ロードレース日本一を決める全日本選手権 エリート男子。5時間オーバーの激闘の末、個人の力に加えてチーム力が問われるこのレースを制したのは自身初の優勝となった宮澤崇史(チームNIPPO)。アシストに徹した佐野淳也の力と、宮澤必勝態勢で臨んだチームの結束力の強さが結晶した。

宮澤崇史と野寺秀徳が、前回覇者の西谷泰治の前で握手宮澤崇史と野寺秀徳が、前回覇者の西谷泰治の前で握手 (c)Makoto.AYANO

膠着状態の集団内で走る新城幸也膠着状態の集団内で走る新城幸也 (c)Makoto.AYANO3年連続の広島開催となった全日本選手権ロード。会場の広島県立中央森林公園サイクリングロードは、アップダウンのある12.3kmの周回コース。エリート男子は12.3kmの周回コースを16周、196.8kmの長丁場の闘いだ。

U17、ジュニア、U23が行われた土曜は一日中の雨。この日も降水確率は高く、悪天候を覚悟させたが午前中で雨が止み、薄雲りのなかレースを迎えた。

欧州からジロ・デ・イタリアでの活躍が記憶に新しい新城幸也(Bboxブイグテレコム)と、新城と共にルート・ドゥ・スッドに出場した土井雪広(スキル・シ集団内で走る土井雪広(スキル・シマノ)集団内で走る土井雪広(スキル・シマノ) (c)Makoto.AYANOマノ)ら欧州組が帰国し参戦。ディフェンディングチャンピオンの西谷泰治(愛三工業レーシング)、そしてこのレースが最後という野寺秀徳(シマノレーシング)、全日本選手権タイムトライアルで強力な力を見せた福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)などが参戦。惜しいのは7月4日開催のツアー・オブ・オーストリアに向けて準備を整えている別府史之(レディアオシャック)の欠場だ。


11時15分、曇り空のもと選手たちがスタート。沿道には例年以上の数のファンが観戦に詰めかけた。
選手たちの大集団は一つのまま1周回を終了。2周目に19人のアタックが決まり、3周から4周目にかけてひとりが脱落、2人が合流して合計20人の先頭集団が形成される。メンバーは以下のとおり。

2周目、集団が分裂2周目、集団が分裂 photo:Hideaki.TAKAGI柿沼章(宇都宮ブリッツェン)
中村誠(宇都宮ブリッツェン)
長沼隆行(宇都宮ブリッツェン)
佐野淳哉(チームNIPPO)
笠原恭輔(中央大学)
岩島啓大(なるしまフレンド)
菊池誠晃(NIPPOコルナゴ)
丸山厚(MASSA FOCUS)
中島康晴(チームNIPPO)
竹之内悠(TEAM EURASIA MUSEEUW BIKES)
向川尚樹(マトリックス・パワータグ)
永良大誠(マトリックス・パワータグ)
清水良行(チームブリヂストン・アンカー)
伊藤翔吾(MASSA FOCUS)
飯島誠(チームブリヂストン・アンカー)
狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)
山本雅道(チームブリヂストン・アンカー)
野寺秀徳(シマノレーシング)
福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)
別府匠(愛三工業レーシングチーム)

メイン集団をコントロールした愛三工業レーシングメイン集団をコントロールした愛三工業レーシング (c)Makoto.AYANOメイン集団をコントロールするおもなチームは愛三工業レーシングチームとシマノレーシングだ。なかでもディフェンディングチャンピオン・西谷擁する愛三工業勢がメイン集団前方に集結し、強力に牽引して、逃げグループのリードを抑え込む。

4周目、勝負どころの3連トンネルの登りから展望台への登りにかけてメイン集団が強力にペースを上げ、逃げグループを吸収する。そのスピードアップによりメイン集団はバラバラに崩壊。大きく遅れる選手が続出し、一気に60人までに人数を減らした。
上りでは新城幸也がアタックするが、ユキヤに対する有力選手たちのチェックは厳しく、逃がしてはもらえない。

協力して逃げ続ける越海誠一(日本大学)と阿部嵩之(シマノレーシング)協力して逃げ続ける越海誠一(日本大学)と阿部嵩之(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji5周目に入ったメインストレートまでに集団はまとまるが、真鍋和幸(マトリックス・パワータグ)が単独で飛び出したまま5周目に入る。ここからは細かなカウンターアタックがさらにかかり、さらに人数を50人に絞り込む。

展望台の上りで阿部嵩之(シマノレーシング)と越海誠一(日本大学)がメイン集団から飛び出すと、メイン集団との差はみるみる広がる。集団の動きはここで落ち着きを見せ、7周が終わる時点で3分に。2人は完全に泳がされている状況になる。メイン集団はレースの様子見状態に入った。レースは走行距離100kmを越え、折り返しに入る。


阿部と越海の2人が疲れを見せ、集団との差が1分にまで詰まると、集団からアタックを仕掛けて飛び出したのは白石真悟(シマノドリンキング)。2人に合流すると、越海が脱落。そして3連トンネルの登りで阿部が白石のハイペースについていけなくなる。
白石真悟(シマノドリンキング)が阿部嵩之(シマノレーシング)をリードする白石真悟(シマノドリンキング)が阿部嵩之(シマノレーシング)をリードする (c)Makoto.AYANO白石真悟(シマノドリンキング)の引きに阿部嵩之(シマノレーシング)が遅れる白石真悟(シマノドリンキング)の引きに阿部嵩之(シマノレーシング)が遅れる (c)Makoto.AYANO

10周目を終了した時点で白石は独走に入る。元MTBのエリートレーサーで現在はシマノの社員である白石は、フルタイムで仕事をこなすホビーレーサーだ。だが、シマノレーシングとは別の動き。しかし仕上がりは上々だ。

メイン集団から村上純平(シマノレーシング)、飯島誠(チームブリヂストン・アンカー)、松村光浩(愛三工業レーシングチーム)、清水良行(チームブリヂストン・アンカー)、柿沼章(宇都宮ブリッツェン)、鈴木譲(シマノレーシング)、佐野淳哉(チームNIPPO)ら7人が飛び出して追走グループを形成。先頭の白石を追う。いずれもエース級の選手を後方に残し、最終局面を有利に展開するためのアシストのアタックだ。7人は白石と合流して8人に。

村上純平、飯島誠、松村光浩、清水良行、柿沼章、鈴木譲、佐野淳哉ら7人の追走集団村上純平、飯島誠、松村光浩、清水良行、柿沼章、鈴木譲、佐野淳哉ら7人の追走集団 (c)Makoto.AYANO

テクニカルな下りでこのグループは割れ、飯島と佐野が先行する。そこに後方から平塚吉光(シマノレーシング)と西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)が合流して、4名の先頭集団に。ここまでメイン集団をコントロールしてきた愛三は、西谷に勝負を託した。

時折険しい表情を見せる新城幸也時折険しい表情を見せる新城幸也 (c)Makoto.AYANO

西谷泰治、飯島誠、佐野淳也、平塚吉光ら4名の先頭集団西谷泰治、飯島誠、佐野淳也、平塚吉光ら4名の先頭集団 (c)Makoto.AYANO


メイン集団からアタックした福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)に新城幸也(Bboxブイグテレコム)が反応メイン集団からアタックした福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)に新城幸也(Bboxブイグテレコム)が反応 photo:Kei Tsuji4人の逃げは残り3周に入り2分30秒となり、逃げ切りの可能性が出てきた。後方で追走を続けるメイングループではエース級の選手たちが様子を探り合う状態が続く。そしてホームストレートで口火を切ったのは、福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)。

中島康晴(チームNIPPO)が続くとすかさず新城幸也(Bboxブイグテレコム)が行き、宮澤崇史(チームNIPPO)も追いつき、4名で追走グループを形成。元エキップアサダ出身の4人がまず勝負に向けて動き出す。

しかし福島が脱落すると、これに野寺秀徳(シマノレーシング)、土井雪広(スキル・シマノ)、狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)、増田成幸(チームNIPPO)が代わって合流。高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)、遅れて清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)や盛一大(愛三工業レーシングチーム)も追いつき、追走グループが13人に。実質的にここまでが勝利を狙える選手たちとして絞られた。

最終周回へ。平塚吉光(シマノレーシング)が献身的な走りで先頭を引く最終周回へ。平塚吉光(シマノレーシング)が献身的な走りで先頭を引く (c)Makoto.AYANO残り1周に入る手前で先頭グループは再構築され、佐野、宮澤、増田、野寺、鈴木、西谷、清水、飯島、平塚吉光(シマノレーシング)の9人。 人数を揃えるNIPPOとシマノ(ともに3人づつ)が有利。新城、土井、盛、中島、高岡、中村誠(宇都宮ブリッツェン)が少し離れて最終周回に入る。

残り6km、先頭集団からシマノが攻撃に出ると、NIPPOが応戦。さらにここまで中盤から逃げていた佐野がペースアップを図ると、野寺、鈴木、宮澤が応じることができたが、清水と西谷は遅れてしまう。



先頭逃げグループで強力にペースを上げる佐野淳哉(チームNIPPO)先頭逃げグループで強力にペースを上げる佐野淳哉(チームNIPPO) (c)Makoto.AYANO最後の登りポイント、展望台への登りでも佐野が強烈にペースを上げ続ける。これに応じた野寺は、レース後にこう振り返っている
「ラスト数キロは(佐野)淳哉のペースが速くて速くて。両足とも攣っていたので、もう全力で食らいつきました」。

佐野と野寺の後方では、スプリント力に秀でる宮澤と鈴木が最終ゴールスプリントに備えて温存する。昨年の全日本で鈴木は意表をつく早掛けアタックを見せたが失敗。今年は最後のスプリントまで粘る作戦で、佐野への対応を野寺に任せ、宮澤との睨み合い状態に入る。


