ライバル勢全員に「彼が最強だった」と言わしめる、ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)のフレーシュ・ワロンヌ制覇。現役最後のフレーシュを2位で終えたバルベルデや、「レースが終わってホッとした」と言うアラフィリップたちのコメントでレースを振り返る。



フィニッシュに向けて競り合うディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)フィニッシュに向けて競り合うディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
「激坂でプッシュし続けていたので、脚ではなく腕に力が残ってなかった。最後の最後まで頑張ったけれどトゥーンスの方が強かった。けれど自分のパフォーマンスには満足しているよ」とレースを振り返るのは、2006年の初優勝を皮切りに、2014年から2017年まで4連覇を果たしたかつての「ユイの王」アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だ。

来週月曜日に42歳の誕生日を迎える大ベテランは、持ち前の登坂力でジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)たちを一蹴。キャリア最後のフレーシュで全盛期の輝きを見せつけたものの、ただ一人トゥーンスの登坂力には敵わなかった。

「ディランは素晴らしい成長を遂げ、着実な動きを見せた。彼と渡り合うのは困難だった。おそらく過去の大会と比べても最速の登りかもしれないし、少なくとも僕が過去出た中では確実に速い登坂だった。もっと頑張っていれば勝てたかもしれないと思う時もあるけれど、完全に全力を出し尽くしたんだ。今日は満足できる2位だった」と、バルベルデはフレーシュ初制覇遂げたトゥーンスを讃える。

「カタルーニャで苦しんだまま臨んだこの大会で2位になれたことを嬉しく思うよ。5日後に42歳になる僕にとって、今回が最後のフレーシュだった。トレーニングをうまく積むことができていたのでそれを証明したかったんだ。ただそれと勝負に勝つことは別の話だ。このフレーシュで苦しみ抜いて良い結果を出すことができ、日曜日のリエージュに向けて望みが繋がった気がするよ」と、かつて4度リエージュ〜バストーニュ〜リエージュを制したバルベルデは意気込んでいる。

4度目の制覇を逃したジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)4度目の制覇を逃したジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:A.S.O.
一方、今季クラシックレースで波に乗れないクイックステップ・アルファヴィニルはまたも表彰台を逃す結果に。2018年、2019年、そして2021年大会勝者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)の大会2連覇で起死回生を狙っていたものの、大きなプレッシャーを感じていたという世界王者はトゥーンスとバルベルデ、そしてウラソフの刻むペースについていくことができず、4位止まり。レース後には「レースが終わってホッとした」という言葉も口から出た。

「今日は僕自身のため、そしてウルフパックのために勝ちを狙い、モチベーション高く臨み、ベストを尽くし、ユイ前の位置取りも悪くなかった。単純に脚がなかったんだ。今日は数人の選手が僕よりも強かっただけ。だから全く後悔はしていない」と言う。今週末のリエージュにも出場するが、昨年タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)に続く2位を上回れるかどうかには若干の疑問符がつく。

また、「僕たちはジュリアンを助けるためにできる限りのことをした。細部にわたってタスクを実行したんだ」と言うのはアシストとして尽力したレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。「けれど、今日はトゥーンスが強かった。彼はパリ〜ルーベでも良い走りをしていたし、ここ数週間非常に調子が良い。バッドラックに悩まされることがなければ、彼はリエージュの優勝候補の一人だろう」と話している。

12位に沈んだタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)12位に沈んだタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.
ポガチャルはリエージュで連覇を目指すものの、今回のフレーシュでは最後の加速勝負に出遅れ12位に。「残り200m地点までは先頭にいてとても興奮したけれど、そこから脚が乳酸に支配され、踏み込む脚がなかった」と振り返りつつ、日曜日が楽しみだ、とも。

「2年前のフレーシュでは9位だったけれど、その日曜日のリエージュでは先頭グループに入っていたんだ。今回の結果は関係ない。日曜日が楽しみだ。ワンデーレースでは起こりうることだ。時々ベストを出せない日もあれば、調子良く走れる日もある。だからこの結果を弱さと見ることはないよ」。

text:So Isobe