「総合優勝を狙っていたので嬉しくも複雑」とサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)は心の内を素直に表す。2019年も同じ第14ステージでマリアローザを獲得したカラパスなど、サバイバルだったレースを選手の言葉で振り返ります。



ステージ優勝:サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)

水で身体を冷やせたことが勝因の一つだと語ったサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)水で身体を冷やせたことが勝因の一つだと語ったサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) photo:RCS Sport
レース直後のインタビュー

当初の予定では逃げに入るつもりだった。そのために序盤から何度か飛び出したものの、叶わなかったので作戦を変えて真っ向から勝利を狙った。ステージ優勝か総合のためか分からないがボーラ・ハンスグローエが集団を牽引し、僕はその後ろでただベストを尽くすだけだった。

この勝利によってブロックハウス(第9ステージ)の傷が癒えたわけじゃない。ジロには総合優勝を狙い来たわけで、それにジロでは既に5勝を挙げていた。この後のステージでも今日のような脚だったら最高だ。今日できた選手間の大きな差からもわかるように、今日は僕だけでなくみんなにとって大変なステージとなった。この後も今日のような暑さが続くならば、3週目はとても厳しい戦いになるだろうね。

今大会2度目の表彰台に上がったサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)今大会2度目の表彰台に上がったサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) photo:CorVos
表彰式後のインタビュー

暑さにやられながらも、もちろん勝利は嬉しかった。10年も前の出来事のように感じる2日目の個人タイムトライアルに続くステージ優勝だ。祝福しながらも頭にはタフになるだろう最終週のことがある。自分の求めているコンディションにようやくたどり着いた。総合争いから脱落して憤りを感じるが仕方がない。(総合優勝するためには)3週間を通して調子を保つことが必要なのだからね。

これまでの湿気を帯びた暑さとは違い、今日は乾燥していたので身体を水で冷やすことができた。今日で一体何本のボトルを使ったのだろうね。周回コースだったおかげで多くの水を貰うことができ、それが良い走りに繋がったのだろう。

ブロックハウスの後も膝は痛み、それがメンタルにも影響して勝負できる状態じゃなかった。総合争いをするはずが、集団の後ろでステージを消化するだけだった。今日の勝利は僕に新たなモチベーションを与えてくれ、この後のステージでも勝利を狙っていく。

ステージ2位&総合2位:ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)

カラパスとの2位争いを制したジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)カラパスとの2位争いを制したジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:RCS Sport
クレイジーな1日になったね。僕らには早い段階から仕掛ける大胆な作戦があり、総合上位陣の脚を試したかった。ご覧のようにチームは作戦遂行のために素晴らしい走りを見せた。心の底から彼らを尊敬するほど素晴らしい走りだった。その頑張りに勝利で報いることができず残念だが、彼らには本当に感謝している。

レース序盤でカラパスの調子が悪そうだったので、彼がアタックした時は驚いたよ。きっと表情を作っていたのだろう。だがさすがに早すぎると思い、冷静に集団で追いかけ捉えることができた。フィニッシュまで続く最後の下りはクレイジーなほど危険だったが、ステージ2位に加え総合でも2位につけることができた。これも素晴らしいチームのサポートのおかげだ。

ステージ3位&マリアローザ:リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)

表彰式でおどけるリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)表彰式でおどけるリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) photo:RCS Sport
短くもタフなステージだった。レース展開には満足しているし、この結果はチームにとって前向きなものであると同時に、これから僕たちはこのマリアローザを守らなければならない。3年前のジロでも僕は第14ステージにマリアローザを獲得したらしいね。さすがに覚えていなかったが、今日その再現ができて嬉しいよ。

ステージ4位&総合8位:ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン)

全盛期を思わせる登坂力を披露したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)全盛期を思わせる登坂力を披露したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン) photo:RCS Sport
ボーラによるハイペースな牽引により、タフなステージとなった。加えて気温が高く、ナーバスなトリノを巡るレースは補給にさえ緊張感があった。登りと下りの両方でペースが速くとにかくタフなレースだったよ。

この結果には満足しているし、困難を承知でステージ優勝を狙いに行った。エトナ山で総合タイムを失ったものの、完全に総合から脱落したわけではない。だから他の総合上位にいる選手たちも僕を驚異とみなすことはわかっていた。小集団から勝利を狙う難しさを改めて実感するステージとなった。

ステージ6位&総合3位&ヤングライダー賞:ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)

総合で3位につけるジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)総合で3位につけるジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) photo:RCS Sport
先頭集団と一緒にフィニッシュはできなかったものの、それほど離れてもいなかった。結果には満足しているし、気持ちは既に次のステージに向かっているよ。カラパスのアタックについていく脚はなく、追走集団に残ってフィニッシュを目指し力の限りを尽くした。皆も僕と同じくクタクタだろうね。

総合首位と30秒差はまだまだ挽回可能なタイムだ。もちろん1秒であってもカラパスから奪い取ることは容易ではない。だが残り7ステージもあるんだ。毎日何が起こってもおかしくない。彼も僕も、誰にでも遅れてしまう可能性はあるんだ。いまの時点で大きなストレスは感じていないよ。

10日間に渡りマリアローザを着用したフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)

4分25秒遅れたフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)4分25秒遅れたフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) photo:RCS Sport
難しい戦いだった。だが勝利をかけた争いに加わることができて嬉しかった。マリアローザを守るべく力の限りを尽くした。(残り60km地点のボーラ・ハンスグローエによるアタックは)予想外で、レースを厳しい展開に持ち込んだ。予想していたよりも粘ることはでき、僕らはマリアローザ保持に全力を尽くした。マリアローザは失ってしまったのもの、僕は今朝と同じぐらいの笑顔だよ。

ボーラ・ハンスグローエのエンリコ・ガスパロット監督

猛烈なペースアップでメイン集団を絞り込むボーラ・ハンスグローエ猛烈なペースアップでメイン集団を絞り込むボーラ・ハンスグローエ photo:CorVos
明確なゴールを定め臨んだステージだった。その目標とは総合上位陣を丸裸にして彼らから総合タイムを奪うこと。チーム全員が頑張ってくれたが、その中でも特にウィルコ・ケルデルマンが40kmを牽き、その力を存分に発揮してくれた。このようなステージで決して簡単なことではないのにもかかわらず。ジャイ・ヒンドレーは自信に満ちあふれており、それがチーム全体を冷静さを与えてくれた。そしてジャイは7秒差の総合2位につけている。ほぼ完璧なレースと言えるだろう。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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