1876年に初開催されたワンデーレース、ミラノ〜トリノ(1.Pro)。ミラノ〜サンレモを見据えるスプリンターによる戦いを、完璧なリードアウトを得たマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)が制した。



ミラノ近郊のマジェンタを出発する第103回ミラノ〜トリノミラノ近郊のマジェンタを出発する第103回ミラノ〜トリノ photo:CorVos
腰椎骨折から復帰レースを迎えたレミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)腰椎骨折から復帰レースを迎えたレミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVosミラノ〜トリノ2022 コースプロフィールミラノ〜トリノ2022 コースプロフィール (c)RCS Sport

ミラノ〜サンレモを3日後に控える3月17日、ミラノ近郊のマジェンタからトリノのリヴォリを目指す第103回ミラノ〜トリノ(1.Pro)が開催された。1876年初開催のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュよりも古い歴史を持ち、例年ジロ・デル・ピエモンテとイル・ロンバルディアとともに『トリッティコ・ディ・アウトゥンノ(秋の3連戦)』を構成してきたが、昨年から2007年大会までと同じ春開催に戻ってきた。

昨年はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が勝利したように「スペルガ峠(距離4.9km/平均勾配9.1%/最大勾配14%)」を駆け上がってフィニッシュしていたが、今年はミラノ〜サンレモを見据え平坦基調のスプリンターレースに様変わり。199kmレースの最後は、大方の予想通りスプリンターたちによる争いで決着した。

スタートラインに並んだのは、ミラノ〜サンレモの予行練習の場として選んだ14つのワールドチームと6つのプロチーム。カヴェンディッシュを筆頭に、ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)やアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)、ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)などといった豪華スプリンター陣が集結した。

逃げるディディエル・メルチャン(コロンビア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)ら3名逃げるディディエル・メルチャン(コロンビア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)ら3名 photo:CorVos
補給地点で落車したゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)だが大きな怪我はなかったという補給地点で落車したゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)だが大きな怪我はなかったという photo:CorVos
雲が空を覆うマジェンタの街で逃げグループを形成したのは、これがイタリアのプロレースデビューとなるマルタン・マルチェルージ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)とダニエル・ビエガス(ポルトガル、エオーロ・コメタ)、ディディエル・メルチャン(コロンビア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)という3名。全員が25歳以下という若い逃げグループは、メイン集団から最大4分半のリードをつけながら西のトリノを目指し巡航した。

補給地点でゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が落車するトラブルがありながらも、エーススプリンターを擁する7チームほどが牽引したメイン集団は、思惑に違わず残り20km地点で逃げを吸収した。するとひと塊となったプロトンから、メンバーにスプリンターのいないEFエデュケーション・イージーポストのアルベルト・ベッティオル(イタリア)とベン・ヒーリー(アイルランド)が飛び出した。

残り16kmでベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)が飛び出す残り16kmでベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)が飛び出す photo:CorVos
これを集団先頭で追ったのは、昨年12月にトレーニング中の落車で腰椎骨折を負い、復帰後初レースとなったレミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)。スピードの上がったメイン集団がヒーリーを残り4kmで飲み込むと、トタルエネルジーを先頭にフラムルージュ(残り1km)を通過。そのままスプリンターたちによる高速バドルなだれ込んだ。

ナセル・ブアニ(フランス)を擁するアルケアトレインが残り400mから始まる最終ストレートで先頭に立つ。しかし、発射のタイミングが早すぎると悟ったブアニはすぐさまリードアウトの名手ミケル・モルコフ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)の背後へ。それを振り払うように残り150mからカヴェンディッシュが発進した。

先行するカヴェンディッシュの圧倒的なスピードに、クリストフやブアニも届かない。カヴェンディッシュが誰も寄せ付けることなくプロ通算160勝まであと1勝に迫る159勝目を挙げた。

スプリントを繰り広げるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)とアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)	スプリントを繰り広げるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)とアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:CorVos
強力なリードアウトを得たマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)が勝利強力なリードアウトを得たマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)が勝利 photo:CorVos
「初出場で初勝利だ。本当に嬉しいよ。モルコフと共にトップレベルに戻ってくることができた。チャンスが1度しかないワンデーレースにふさわしく、チームが僕を勝利の方向へと導いてくれた。ここ数年ヤコブセンに勝利を届けた強いチームが、今日は僕のために仕事をしくれたんだ」。ラスト16秒を平均スピード62.5km/h、最高時速65km/h(最高出力1200W)で駆け抜けたカヴェンディッシュはそう勝利を喜んだ。

体調不良で力を発揮できなかったティレーノ~アドリアティコを乗り越え、今季3勝目を掴み復調をアピールしたカヴェンディッシュ。しかしミラノ〜サンレモにはファビオ・ヤコブセン(オランダ)が出場を予定しており、また同じくメンバー入りしていたジュリアン・アラフィリップ(フランス)が体調不良で欠場する旨を発表。そのため俄然出場に注目が集まるカヴェンディッシュは「僕に誰もミラノ〜サンレモの話をしないんだ。僕自身も(出場するかは)わからない。過去に勝っているレースだから走りたいのは山々なんだけど…」とインタビューに答えている。

表彰台:2位ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)、1位マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)、3位アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)表彰台:2位ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)、1位マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)、3位アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:CorVos
ミラノ〜トリノ2022結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル) 4:31:22
2位 ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
4位 マックス・カンター(ドイツ、モビスター)
5位 ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)
6位 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、AG2Rシトロエン)
7位 ミケル・モルコフ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)
8位 ベン・スウィフト(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
9位 シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)
10位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos