2021/10/23(土) - 20:12
U23とエリート混走で行われた全日本選手権女子ロードレースは、今季のJBCFレースで11勝をマークしている話題の新星・植竹海貴(Y’s Road)が金子広美(イナーメ信濃山形)とのマッチスプリントを制して新女王に輝いた。3位の川口うらら(日本体育大学)がU23の勝者に。
女子エリート+WU23は、8人のU23選手を含む全25人のレースとなった photo:Makoto AYANO
晴れながらも少し肌寒いなか11時半のスタートとなった女子エリート+WU23は、8人のU23選手を含む全25人のレースとなった。欧州中心に活動する、5度の女子チャンピオン與那嶺恵理(チームティブコSVB)はベルギーで開催された9月の世界選手権をもって自身のシーズンを終了し、出場していない。
スタート直後のアタックを決めたのは米田和美(MOPS)と西加南子(LUMINARIA) photo:Makoto AYANO
米田和美(MOPS)が2周を逃げ続ける photo:Makoto AYANO
スタート直後のアタックを決めたのは米田和美(MOPS)と全日本ロード出場がじつに25回目という西加南子(LUMINARIA)。しばらくの2人のランデブーのあと米田の独走となり、2周目後半まで逃げが続いた。
前日の個人TTチャンピオンで優勝候補の樫木祥子(Team illuminate)が集団の前方に出てコントロール photo:Makoto AYANO
米田を吸収した後いったん集団は落ち着きを見せ、3周目までは動きのない展開に。前日の個人TTチャンピオンで優勝候補の樫木祥子(Team illuminate)が集団の前方に出てコントロール。ペースを刻むと実力のない選手がふるいにかけられるように遅れていく。海外プロチームに所属し、2週間前にはコロンビアで開催されたレースで強さを発揮した樫木の動きを皆が意識しているのが伝わってくる。
5周を残して先頭グループは8人に絞られた photo:Makoto AYANO
大きなアタックは無いものの集団は数を減らし、4周目になって金子広美(イナーメ信濃山形)と川口うらら(日本体育大学)が登りのたびにペースを上げ、先頭集団の人数を絞り込む動きが続く。前日に個人タイムトライアルで2位&U23優勝の好走を見せた石上夢乃(鹿屋体育大学)や今季はJBCFレースでじつに11勝を挙げている植竹海貴(Y’s Road)も先頭に出てペースを上げると、5周を残して先頭グループは8人に絞られた。
金子広美(イナーメ信濃山形)が登りのたびにペースを上げる photo:Makoto AYANO
平坦や下りでは均等にローテーションを回す先頭集団だが、登りになるたびに攻撃を続ける金子と川口。急坂ポイントで金子がさらに強く踏み込んだとき、樫木が離されてしまう。
金子広美(イナーメ信濃山形)のペースアップに同調する川口うらら(日本体育大学) photo:Makoto AYANO
金子、川口、植竹の3人が残り4周半で抜け出る格好になった。登りでは金子と川口が交代交代に強く引き、ダウンヒル区間ではマウンテンバイクで培ったスキルをもつ川口が攻める走りを見せて後続とのタイム差を開いていく。
3人を逃してしまった樫木祥子(Team illuminate)の追走グループ photo:Makoto AYANO
追走グループの先頭は樫木と石上が引くが、その差は縮まらず、残り3周で48秒、2周で1分10秒と開いていく。追走グループの協調がとれないことで樫木と石上の2人がペースを上げ、前の3人を追う。2人は最終周回までに41秒差まで詰めるが、互いに攻撃を続けてペースを上げる先頭3人を射程距離に戻すには至らなかった。
登りごとにアタックする金子広美(イナーメ信濃山形) photo:Makoto AYANO
金子広美(イナーメ信濃山形)が強く踏むと川口うらら(日本体育大学)が遅れる photo:Makoto AYANO
金子、川口、植竹の3人の勝負に絞られたかに思えたが、残り1.2周で金子が登りで強く仕掛けると川口が遅れ、最終周回には金子と植竹の2人で突入していく。東京五輪代表選手の金子と今年話題のニューカマー植竹のマッチレースは、最終周回に入っても牽制状態にはならなかった。
金子広美(イナーメ信濃山形)に食らいつく植竹海貴(Y’s Road) photo:Makoto AYANO
植竹海貴(Y’s Road)が金子広美(イナーメ信濃山形)のアタックに耐える photo:Makoto AYANO
金子広美(イナーメ信濃山形)に追従する植竹海貴(Y’s Road) photo:Makoto AYANO
勾配が緩むと植竹海貴(Y’s Road)が金子広美(イナーメ信濃山形)の前に出る photo:Makoto AYANO
「スプリントになったら負けることは分っていたので、登りのたびに自分から仕掛けました」とレース後に話した金子。キーとなる登りごとに植竹を引き離そうとするが、植竹は後方で耐えてちぎれない。緩い区間に出ると金子の前に出て引くスタミナを見せる植竹。勾配のきつい登りで離れることなくやり過ごした植竹に対し、金子は最終ホームストレートの登りでも先行して引き離そうとトライ。そして長いゴールスプリントも前で開始した。
植竹海貴(Y’s Road)がスプリントで金子広美(イナーメ信濃山形)を下す photo:Makoto AYANO
「最後のスプリント前に脚が限界だった。もたないと思ったから、ギリギリまで金子さんの後ろにつけて、最後は全力で踏みました」と言う植竹が最後に伸び、金子の前に出て片手を突き出してフィニッシュラインを切った。新しい女王の誕生だ。
「2人が登りのたびにアタックして、それに着いていくのに必死でした。登りで遅れたら勝負にならないと、耐えました。一番になれるとは思っていなかった。信じられないです。いつもサポートしてくれる方、一緒に走ってくれる方、レースに出やすい環境を作ってくれる方々に感謝しかないです。皆さんにお礼を言いたいです」と喜びを語る。
フィニッシュした植竹海貴(Y's Road)を両親が出迎える photo:Satoru Kato
スポーツサイクルの大手販売チェーン店であるワイズロードに勤める25歳の植竹。今季はJBCFレースで11勝もの勝ち星を上げ、その強さが話題に。フルタイムワーカーの店員だが、週休2日の休みをすべて練習に充てるほか、出勤前にパーソナルトレーナーとのセッション、そして夜はズイフトを活用してトレーニングし、急速に実力をつけてきた。
もとは保育士だったが、レースに専念するためにより良い環境を求めて2020年4月から現職に就く。その前は客としてワイズロードのクラブで走っていたという。
自転車歴としては、通学で乗ったクロスバイクが楽しくて乗り始め、2016年にロードバイクを購入。店主催の週末ライド会に参加するうちにレース参加を勧められ、負けず嫌いな性格もあって練習を頑張るようになったという。過去にバスケットボールや剣道も経験したが、今の自転車ほどは真剣には取り組まなかったと笑う。そして「職場の支援を受けているのが大きいです。JBCFレースでリーダージャージをとったらお店に新しいホイールが届くし、他店に勤務する上司が仕立ててくれた完璧なバイクに乗っています。自転車レースは機材で差が出るので、とても感謝しています」と話す。
植竹海貴(Y’s Road)が全日本チャンピオンに photo:Makoto AYANO
スプリントまでに植竹を離せず、2位に終わった金子は「オリンピックの後、気持ちを保つのが難しかったんですが、5日間だけ休んで練習を再開しました。この全日本には楽しもうと思って来たので、力を出し切れて良かったです。毎回のようにアタックを掛けて人数を減らすことができましたから」とさばけた笑顔で話す。
3位の川口うらら(日本体育大学)がU23の勝者に photo:Makoto AYANO
金子とともに積極的にレースを作り、3位の川口はU23のチャンピオンに。マウンテンバイクのクロスカントリー競技をメインに活動している川口は言う。
「9月のJBCF群馬2daysが今年初のロードレースで、それを入れてもロードは今年3レース目でした。だから周りに合わせていこうと思っていましたが、集団が緩んだから積極的に仕掛けました。MTBなら絶対優勝しなきゃっていうプレッシャーがあるけど、ロードは専門分野じゃないので楽しんで走ることができるんです。アンダー23で勝つことは最低限だと思っていました。前をたくさん引いて脚を使ってしまったから遅れたのか、正直力不足ですね。次は来月のマウンテンバイク全日本選手権でしっかり勝ちたい」。
そして優勝候補ながら5位に終わった樫木祥子。実力がありつつも、コロンビアのレースから帰ってからの自主隔離期間が明けてすぐの広島入りとなったことが不利に働いた。「やっぱり長い自宅待機が響きました。室内でローラーには乗りましたが、1時間半のスピニングを1日に2回とか、長時間乗ることはできなかったんです。3人のアタックがあったときに行けなかった。時間を乗れなかった弱さが出ました」。

晴れながらも少し肌寒いなか11時半のスタートとなった女子エリート+WU23は、8人のU23選手を含む全25人のレースとなった。欧州中心に活動する、5度の女子チャンピオン與那嶺恵理(チームティブコSVB)はベルギーで開催された9月の世界選手権をもって自身のシーズンを終了し、出場していない。


スタート直後のアタックを決めたのは米田和美(MOPS)と全日本ロード出場がじつに25回目という西加南子(LUMINARIA)。しばらくの2人のランデブーのあと米田の独走となり、2周目後半まで逃げが続いた。

米田を吸収した後いったん集団は落ち着きを見せ、3周目までは動きのない展開に。前日の個人TTチャンピオンで優勝候補の樫木祥子(Team illuminate)が集団の前方に出てコントロール。ペースを刻むと実力のない選手がふるいにかけられるように遅れていく。海外プロチームに所属し、2週間前にはコロンビアで開催されたレースで強さを発揮した樫木の動きを皆が意識しているのが伝わってくる。

大きなアタックは無いものの集団は数を減らし、4周目になって金子広美(イナーメ信濃山形)と川口うらら(日本体育大学)が登りのたびにペースを上げ、先頭集団の人数を絞り込む動きが続く。前日に個人タイムトライアルで2位&U23優勝の好走を見せた石上夢乃(鹿屋体育大学)や今季はJBCFレースでじつに11勝を挙げている植竹海貴(Y’s Road)も先頭に出てペースを上げると、5周を残して先頭グループは8人に絞られた。

平坦や下りでは均等にローテーションを回す先頭集団だが、登りになるたびに攻撃を続ける金子と川口。急坂ポイントで金子がさらに強く踏み込んだとき、樫木が離されてしまう。

金子、川口、植竹の3人が残り4周半で抜け出る格好になった。登りでは金子と川口が交代交代に強く引き、ダウンヒル区間ではマウンテンバイクで培ったスキルをもつ川口が攻める走りを見せて後続とのタイム差を開いていく。

追走グループの先頭は樫木と石上が引くが、その差は縮まらず、残り3周で48秒、2周で1分10秒と開いていく。追走グループの協調がとれないことで樫木と石上の2人がペースを上げ、前の3人を追う。2人は最終周回までに41秒差まで詰めるが、互いに攻撃を続けてペースを上げる先頭3人を射程距離に戻すには至らなかった。


金子、川口、植竹の3人の勝負に絞られたかに思えたが、残り1.2周で金子が登りで強く仕掛けると川口が遅れ、最終周回には金子と植竹の2人で突入していく。東京五輪代表選手の金子と今年話題のニューカマー植竹のマッチレースは、最終周回に入っても牽制状態にはならなかった。




「スプリントになったら負けることは分っていたので、登りのたびに自分から仕掛けました」とレース後に話した金子。キーとなる登りごとに植竹を引き離そうとするが、植竹は後方で耐えてちぎれない。緩い区間に出ると金子の前に出て引くスタミナを見せる植竹。勾配のきつい登りで離れることなくやり過ごした植竹に対し、金子は最終ホームストレートの登りでも先行して引き離そうとトライ。そして長いゴールスプリントも前で開始した。

「最後のスプリント前に脚が限界だった。もたないと思ったから、ギリギリまで金子さんの後ろにつけて、最後は全力で踏みました」と言う植竹が最後に伸び、金子の前に出て片手を突き出してフィニッシュラインを切った。新しい女王の誕生だ。
「2人が登りのたびにアタックして、それに着いていくのに必死でした。登りで遅れたら勝負にならないと、耐えました。一番になれるとは思っていなかった。信じられないです。いつもサポートしてくれる方、一緒に走ってくれる方、レースに出やすい環境を作ってくれる方々に感謝しかないです。皆さんにお礼を言いたいです」と喜びを語る。

スポーツサイクルの大手販売チェーン店であるワイズロードに勤める25歳の植竹。今季はJBCFレースで11勝もの勝ち星を上げ、その強さが話題に。フルタイムワーカーの店員だが、週休2日の休みをすべて練習に充てるほか、出勤前にパーソナルトレーナーとのセッション、そして夜はズイフトを活用してトレーニングし、急速に実力をつけてきた。
もとは保育士だったが、レースに専念するためにより良い環境を求めて2020年4月から現職に就く。その前は客としてワイズロードのクラブで走っていたという。
自転車歴としては、通学で乗ったクロスバイクが楽しくて乗り始め、2016年にロードバイクを購入。店主催の週末ライド会に参加するうちにレース参加を勧められ、負けず嫌いな性格もあって練習を頑張るようになったという。過去にバスケットボールや剣道も経験したが、今の自転車ほどは真剣には取り組まなかったと笑う。そして「職場の支援を受けているのが大きいです。JBCFレースでリーダージャージをとったらお店に新しいホイールが届くし、他店に勤務する上司が仕立ててくれた完璧なバイクに乗っています。自転車レースは機材で差が出るので、とても感謝しています」と話す。

スプリントまでに植竹を離せず、2位に終わった金子は「オリンピックの後、気持ちを保つのが難しかったんですが、5日間だけ休んで練習を再開しました。この全日本には楽しもうと思って来たので、力を出し切れて良かったです。毎回のようにアタックを掛けて人数を減らすことができましたから」とさばけた笑顔で話す。

金子とともに積極的にレースを作り、3位の川口はU23のチャンピオンに。マウンテンバイクのクロスカントリー競技をメインに活動している川口は言う。
「9月のJBCF群馬2daysが今年初のロードレースで、それを入れてもロードは今年3レース目でした。だから周りに合わせていこうと思っていましたが、集団が緩んだから積極的に仕掛けました。MTBなら絶対優勝しなきゃっていうプレッシャーがあるけど、ロードは専門分野じゃないので楽しんで走ることができるんです。アンダー23で勝つことは最低限だと思っていました。前をたくさん引いて脚を使ってしまったから遅れたのか、正直力不足ですね。次は来月のマウンテンバイク全日本選手権でしっかり勝ちたい」。
そして優勝候補ながら5位に終わった樫木祥子。実力がありつつも、コロンビアのレースから帰ってからの自主隔離期間が明けてすぐの広島入りとなったことが不利に働いた。「やっぱり長い自宅待機が響きました。室内でローラーには乗りましたが、1時間半のスピニングを1日に2回とか、長時間乗ることはできなかったんです。3人のアタックがあったときに行けなかった。時間を乗れなかった弱さが出ました」。
全日本選手権ロードレース2021女子エリートU23結果
1位 | 植竹海貴(Y’s Road) | 2時間48分23秒 |
2位 | 金子広美(イナーメ信濃山形) | |
3位 | 川口うらら(日本体育大学) | +1分18秒 |
4位 | 石上夢乃(鹿屋体育大学) | +2分16秒 |
5位 | 樫木祥子(Team illuminate) | +2分50秒 |
6位 | 牧瀬翼(WINGS PLUS) | +7分38秒 |
7位 | 伊藤優以(Team ZERO UNO FRONTIER) | +11分10秒 |
8位 | 石田唯(早稲田大学) | +11分22秒 |
9位 | 滝川陽希(LiveGARDEN BiciStelle) | +11分39秒 |
10位 | 米田和美(MOPS) | +13分03秒 |
photo&text:Makoto AYANO
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