ゴール前、野寺秀徳(シマノレーシング)が先行ゴール前、野寺秀徳(シマノレーシング)が先行 photo:Hideaki.TAKAGI宮澤はレース後こう振り返る。「真理さんとはスプリント勝負で行くことを話し合ったが、かつて下りでアタックされて逃げ切られたことがあるので、警戒を怠らなかった」。

牽制に入った4人にホームストレートへの登りで清水が追いつくが、ゴール勝負は早めに始まった。鈴木のアシストのために早めにスプリントをかけた野寺。残り150mを残して差が開くが、宮澤を従えて佐野が追走スプリント。そして宮澤が解き放たれた。勝負は鈴木と宮澤の競り合いになり、爆発力を見せた宮澤が残り30mで鈴木を突き放した。

宮澤崇史(TEAM NIPPO)が優勝宮澤崇史(TEAM NIPPO)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI


勝利を確信すると両手を大きく広げ、雄叫びを上げる宮澤。その後ろで鈴木と野寺が悔しさに表情を歪める。さらにその後ろでは、宮澤の勝利を祝福して佐野が大きく両手を挙げる。
佐野はこの日、驚異的な強さで逃げ続け、捕まってからも宮澤に対抗しようとするライバルたちを大いに苦しめた。今日の宮澤の勝利の鍵を握ったことは誰の目にも明らかだった。

宮澤にとってはこれが全日本ロード初優勝。昨年は西谷にスプリントで破れて2位に甘んじたが、初めての日本チャンピオンというタイトルを獲得した。

母親と抱き合って優勝を喜ぶ宮澤崇史母親と抱き合って優勝を喜ぶ宮澤崇史 (c)Makoto.AYANO
チームメイトと抱き合って優勝を喜ぶ宮澤崇史チームメイトと抱き合って優勝を喜ぶ宮澤崇史 (c)Makoto.AYANO宮澤崇史の優勝を祝福する福島晋一宮澤崇史の優勝を祝福する福島晋一 (c)Makoto.AYANO


野寺秀徳、鈴木真理に祝福の抱っこをされる宮澤崇史野寺秀徳、鈴木真理に祝福の抱っこをされる宮澤崇史 (c)Makoto.AYANOゴールするとチームメイトと抱き合い、母と抱き合い、妻と抱き合い、感激の涙にむせんだ宮澤。チームの組織的な動きが完璧に機能し、最後まで自らの力を使わずに走ることができ、フレッシュな状態で最終局面を迎えることができたのは確かだろう。

宮澤は言う「チームメイト皆が勝利のチャンスすべてを僕にかけてくれ、完璧にレースを闘った。最後まで一度も先頭を引くことなくゴールに臨めた。勝ったのは僕。しかしこれはチームの勝利。みんなに感謝している。日本一のタイトルとか、とてもそんな言葉で片付けられない。それ以上にすごいことだ。
日本チャンピオンは確かに嬉しく、叶えたい夢のひとつだった。でも、僕らはもっと他に目指すものがある。それは本場であるヨーロッパで活躍すること。だから、この勝利だけで満足できるものじゃない。
そして今日、僕らのチームだけじゃなく、選手みんなを応援してくれた、声援を送ってくれたすべての観客の皆さんにお礼を言いたい。僕たちはこれからも熱い戦いを見せます」。

表彰とシャンパンファイト表彰とシャンパンファイト photo:Hideaki.TAKAGI最後は勝負を鈴木真理に託しながら、自らも3位に入った野寺は言う。
「最後は真理さんで勝負する予定でした。追い風が吹いていたこともあり、最終ストレートで早めに仕掛けたんです。(宮澤)崇史に追わせて、その番手で真理さんがスプリントすれば勝てると思って踏みました。残念な結果になりましたが、最後まで魅せる走りが出来て良かった」。
そう、野寺はこのレースを最後に引退を表明している。引退後は今西監督のあとを継ぎ、シマノレーシングの監督として指揮をとることになるという。

期待された新城は13位でゴール。ひとりっきりで闘ったうえに、レース中は時折表情を険しくさせるシーンが見られた。
強行スケジュールで帰国しての参戦。ツール・ド・フランス出場はレースを走る前からすでに決まっていたとのことだが、新城の力をもってしてもなお勝利することが困難という、チーム戦であるロードレースの難しさを改めて思い知る結果となった。


全日本選手権ロードレース2010エリート男子 結果

1位 宮澤 崇史 (TEAM NIPPO) 5:14:03
2位 鈴木 真理 (JPCA シマノ)
3位 野寺 秀徳 (JPCA シマノ)
4位 佐野 淳哉 (TEAM NIPPO)  +01"
5位 清水 都貴 (チームブリヂストンアンカー) +04"
6位 西谷 泰治 (愛三工業)  +12"
7位 平塚吉光(シマノレーシング)+39"
8位 飯島誠(ブリヂストンアンカー)+1’10"
9位 増田成幸(チームNIPPO)+1’15"
10位 中村 誠(宇都宮ブリッツェン)+2’03"

text:Makoto Ayano
photo:Makoto Ayano, Hideaki Takagi, Kei Tsuji
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