トップチームを支えるジロの「ECLIPSE SPHERICAL」をテスト。エアロと安全性、日本人に完全フィットする帽体形状を獲得し、見た目からは想像できない通気性も両立。トップモデルから1万円安価という今注目すべきエアロロードヘルメットだった。



ジロの新型エアロロードヘルメット「ECLIPSE SPHERICAL」ジロの新型エアロロードヘルメット「ECLIPSE SPHERICAL」
ようやく、と言った方がいいだろう。昨年序盤からグルパマFDJの選手たちが実戦投入し話題となってから1年以上。ジロが今年春に正式リリースした新型エアロロードヘルメットが「ECLIPSE SPHERICAL(エクリプス・スフェリカル)」だ。

テクノロジーに関しては登場時のプロダクトレビューに詳しいが、ECLIPSE SPHERICALは前作VANQUISH(バンキッシュ)に続く、ジロ第2世代のエアロロードヘルメット。いうまでもなく高速化・エアロ化を遂げる現代ロードレースの、特にスプリントステージには欠かせない武器として、グルパマFDJのエーススプリンターを務めるアルノー・デマールたちが実戦投入し、すでに多くの勝ち星に貢献してきた。

現在開催中のジロ・デ・イタリアで区間3勝を挙げたルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)。その全てでECLIPSE SPHERICALが使われた現在開催中のジロ・デ・イタリアで区間3勝を挙げたルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)。その全てでECLIPSE SPHERICALが使われた photo:CorVos
例えば今年のジロ・デ・イタリアはその筆頭だ。第5ステージで1勝目を挙げたデマールは、その後ポイント賞のマリアチクラミーノに着替えて続く第6ステージと第13ステージを制覇。ECLIPSE SPHERICALはその3ステージ全てで使用された。

テストモデルはMサイズ(※本社から届いた日本未発売カラーのグローバルフィット)テストモデルはMサイズ(※本社から届いた日本未発売カラーのグローバルフィット)
エアロロードヘルメットとしてはベンチレーションが多めエアロロードヘルメットとしてはベンチレーションが多め ダイヤルはAETHERよりもノッチが細かく高級感あるタッチダイヤルはAETHERよりもノッチが細かく高級感あるタッチ


ECLIPSE SPHERICALの現物を手に取ってみると、VANQUISHよりも後頭部の"えら"が落とされた丸っこいデザインゆえに、思ったよりも存在感が小さいことに気づいた。フォルムは軽量ヘルメットのAETHER(イーサー)SPHERICALとかなり似通っていて、AETHERユーザーならば肌馴染みが良いはず。もとより頭が大きい日本人サイクリストにとって、ヘルメットが悪目立ちしないのはスタイリングの面で大切なことだ。

最近のジロといえば、他のヘルメットブランドと比べて、群を抜いてアジアンフィットモデルに注力していることが特筆される。それまでのジロといえば前後に細長い完全な欧米フィットで知られていたが、2019年にアジアンフィットがリリースされて以降は、「日本人は無理しなきゃ被れない」イメージからの完全脱却を果たつつある。

内部シェルはエアチャネルがとても多く、そして深い。このカテゴリーのヘルメットにしてはとても涼しい内部シェルはエアチャネルがとても多く、そして深い。このカテゴリーのヘルメットにしてはとても涼しい
二重の可動シェルが前後左右にズレるSPHERICAL構造。これは通常時二重の可動シェルが前後左右にズレるSPHERICAL構造。これは通常時 こちらは最大までシェルを動かした様子。この動きで衝撃を受け流す仕組みこちらは最大までシェルを動かした様子。この動きで衝撃を受け流す仕組み


ECLIPSE SPHERICAL AFはモデル名に「AF」が付くことからも分かる通り、日本国内ではアジアンフィットモデルだけが発売されている。

筆者は完全な欧米頭ゆえにジロ本国から(かつて発表会に参加したジャーナリスト向けに)送付されたグローバルモデルを使用しているのだが、ECLIPSEのアジアンフィットモデルを他の編集スタッフ陣に被らせてみても「カブトと同じくらい(良い意味で)普通に使える」という評価が並ぶ。アジアンモデル登場時の本国スタッフインタビューの中では「これからよりノウハウを高め、AFモデルに注力していきたい」と聞いていたが、今まさにその思いがリアルな形となっているようだ。

空気が「流れる感じ」はさすがの一言。30km/hを超えたあたりからのベンチレーション性能に驚いた空気が「流れる感じ」はさすがの一言。30km/hを超えたあたりからのベンチレーション性能に驚いた
もし、あなたが、ECLIPSE SPHERICALを手に入れて、ファーストライドに繰り出したなら、走り出してすぐに意外なほどの涼しさに驚くことだろう。外側の通気口はエアロヘルメットらしく少ないものの、内側は2重シェルの「SPHERICAL(スフェリカル)」構造をうまく利用して、エアチャネルがとても多く、そして深く設計されている。つまりは頭とアウターシェルの間のスペースが広く、空気が循環するスペースが広く確保されている。

ジロによればECLIPSE SPHERICALはVANQUISHよりも遥かに冷却性能が高く、なんとミドルロードヘルメットのHELIOS SPHERICALをも上回るのだという。30km/h、40km/hまでスピードを上げると正面の取り入れ口から後部の排出口まで一直線に風が抜けていくのを感じるし、低速のヒルクライム中ではAETHERには及ばないにせよ、今まで試してきたエアロロードヘルメットの中では頭一つ抜けていい。

重量面で言えばグローバルモデルのMサイズで266g、帽体が広がるアジアンモデルのMサイズで277g(共に実測値)と特別軽いわけではない。それでも着用中にあまり重さを感じなかったのは、おそらく重量バランスが優れているからだ。深いライドフォームをとっても前にずり下がらないからストレスも少ない。これはAETHERやHELIOSと同じ、安全性を最優先したことで犠牲となった軽さを上手く打ち消す、近年のジロヘルメットの共通点と言える部分だ。

そもそもの話、「もしも」の安全性を担保するのがヘルメットだから、安全性は高ければ高い方がいい。2重の可動式シェルが前後左右にズレることで落車時の衝撃を受け流すMIPS SPHERICALは、シート状のMIPSに対して30%もの衝撃吸収性向上を叶えているという。安全性を最重視するならば、購入の動機付けにもなるはずだ。

エアロで、安全で、涼しく、そしてミドルグレード同等の価格。レース用ヘルメットの有力候補になるはずエアロで、安全で、涼しく、そしてミドルグレード同等の価格。レース用ヘルメットの有力候補になるはず
高速になる(そして落車リスクも上がる)ロードレースで使うなら、エアロ性能と安全性を両立したヘルメット。エアロロードヘルメットとして高い通気性を誇るECLIPSE SPHERICALならば、それを大前提に快適性という要素も付け加えることができるのだ。そしてさらに、価格もAETHERから1万円ほどこなれている。「リーズナブル」という言葉が、今これほどピッタリくるエアロロードヘルメットは他にそう見当たらない。

ジロ ECLIPSE SPHERICAL AF(Matte Ano Blue、Matte Black/Gloss Black、Matte Black/White/Bright Red 、Matte Charcoal Mica、Matte White/Si)ジロ ECLIPSE SPHERICAL AF(Matte Ano Blue、Matte Black/Gloss Black、Matte Black/White/Bright Red 、Matte Charcoal Mica、Matte White/Si) (c)ダイアテック


ジロ ECLIPSE SPHERICAL AF
サイズ:S、M、L
重量:275g(Mサイズ)
フィットシステム:Roc Loc 5 Air
構造:インモールド・ポリカーボネートシェル / EPSライナー
インナーパッド: Ionic+パッド
ベンチレーション: 14箇所のウィンドトンネル ベンチレーション
安全規格:JCF公認モデル / CPSC安全規格取得
カラー:Matte Ano Blue、Matte Black/Gloss Black、Matte Black/White/Bright Red 、Matte Charcoal Mica、Matte White/Silver
価格:36,300円(税込)



テスター:磯部聡(シクロワイアード編集部)

ジロ ECLIPSE SPHERICALジロ ECLIPSE SPHERICAL ロードの、あるいはグラベルのダウンヒルを如何に速く、そしてスマートにこなすかを熟慮してやまないシクロワイアードのテック担当。

自転車歴=ジロヘルメット着用歴と言っても過言ではなく、ロードはATOMOS、IONOS、AEON、SYNTHE、AETHER MIPS、オフロードはMANIFEST SPHERICALと歴代製品を被り続けてきた。2019年には同社ハイエンドシューズ「IMPERIAL」の海外ローンチも担当。


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