フォワ 178.5km(丘陵ステージ)


7月19日(火)第16ステージ カルカッソンヌ 〜 フォワ 178.5km7月19日(火)第16ステージ カルカッソンヌ 〜 フォワ 178.5km image:A.S.O.大会最後の休息日で英気を養った選手たちは、ピレネー山脈の山岳3連戦へ。第16ステージのスタート地点は2日前のフィニッシュ地点であるカルカッソンヌ。そこかから西に向かい4級、3級山岳と中間スプリントを経て、残り65km地点からいよいよ山岳バトルが幕開ける。

まず1級山岳ール・ド・レルス(距離11.4km/平均7%)を登坂し、下りってから息をつく間もなく1級山岳ミュール・ド・ペゲール(距離9.3km/平均7.9%)を登り詰める。約6%から徐々に勾配を増していくこの山岳は、山頂手前の約3.3km地点で最大勾配18%が登場。その後も平均11〜13%の「壁(ミュール)」が山頂まで続き、フィニッシュ地点はソッコから21.4km下った先にある街フォワにある。

ミュール・ド・ペゲールは直近で2回登場しており、2017年は今大会コロナ陽性でレースを去ったワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)がマイヨ・ポワを着て勝利し、その5年前は頂上付近でまきびしが撒かれたことで騒然となった場所。総合勢や逃げ切り勝利を狙う選手たちにとって登坂力はもちろん、下りのテクニックやスプリント力も試されるステージとなる。

第16ステージ カルカッソンヌ 〜 フォワ 178.5km第16ステージ カルカッソンヌ 〜 フォワ 178.5km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時11分頃(日本時間)



7月20日(水)第17ステージ
サンゴーダン 〜 ペラギュード 129.7km(山岳ステージ)


7月20日(水)第17ステージ サンゴーダン 〜 ペラギュード 129.7km7月20日(水)第17ステージ サンゴーダン 〜 ペラギュード 129.7km image:A.S.O.第17ステージの総距離はたった129.7kmで、スタートから53.6kmは平坦路。つまりこの日をピレネー山岳ステージたらしめる4つのカテゴリー山岳は、残り76kmに詰め込まれている、短くも過酷なレイアウトなのだ。

1つ目の1級山岳アスパン(距離12km/平均6.5%)と2級山岳ウルケット・ダンシザン(距離8.2km/平均5.1%)は、勾配が比較的緩やかなこともあり、大きな動きはなさそう。本格的な登坂バトルが始まるのは続く1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ(距離10.7km/平均6.8%)からになるだろう。

7.2kmの急勾配の下り〜平坦区間を経て臨むのは1級山岳ペイラギュード(距離8km/平均7.5%)の登坂。4.5%の緩やかな登り口のから勾配が一気に8%まで上がり、ラスト1kmには最大勾配16%の激坂が待ち受ける。

フィニッシュ地点はペイルスルド・バレスタス空港の小型機専用滑走路。今大会でかつての輝きを取り戻しつつあるロマン・バルデ(フランス、チームDSM)が、2017年にマイヨジョーヌを着るクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)に対し22秒差をつけステージ優勝を挙げた場だ。

第17ステージ サンゴーダン〜ペラギュード 129.7km第17ステージ サンゴーダン〜ペラギュード 129.7km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時1分頃(日本時間)



7月21日(木)第18ステージ
ルルド 〜 オタカム 143.2km(山岳ステージ)


7月21日(木)第18ステージ ルルド 〜 オタカム 143.2km7月21日(木)第18ステージ ルルド 〜 オタカム 143.2km image:A.S.O.第109回ツールに登場する最後の山岳ステージは、前日よりは長いながら短距離と呼べる143,2kmで争われる。基本的なレイアウトは前日と同じで、スタートから58.5kmの平坦区間を進んでから超級→1級→超級と合計獲得標高4,036mの山岳路に挑む。

この日選手たちが挑む3つの峠の平均勾配はいずれも急だ。まず現れるのは超級山岳オービスク(距離16.4km/平均7.1%)で、その山頂からは休みなく1級山岳スパンデル(距離10.3km/平均8.3%)を越えていく。

このスパンデルはツール初登場だが、2012年のルート・デュ・スッド(現ルート・ド・オキシタニー)で当時22歳のナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)が優勝した登り。道幅が狭く荒れた舗装路、20あるコーナーの勾配は所々で10%を超え、攻撃を仕掛けるにはうってつけの場所だ。

そして登坂決戦の締めくくるのは、超級山岳オタカム(距離13.6km/平均7.8%)。ツールには過去5度登場しており、2014年大会では同じ第18ステージでマイヨジョーヌのヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン)が独走で勝利し、そのままパリで総合優勝に輝いた。

第18ステージ ルルド 〜 オタカム 143.2km第18ステージ ルルド 〜 オタカム 143.2km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時38分頃(日本時間)



7月22日(金)第19ステージ
カステルノ・マニョアック 〜 カオール 188.3km(平坦ステージ)


7月22日(金)第19ステージ カステルノ・マニョアック 〜 カオール 188.3km7月22日(金)第19ステージ カステルノ・マニョアック 〜 カオール 188.3km image:A.S.O.開幕からすでに3週間。ピレネー山脈を耐え忍んだスプリンターが待ちわびた平坦ステージがやってくる。一方で山岳決戦を終え、翌日の個人タイムトライアルに脚を溜めたい総合勢にとっては休息の1日となりそうだ。

カステルノ・マニョアックをスタートした選手たちは、重厚感ある赤ワインの生産地として知られるカオールに向かって北上する。ちなみに、ここまでで既に勝負が決しているかもしれないマイヨヴェール争いに重要な中間スプリントが、38.4km地点に設定されている。

終盤に2つの4級山岳が登場するものの、どちらも距離2km/平均勾配6%程度とピュアスプリンターも問題なく登坂できるだろう。そしてフィニッシュ地点はロット川の近く。勾配は5%と登り基調のスプリントはマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)やマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)、またペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)向けだ。

第19ステージ カステルノ・マニョアック 〜 カオール第19ステージ カステルノ・マニョアック 〜 カオール image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時27分頃(日本時間)



7月23日(土)第20ステージ
ラカペル・マリバル 〜 ロカマドゥール 40.7km(個人タイムトライアル)


7月23日(土)第20ステージ ラカペル・マリバル 〜 ロカマドゥール 40.7km7月23日(土)第20ステージ ラカペル・マリバル 〜 ロカマドゥール 40.7km image:A.S.O.ツール主催者であるA.S.O.は個人タイムトライアルを3年連続でシャンゼリゼ決戦の前日に持ってきた。第109回ツールのマイヨジョーヌの行方を決める「時間との戦い」のコースは平坦基調。だがその距離は40.7kmと逆転劇の可能性を残すには十分な長さだ。

フランス南西部ロット県の街ラカペル・マリバルを駆け出した選手たちは、ロカマドゥールを目指し西に進路を取る。基本的には平坦かつ直線基調とTTスペシャリスト向きのレイアウトだが、ラスト1.5kmはロカマドゥールの病院に向かう距離1.57km/平均勾配7.2%の坂を登る。この登坂時間4分に満たない登りが、ステージ優勝とマイヨジョーヌの行方にどう影響するだろうか。

第109回ツール・ド・フランスの実質的な総合優勝者を知った選手たちは、大移動と最終日に向けて休息の時を迎える。

中間計測地点
10.6km、22.1km、32.6km

第20ステージ ラカペル・マリバル 〜 ロカマドゥール 40.7km第20ステージ ラカペル・マリバル 〜 ロカマドゥール 40.7km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時49分頃(日本時間)



7月24日(日)第21ステージ
パリ・ラデファンス 〜 パリ・シャンゼリゼ 115.6km(平坦ステージ)


7月24日(日)第21ステージ パリ・ラデファンス 〜 パリ・シャンゼリゼ 115.6km7月24日(日)第21ステージ パリ・ラデファンス 〜 パリ・シャンゼリゼ 115.6km image:A.S.O.前日のフィニッシュ地点であるロカマドゥールから約550kmの移動を終えた一行は、パリ西部のラグビー場と2024年パリ五輪の競泳&水球の会場であるパリ・ラ・デファンス・アリーナをスタート。そして47年連続でツールはシャンゼリゼで千秋楽を迎える。

選手たちは厳しい3週間を走り切った開放感と達成感を味わいながら午後16時30分(日本時間23時30分)にスタート。そして33年振りに復活したツール・ド・フランス・ファムの開幕レースの興奮が冷めやらないシャンゼリゼ周回コースへ突入する。凱旋門の周回路やコンコルド広場、ルモニエトンネルを含むいつもの6.8km周回コースを8周する。

フィニッシュ予想時刻は他のステージよりもずっと遅い午後19時34分(日本時間午前2時34分)。「スプリンターの世界選手権」とも呼ばれるシャンゼリゼ決戦が幕を閉じると、すぐさま第109代ツール総合優勝者を祝う表彰式が凱旋門をバックにした表彰台で執り行われる。

第21ステージ パリ・ラデファンス 〜 パリ・シャンゼリゼ 115.6km第21ステージ パリ・ラデファンス 〜 パリ・シャンゼリゼ 115.6km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前2時34分頃(日本時間)

text:Sotaro.Arakawa

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