サバイバルな丘陵ステージで幕を開けたツール・ド・スイス。ツールを見据える強豪選手たちを抑え、混沌の集団スプリントを26歳スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)が制した。



チームプレゼンテーションを行う新城幸也を含むバーレーン・ヴィクトリアスの選手たちチームプレゼンテーションを行う新城幸也を含むバーレーン・ヴィクトリアスの選手たち photo:Bahrain - Victorious
クリテリウム・デュ・ドーフィネの最終日に、それと双璧を成すツール・ド・フランスの前哨戦ツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)が開幕した。スイス全土の主に山岳地帯を舞台とした、今年で第85回目を迎えた伝統ある8日間のステージレースだ。

スイス北部チューリッヒ州のキュスナハトで開幕した初日は、2つの3級山岳を含む約45kmのコースを4周回する、総距離177.6kmの丘陵ステージ。18のUCIワールドツアーチームにツールを見据えるアルペシン・フェニックスやトタルエネルジー、そこにヒューマンパワードヘルスとスイスナショナルチームが加わる全22チームがスタート地点に出揃った。

各ステージの紹介や有力選手をまとめたレースプレビューはコチラから。

逃げに乗り山岳賞ジャージを獲得したクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)逃げに乗り山岳賞ジャージを獲得したクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード) photo:Trek - Segafredo
ツール・ド・フランスを見据えて出場したマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)ツール・ド・フランスを見据えて出場したマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) photo:Team BikeExchange - Jayco
2つの異なる3級山岳を計8度登坂するスプリンターには厳しいコースで、チャド・ヘイガ(アメリカ、ヒューマンパワードヘルス)やジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・フェニックス)ら7名が逃げ集団を形成する。山岳ポイントのかかる3級山岳の頂上ではクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)とシモン・フィッツトゥーム(スイスナショナルチーム)が激しく争い、結果的にシモンズが山岳賞ジャージを射止めている。

メイン集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア)のためにバイクエクスチェンジ・ジェイコが、逃げとのタイム差を3分以上許さずタイトにコントロールする展開。そして来るツールで今年も総合エースを務めるリゴベルト・ウラン(コロンビア)を擁するEFエデュケーション・イージーポストに牽引が代わり、速度が上がったプロトンはバラバラと遅れてくる逃げ選手たちを吸収。その一方でペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)やアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)など重量級の選手たちが脱落した。

フィニッシュまで残り5km地点に設定された最終3級山岳の頂上を、人数が絞られたメイン集団からヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)が加速しトップで通過。この動きにレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)が同調し、少し遅れてアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)などが追従。しかし、このペースアップにツールを見据えるウランやティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)などエース級の選手たちが遅れを喫した。

メイン集団のコントロールを担ったバイクエクスチェンジ・ジェイコメイン集団のコントロールを担ったバイクエクスチェンジ・ジェイコ photo:Team BikeExchange - Jayco
15名の先鋭集団には総合優勝を狙う選手に加えシュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)やパンチャーも残ると、そのまま高速でフィニッシュスプリントに持ち込まれた。そしてその勝負を制したのはマルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ)やアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナカザフスタン)でも、エヴェネプールでもなく26歳の伏兵スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)だった。

先行してスプリントを開始したイラン・ファンウィルデル(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)の背後を取ったウィリアムズ。アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル)やマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)らを上回る加速力でウィリアムズが勝利を掴み取った。

混戦の集団スプリントで先頭に出るスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)混戦の集団スプリントで先頭に出るスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
強豪を抑え初日勝者に輝いたスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)強豪を抑え初日勝者に輝いたスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
トップ選手たち相手に見事なスプリント力を見せたウィリアムズは「タフなステージで掴んだ最高の結果だ。一日を通して日差しが強くサバイバルなコースだった。強豪選手揃いのなか勝利できたなんて素晴らしい。興奮が収まらないよ。上手く行かなかった数年間を過ごしこんな大舞台で勝つことができ、天にも昇る心地だよ」と喜ぶ。

26歳のウィリアムズは2018年のジロ・デ・イタリアU23で区間優勝を挙げると、その同年8月にバーレーン・メリダ(当時)に加入する。しかし同年の11月に腱障害で手術を受けると、2019、20年は成績が低迷。そして昨年のクロ・レース(UCI.2.1)で区間1勝と総合優勝し、復活の兆しを見せていた。

翌日の第2ステージも今大会最長の198kmコースに3つのカテゴリー山岳が設定された丘陵ステージ。フィニッシュ手前15km地点で頂上を迎える2級山岳シャルパス(距離6.3km/平均6.2%)が勝負の鍵となる。

勝利と共にリーダージャージも着用したスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)勝利と共にリーダージャージも着用したスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
ツール・ド・スイス2022第1ステージ結果
1位 スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) 4:16:51
2位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル)
4位 マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ)
5位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナカザフスタン)
6位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)
7位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)
8位 セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)
9位 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
11位 アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
12位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)
13位 ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)
14位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
15位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)
個人総合成績
1位 スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) 4:16:41
2位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:04
3位 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル) 0:06
4位 マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ) 0:10
5位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナカザフスタン)
6位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)
7位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)
8位 セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)
9位 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
その他の特別賞
ポイント賞 スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
山岳賞 クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)
ヤングライダー賞 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル)
チーム総合成績 ボーラ・ハンスグローエ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos