アルプスやピレネーの山々で総合争いと並行して行なわれるのがクライマーによるマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を懸けた闘いだ。赤い水玉模様が特徴のジャージは最強クライマーの証。今年も世界各国から山岳スペシャリストたちが集結する。

フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク) photo:Cor Vosツール・ド・フランス山岳最強の証、それがマイヨブラン・ア・ポワ・ルージュ(略してマイヨアポワ)。他の3賞ジャージが単色であるのに対して、このマイヨアポワはホワイトジャージに赤玉を配した奇抜なデザイン。プロトンの中でも判別は容易だ。

山岳賞争いの舞台はもちろん山岳。しかし総合争いも山岳で繰り広げられるため、総合狙いの選手がランキング上位に自然と絡んでくる。地道にコツコツとポイントを積み重ねても、総合狙いの選手が超級の頂上ゴールを一つ穫っただけで順位が逆転してしまうこともある。

ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) photo:Cor Vos昨年は総合争いで遅れたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)が山岳賞狙いにスイッチ。持ち前の力を山岳賞に注ぎ込んだペッリツォッティは、2位以下を大きく引き離す圧倒的なポイント差で山岳賞トップに輝いた。今年も総合で遅れた選手たちがマイヨアポワ獲得を目指す可能性は充分にある。

オールラウンダーの中でも、山岳に強い印象が強いのがロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)。直前のツール・ド・スイスでは難関山岳で優勝し、存在感を見せつけた。昨年のツールは序盤のステージで落車し、山岳で力を発揮出来ないままレースを去っている。

ジロ・デ・イタリアで山岳賞に輝いたマシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)ジロ・デ・イタリアで山岳賞に輝いたマシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット) photo:Riccardo Scanferlaチームメイトのフアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)は生粋の山岳スペシャリストであり、昨年はモンヴァントゥー頂上ゴールで優勝している。2人の第一目的は総合狙いメンショフ(ロシア)をアシストすることだが、チャンスがあればマイヨアポワを狙ってくるだろう。

2004年のジロ・デ・イタリア総合優勝以降、グランツールで上位に絡めていないダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)は、割り切って山岳賞を狙う可能性もある。

ピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)ピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano伝統的にクライマー大国として知られるスペインからは、今年もホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やダニエル・モレーノ(スペイン、オメガファーマ・ロット)を筆頭に多くのクライマーが出場する。アシストの責務から解放されれば、果敢に山岳で動いてくるだろう。モレーノのチームメイトには、今年のジロ・デ・イタリアで山岳賞に輝いたマシュー・ロイド(オーストラリア)もいる。

エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)は生粋のクライマーとは言えないが、コツコツとポイントを重ねる走りで昨年山岳賞2位に入った。今年はピレネー山脈に主戦場が置かれているだけに、チーム全体のモチヴェーションは高いはず。2007年に総合敢闘賞に輝いたアメツ・チュルカ(スペイン)は今年もアタックを連発するはずだ。

近年総合上位から遠ざかっている地元フランス勢だが、徐々にレミ・ディグレゴリオ(フランス、フランセーズデジュー)やピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)を始め、若手クライマーが育って来ている。新城幸也のチームメイトであるロランは、2008年のドーフィネ・リベレで山岳賞を獲得し、今年の大会で総合8位に入った有力株だ。


2009年ツールの山岳賞ランキング(チーム名は当時の所属チーム)
1位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)210pts
2位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)135pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)126pts
4位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)111pts
5位 ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)99pts
6位 クリストフ・ケルヌ(フランス、コフィディス)89pts
7位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)88pts
8位 ミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)86pts
9位 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)86pts
10位 サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)84pts

歴代のマイヨアポワ受賞者
2009年 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア)
2008年 ベルンハート・コール(オーストリア)ドーピング違反により失格
2007年 マウリシオ・ソレール(コロンビア)
2006年 ミカエル・ラスムッセン(デンマーク)
2005年 ミカエル・ラスムッセン(デンマーク)
2004年 リシャール・ヴィランク(フランス)
2003年 リシャール・ヴィランク(フランス)
2002年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2001年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2000年 サンティアゴ・ボテーロ(コロンビア)
1999年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1998年 クリストフ・リネロ(フランス)
1997年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1996年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1995年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1994年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1993年 トニー・ロミンガー(スイス)
1992年 クラウディオ・キャプッチ(イタリア)
1991年 クラウディオ・キャプッチ(イタリア)
1990年 ティエリー・クラヴェロラ(フランス)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos