砂埃舞う「白い道」ことストラーデビアンケが3月5日に開催される。前回勝者マチュー・ファンデルプールが不在の中、ゼッケン1をつけたジュリアン・アラフィリップにポガチャルやバルベルデが挑む。同日開催の女子レースも合わせてプレビューします。



砂埃を巻き上げながら南部に広がる未舗装路を走る砂埃を巻き上げながら南部に広がる未舗装路を走る photo:LaPresse / RCS Sport
2007年に初開催され、今年で第16回目とまだ歴史が浅いにもかかわらず、いまやモニュメント(5大クラシック)に並ぶ人気と格式を備えるストラーデビアンケ(1.UWT)。レース名がイタリア語で「白い道」と意味する通り、砂が舞い小石が転がる未舗装路区間がコースの1/3に及ぶクラシックレースだ。

コースはイタリア中部トスカーナ州のシエナを発着点に、周辺の丘陵地帯を反時計回りに巡る184km。合計11ヶ所設定された未舗装路区間(セクター)は全長63kmに及び、パンクや落車のリスクはもちろん、急勾配区間もあるため選手にはトラクションを掛けながら登るテクニックも要求される。

 ストラーデビアンケ2022 コースプロフィール ストラーデビアンケ2022 コースプロフィール photo: RCS Sport
 ストラーデビアンケ2022 コースマップ ストラーデビアンケ2022 コースマップ photo: RCS Sportスタートして僅か11kmから始まる未舗装路区間の中で注目すべきは、例年レースが動き始める残り54km地点のセクター8「モンテ・サンテ・マリエ(全長11.5km)」。また昨年アラフィリップが仕掛けたセクター9「モンテ・アペルティ(全長0.8km)」や、ファンデルプールが集団を崩壊させるアタックを見せたセクター11「レ・トルフェ(全長1.1km)」も見逃せないポイントととなる。

そしてグラベル区間を終えた選手たちは最後、シエナ旧市街に続く急勾配(最大16%)の石畳坂を駆け上がり、『世界一美しい』と呼ばれるカンポ広場にフィニッシュする。昨年表彰台に上がったクラシックレーサーのファンデルプール、パンチャーのアラフィリップ、そして3位がクライマーのベルナルが並ぶことからも、様々な脚質にチャンスがあるレースになっている。

昨年初優勝を飾ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)昨年初優勝を飾ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:LaPresse / RCS Sport
優勝候補を挙げる前に、今大会への出場を見送った選手たちをチェックしておこう。まずは昨年初優勝を飾ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)は怪我からの回復が間に合わず不出場。調整を続けるスペインでこの後も合宿を行い、4月のロンド・ファン・フラーンデレン(1.UWT)での実戦復帰を予定している。また2020年大会を制したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)は3月6日開幕のパリ〜ニース(2.UWT)を、ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)は7日開幕のティレーノ〜アドリアティコ(2.UWT)をそれぞれ選んでいる。

未舗装路を得意とするトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)はウイルス性の腹痛のため直前で出場を取り止め、トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)は調整不足、ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)は風邪を理由に出場を回避した。また直前試走を行っていた中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト)も、高熱と頭痛により出走をキャンセルしている(本人曰くコロナは陰性)。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos昨年はパンクし勝負から脱落したクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)昨年はパンクし勝負から脱落したクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード) photo:CorVos
今年もアルカンシエルを纏い出場するジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)今年もアルカンシエルを纏い出場するジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
今大会でファンデルプールの代わりにゼッケン1をつけて走るのは、2019年大会を制し、昨年は2位と辛酸を嘗めた世界王者アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)。今年はクイックステップのブラマティ監督が「良い布陣を揃えた」と言うように、ダークホースの1人に挙げられるカスパー・アスグリーン(デンマーク)や伸び盛りの22歳マウロ・シュミット(スイス)など強力なチームメイトが脇を固める。

その対抗馬として挙げられるのは30位→13位→7位と年々順位を上げているタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)。UAEツアーで総合優勝を挙げた勢いそのままに勝利を狙い、「もちろん勝ちたいが、チームには好調なコーヴィや経験豊富なウリッシと戦力は揃っている」という言葉通り、チームは強力なメンバーを揃えてきた。

2018年覇者のティシュ・ベノート (ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)はセップ・クス(アメリカ)と共に出場し、今季早くも2勝を上げながら直前に風邪を引いたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)は「悪いタイミングで体調を崩してしまったものの、復調して脚に力が戻ってきている」と自信を覗かせた。

他にもオールラウンダーのヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、重量級ライダーのジャンニ・モスコン(イタリア、アスタナカザフスタン)やグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)なども有力候補の一角。またマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)や20歳のクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)の走りにも注目したい。

2021年大会を制したシャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス)2021年大会を制したシャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス) (c)CorVos
同日開催する女子レースは2022年の年UCIウィメンズ・ワールドツアーの開幕戦にあたる。コース距離こそ138kmと男子レースよりも50kmほど短いものの、激しい起伏のある未舗装路区間は共通しており、レースカレンダー屈指の難易度を誇る。

未舗装路区間は合計8セクターで、残り24kmから始まる「セクター6 モンテ・アペルティ(全長0.8km)」、「セクター7 コッレ・ピンツート(全長2.4km)」、「セクター8 レ・トルフェ(全長1.1km)」は男子と同じレイアウト。最後はサンタカテリーナ通りの石畳坂を登り、昨年シャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス)がエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)を残り500mで引き離したカンポ広場でフィニッシュする。

優勝候補に挙げられているのは、今季オンループ・ヘットニュースブラッドを制するなど衰えを知らない39歳のアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)と、前回王者ブラーク。その2人に現シクロクロス世界王者でこれがロード開幕戦となるマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)や、昨年2位のロンゴボルギーニがどう勝負に絡んでくるか。現地予報によると0℃まで気温が下がる午前9時に、女子レースのスタートは切られる。

text:Sotaro.Arakawa