2022/03/26(土) - 09:16
ユンボ・ヴィスマの圧倒再び。ロンド前哨戦のE3サクソバンク・クラシックでワウト・ファンアールト(ベルギー)がクリストフ・ラポルト(フランス)と共に40km逃げを決め勝利した。
少々の休息を挟み、1週間後に迫ったロンド・ファン・フラーンデレンに向けて再び「北のクラシック」が動き出した。
3月25日金曜日に開催されたのは、「ミニ・ロンド」としても親しまれる「E3サクソバンク・クラシック(UCIワールドツアー)」。フランダース地方を東西に駆け巡る204kmコースには「オウデクワレモント」や「ターイエンベルグ」、「パテルベルグ」といった、名の知れた登りが合計17箇所詰め込まれている。
ロンドと同じ登坂区間を多数越える本大会は、昨年のカスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)を筆頭に、過去23回開催中9回の勝者がそのままロンド制したというまさに前哨戦だ。
第68回大会には昨年覇者アスグリーンや、ベルギー王者ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)、ミラノ〜サンレモ覇者マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)、グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)、ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)といった錚々たるメンバーが集結。前戦ブルッヘ〜デパンヌでチームに貢献した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も急遽連戦を果たしている。
この日はレース開始直後の落車でトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が肘骨折に見舞われリタイア。アーリーブレイクを狙う選手は現れず、アタックと吸収、カウンターを経てダニエル・オス(イタリア、トタルエネルジー)やルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)といった7名が逃げを打ち、およそ1分リードでレース中盤から始まる連続登坂区間へと入っていった。
メイン集団が動いたのは残り80km地点の石畳登坂「ターイエンベルグ(登坂距離700m/平均6.3%/最大16%)」だった。トム・ボーネン(ベルギー)がアタックポイントとして愛した登坂を前にユンボ・ヴィスマが突如ペースアップを開始し、石畳区間に入った直後にファンアールトがアタック。平らなコンクリート側溝で踏み込んだ自チームのエース対してクリストフ・ラポルト(フランス)とティシュ・べノート(ベルギー)が追従し、ライバル勢はアスグリーンとモホリッチ、シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)、ヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)だけがその背中を追うことができた。
ユンボが3名を入れた7名はすぐ先に迫っていた先頭グループを捉え、後続グループを一気に40秒差まで引き離す。しかし時間を置いてイネオス・グレナディアーズが総力戦で追走を開始し、残り62km地点の「エイケンベルグ(登坂距離1250m/平均6.2%/最大10%)」でヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)を筆頭にビニアム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)といった有力勢がジャンプに成功する。直後の「スタシオンベルグ(登坂距離700m/平均3.2%/最大10%)」を経て、先頭グループは有力勢ばかりの16名に膨れ上がった。
しかし、6名から16名となってもなおユンボ・ヴィスマの戦力は圧倒的だった。14個目の石畳激坂「パテルベルグ(登坂距離400m/平均12.9%/最大20.3%)」で再びペースを上げるとすぐにファンアールトが踏みを入れ、ラポルトと共に食い下がるライバル勢全員を最大勾配区間で軽々と引きちぎった。
フィニッシュまで40km以上を残し、ファンアールトとラポルトがライバルからリードを奪う。「パテルベルグを越えると二人が抜け出していることに気づいた。一切躊躇せずにフルスピードで走ったよ」と振り返るファンアールトの背後では、並み居る強豪勢が20秒差で追いかけたものの、タイム差は変わらず、次第にペースを落としてしまう。一時遅れていたべノートが追走集団に復帰し、ローテーションを阻んだことも逃げる二人の大きなアシストとなった。
残り20kmでタイム差は1分まで広がり、残り15kmで1分半、残り10kmで1分45秒に到達。これまで「北」で猛威を誇ったクイックステップのお株を奪う総力戦で、ユンボ・ヴィスマがこれ以上ない形で逃げ切りを決めてみせた。
並走して互いの走りを労いながら、笑顔で言葉を交わしつつファンアールトとラポルトがフィニッシュラインにやってきた。パリ〜ニース第1ステージでプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)と共に1-2-3フィニッシュを決めたうちの2人が肩を組み、同時にフィニッシュ。パリ〜ニースで勝ちを譲ってもらったラポルトは、今度はそのお返しとしてファンアールトを先着させた。
「チームの全員に感謝したい。信じられないようなチーム戦だった。僕とクリストフがパテルベルグまで待つ作戦だったんだ。そこまで働いてくれた他の選手に感謝しなければならない」。大切なロンド前哨戦を制したファンアールトはそうチームに感謝する。「表彰台ではたくさんのサポーターが集まってくれて鳥肌が立ったよ。これまで(無観客だったので)久しぶりの感情だった。再び体験できたことはとても貴重な経験だった」と加えている。
また、ラポルトは「パテルベルグではワウトの後ろでもう限界だった。でもワウトはスピードを緩めて僕を待ってくれた。フィニッシュまで距離があったので2人で逃げることにしたんだ」と振り返る。「彼はパリ〜ニースで僕に勝利を与えてくれた。でも今日最強だった彼こそが勝者にふさわしい。最後は楽しもうとしたけど疲れきっていて無理だった。テレビで見返すのが楽しみだ」と加えている。
この日、ユンボを前に崩れたクイックステップはアスグリーンを10位に送り込むのが精一杯。大きく勢力図が変化したクラシック戦線は、この日曜日のヘント〜ウェヴェルヘムと、来週水曜日のドワーズドール・フラーンデレンを経て、「クラシックの王様」ロンド・ファン・フラーンデレンを迎えることとなる。
少々の休息を挟み、1週間後に迫ったロンド・ファン・フラーンデレンに向けて再び「北のクラシック」が動き出した。
3月25日金曜日に開催されたのは、「ミニ・ロンド」としても親しまれる「E3サクソバンク・クラシック(UCIワールドツアー)」。フランダース地方を東西に駆け巡る204kmコースには「オウデクワレモント」や「ターイエンベルグ」、「パテルベルグ」といった、名の知れた登りが合計17箇所詰め込まれている。
ロンドと同じ登坂区間を多数越える本大会は、昨年のカスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)を筆頭に、過去23回開催中9回の勝者がそのままロンド制したというまさに前哨戦だ。
第68回大会には昨年覇者アスグリーンや、ベルギー王者ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)、ミラノ〜サンレモ覇者マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)、グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)、ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)といった錚々たるメンバーが集結。前戦ブルッヘ〜デパンヌでチームに貢献した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も急遽連戦を果たしている。
この日はレース開始直後の落車でトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が肘骨折に見舞われリタイア。アーリーブレイクを狙う選手は現れず、アタックと吸収、カウンターを経てダニエル・オス(イタリア、トタルエネルジー)やルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)といった7名が逃げを打ち、およそ1分リードでレース中盤から始まる連続登坂区間へと入っていった。
メイン集団が動いたのは残り80km地点の石畳登坂「ターイエンベルグ(登坂距離700m/平均6.3%/最大16%)」だった。トム・ボーネン(ベルギー)がアタックポイントとして愛した登坂を前にユンボ・ヴィスマが突如ペースアップを開始し、石畳区間に入った直後にファンアールトがアタック。平らなコンクリート側溝で踏み込んだ自チームのエース対してクリストフ・ラポルト(フランス)とティシュ・べノート(ベルギー)が追従し、ライバル勢はアスグリーンとモホリッチ、シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)、ヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)だけがその背中を追うことができた。
ユンボが3名を入れた7名はすぐ先に迫っていた先頭グループを捉え、後続グループを一気に40秒差まで引き離す。しかし時間を置いてイネオス・グレナディアーズが総力戦で追走を開始し、残り62km地点の「エイケンベルグ(登坂距離1250m/平均6.2%/最大10%)」でヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)を筆頭にビニアム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)といった有力勢がジャンプに成功する。直後の「スタシオンベルグ(登坂距離700m/平均3.2%/最大10%)」を経て、先頭グループは有力勢ばかりの16名に膨れ上がった。
しかし、6名から16名となってもなおユンボ・ヴィスマの戦力は圧倒的だった。14個目の石畳激坂「パテルベルグ(登坂距離400m/平均12.9%/最大20.3%)」で再びペースを上げるとすぐにファンアールトが踏みを入れ、ラポルトと共に食い下がるライバル勢全員を最大勾配区間で軽々と引きちぎった。
フィニッシュまで40km以上を残し、ファンアールトとラポルトがライバルからリードを奪う。「パテルベルグを越えると二人が抜け出していることに気づいた。一切躊躇せずにフルスピードで走ったよ」と振り返るファンアールトの背後では、並み居る強豪勢が20秒差で追いかけたものの、タイム差は変わらず、次第にペースを落としてしまう。一時遅れていたべノートが追走集団に復帰し、ローテーションを阻んだことも逃げる二人の大きなアシストとなった。
残り20kmでタイム差は1分まで広がり、残り15kmで1分半、残り10kmで1分45秒に到達。これまで「北」で猛威を誇ったクイックステップのお株を奪う総力戦で、ユンボ・ヴィスマがこれ以上ない形で逃げ切りを決めてみせた。
並走して互いの走りを労いながら、笑顔で言葉を交わしつつファンアールトとラポルトがフィニッシュラインにやってきた。パリ〜ニース第1ステージでプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)と共に1-2-3フィニッシュを決めたうちの2人が肩を組み、同時にフィニッシュ。パリ〜ニースで勝ちを譲ってもらったラポルトは、今度はそのお返しとしてファンアールトを先着させた。
「チームの全員に感謝したい。信じられないようなチーム戦だった。僕とクリストフがパテルベルグまで待つ作戦だったんだ。そこまで働いてくれた他の選手に感謝しなければならない」。大切なロンド前哨戦を制したファンアールトはそうチームに感謝する。「表彰台ではたくさんのサポーターが集まってくれて鳥肌が立ったよ。これまで(無観客だったので)久しぶりの感情だった。再び体験できたことはとても貴重な経験だった」と加えている。
また、ラポルトは「パテルベルグではワウトの後ろでもう限界だった。でもワウトはスピードを緩めて僕を待ってくれた。フィニッシュまで距離があったので2人で逃げることにしたんだ」と振り返る。「彼はパリ〜ニースで僕に勝利を与えてくれた。でも今日最強だった彼こそが勝者にふさわしい。最後は楽しもうとしたけど疲れきっていて無理だった。テレビで見返すのが楽しみだ」と加えている。
この日、ユンボを前に崩れたクイックステップはアスグリーンを10位に送り込むのが精一杯。大きく勢力図が変化したクラシック戦線は、この日曜日のヘント〜ウェヴェルヘムと、来週水曜日のドワーズドール・フラーンデレンを経て、「クラシックの王様」ロンド・ファン・フラーンデレンを迎えることとなる。
E3サクソバンク・クラシック2022結果
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 4:38:04 |
2位 | クリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | +1:35 |
4位 | マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:36 |
5位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
6位 | ヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
7位 | ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) | |
8位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | ティシュ・べノート(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
10位 | カスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル) |
text:So Isobe
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