フランス北西部で合計29ヶ所の未舗装路を駆けるトロ・ブロ・レオンを、同じブルターニュ地方に拠点を置くアルケア・サムシックがレースを制圧。ユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック)が勝利し、チームに2年連続優勝をもたらした。



チーム2連覇を狙うアルケア・サムシックチーム2連覇を狙うアルケア・サムシック photo:Team Arkéa Samsic
春のクラシックからグランツールシーズンへと季節が移り変わった5月16日、北フランスのランニリスを舞台にワンデーレース「トロ・ブロ・レオン(UCI.1.Pro)」が開催された。「ヒップスターたち(次なる、最先端)のパリ〜ルーベ」とも呼ばれるレースの特徴は、石畳ではなく未舗装の農道が組み込まれていること。合計29ヶ所の未舗装はパリ〜ルーベと違い整備されていないため、毎年苔や雑草が生えるコースは選手たちのパンクを誘発。さらにこの日はスタート前から雨が降り続いたため、207.8kmの道のりは過酷を極めた。

厚い雲が空を覆うスタートラインに姿を見せたのは、同じブルターニュ地方を本拠地とし前回覇者コナー・スウィフト(イギリス)を擁するアルケア・サムシックを含む22のチーム。ワールドチームからは地元勝利へ鼻息荒いAG2Rシトロエンやコフィディス、グルパマ・エフデジなどフランスチームを含む6チームが揃った。

北フランスのランニリスを発着点とするトロ・ブロ・レオン北フランスのランニリスを発着点とするトロ・ブロ・レオン photo:Team Arkéa Samsic
プロチーム昇格初年度にもかかわらずシーズン序盤から存在感を見せるウノエックス・プロサイクリング チームのマルティン・ウーリエンスタッド(ノルウェー)を含む、4名が逃げグループを形成したレース序盤。それをトタルエネルジーやロット・スーダルが牽引するメイン集団が追いながら、砂利や雨でぬかるむ未舗装区間に突入していった。

レース後半に入り、2014年のルーベ覇者ニキ・テルプストラ(オランダ、トタルエネルジー)やブライアン・コカール(フランス、コフィディス)など選手たちが、未舗装路を越える度に続々と脱落していく。そして17名まで絞り込まれた先頭集団にはアルケアが4名、ロット・スーダルが3名を残すなか、優勝候補の1人アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)も遅れていった。

砂利の未舗装路を駆ける選手たち砂利の未舗装路を駆ける選手たち photo:St Michel - Auber 93
レース後半から展開の主導権を握ったアルケア・サムシックレース後半から展開の主導権を握ったアルケア・サムシック photo:Team Arkéa Samsic
残り26km地点で前回王者のコナー・スウィフト(イギリス、アルケア・サムシック)が先頭集団を選別するため加速。そこにチームメイトのローラン・ピション(フランス)が追いつき、遅れてルーカ・モッツァート(イタリア、B&Bホテルズ KTM)とその動きをマークしていたユーゴ・オフステテール(フランス)も合流する。単騎のモッツァートに対しアルケアは3名と、チーム2連覇を目指す絶好の展開に持ち込んだ。一方、取り残された追走集団ではロット・スーダルの3名が牽引するものの、40秒まで広がったタイム差を縮めることはできず。勝負は先頭の4名に絞られた。

登坂の度に喘ぐスウィフトが遅れない絶妙なペーシングでベテランのピションが先頭で牽引する。しかし残り7km地点でピションの前輪がパンクすると、3名になった集団を今度はスウィフトが先頭固定でペースを作り、最後はオフステテールとモッツァートの一騎打ちスプリントへと持ち込まれた。

残り150mからスプリントを開始したオフステテールをモッツァートがピッタリと背後につく。しかしここまでチームメイトの背後で脚を溜めていたオフステテールのスプリントに、モッツァートは敵わない。胸のチーム名を指差すオフステテールが、余裕の表情でフィニッシュラインを通過した。

スプリントを制し、チームに2年連続勝利をもたらしたユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック)スプリントを制し、チームに2年連続勝利をもたらしたユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック) photo:Team Arkéa Samsic
「自分の勝利を信じていた。3名になった終盤、勝利が掴めると思っていた。途中で脚をつりながらも、このレースがチームにとっていかに重要であるかを考え、ペダルを踏み続けた。本当に嬉しいよ」と語るオフステテール。コフィディスでプロデビューを果たし、今年イスラエル・プレミアテックから移籍後初勝利を挙げた28歳は満面の笑みで勝利を喜んだ。

また勝利に貢献したスウィフトは「ここでのレースはいつも特別だ。昨年優勝したこのレースがとにかく好きなんだ。アルケア・サムシックにとってこのレースは世界選手権に匹敵する。それほど重要なレースでチーム2連覇することができ、信じられない気持ちだよ」とコメント。アルケア・サムシックは表彰台に2人、トップ10に計4名が入る完勝で北フランスのワンデーレースを締めくくった。

移籍後初勝利を挙げたユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック)移籍後初勝利を挙げたユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック) photo:Team Arkéa Samsic
コナー・スウィフトと勝利を喜ぶユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック)コナー・スウィフトと勝利を喜ぶユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック) photo:Team Arkéa Samsic
トロブロレオン2022
1位 ユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック) 5:07:15
2位 ルーカ・モッツァート(イタリア、B&Bホテルズ KTM)
3位 コナー・スウィフト(イギリス、アルケア・サムシック) 0:09
4位 アルノー・デリー(ベルギー、ロット・スーダル) 0:30
5位 サミュエル・ワトソン(フランス、グルパマ・エフデジ)
6位 マティス・ルーヴェル(フランス、アルケア・サムシック)
7位 ローラン・ピション(フランス、アルケア・サムシック)
8位 モーネ・ファンナイカーク(南アフリカ、サンミッシェル・オーベル93)
9位 スタン・デウルフ(ベルギー、AG2Rシトロエン)
10位 マチュー・ラダニュス(フランス、グルパマ・エフデジ) 0:33