雨のシュパルカッセン・ミュンスターラント・ジロはウルフパックの猛攻によって超サバイバルレースとなり、精鋭グループのスプリントでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が悠々勝利。現役ラストレースに挑んだアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)は終盤まで第1グループで粘り、10位で輝かしいキャリアに終止符を打った。



スタート前のインタビューに応じるアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)スタート前のインタビューに応じるアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) photo:CorVosシクロクロスとロード選手として活躍したフィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、アルペシン・フェニックス)にとっても最終レースにシクロクロスとロード選手として活躍したフィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、アルペシン・フェニックス)にとっても最終レースに photo:CorVos

アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)と、ラストレースを見届けに来た家族アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)と、ラストレースを見届けに来た家族 photo:CorVos
北フランスでパリ〜ルーベが開催されたその一方、約400km離れたドイツ西部で開催されたワンデーレースが「シュパルカッセン・ミュンスターラント・ジロ(UCI1.Pro)」だ。その名の通りミュンスターを舞台にした平坦レースは2006年に初開催され、東西ドイツ統一を記念した10月3日開催という意味でも親しまれてきた。

マルセル・キッテルやジョン・デゲンコルプ、アンドレ・グライペルなどジャーマンスプリンターが過去優勝者リストに並ぶ、伝統的にピュアスプリンターを輩出するドイツらしいレース。今年は2014年覇者グライペルの現役ラストレースとなったことでより一層の注目を集めた。

グライペルとマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)という、2010年代を代表するトップスプリンターが揃ったこの日、ミュンスター周辺の天候はルーベと同じく雨模様。グライペルと同じく現役ラストレースのフィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、アルペシン・フェニックス)を含む逃げが決まったものの、メイン集団ではフィニッシュまで90kmを残した横風区間でドゥクーニンク・クイックステップが組織立ったペースアップを繰り出した。

逃げグループに入ったフィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、アルペシン・フェニックス)逃げグループに入ったフィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
ドゥクーニンク・クイックステップのペースアップで集団は木っ端微塵にドゥクーニンク・クイックステップのペースアップで集団は木っ端微塵に photo:CorVos
たまらず集団は木っ端微塵となり、ドゥクーニンク5名やグライペル、パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)を含む僅か13名だけが生き残った。ウルフパックはハイペースのローテーションを続けて当初からの逃げエスケープを飲み込み、追走との差を保ちながら先を急ぐ。36kmを残して繰り出されたカヴェンディッシュのサプライズアタックはグライペルによって潰されたものの、ここから絶え間なくアタック合戦が続くこととなる。

ドゥクーニンクがこれでもかとパンチを繰り出し、その間隙を突いてアレクシー・ルナール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)などライバルチームが攻める場面も。力と力のぶつかり合いの末、足が売り切れたグライペルは残り2kmでルナールに任務を託して離脱。アッカーマンのロングスパートも決まらず、勝負は5名によるスプリント勝負に持ち込まれた。

アレクシー・ルナール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が下すアレクシー・ルナール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が下す photo:CorVos
ヨセフ・チェルニー(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)がハイペースを保ってカヴェンディッシュを発射し、今季ツール・ド・フランスで4勝とマイヨヴェールを射止め完全復活を遂げた「マン島の超特急」が悠々と勝利。「悪天候による厳しいレースだったけれど、僕たちは目標に向けて100%コミットすることができた。最終版もヨセフが素晴らしい仕事をしてくれたし、シーズン最終盤にチームにもう一勝を届けることができて幸せだ」と現役続行姿勢を見せているサヴェンディッシュは話している。

観客の声援に応えながら10位でフィニッシュしたアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)観客の声援に応えながら10位でフィニッシュしたアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) photo:CorVos
共に一時代を築いたアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)をカヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が労う共に一時代を築いたアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)をカヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が労う photo:CorVosシュパルカッセン・ミュンスターラント・ジロ2021表彰台:2位ルナール、1位カヴェンディッシュ、3位フルゴーシュパルカッセン・ミュンスターラント・ジロ2021表彰台:2位ルナール、1位カヴェンディッシュ、3位フルゴー photo:CorVos


カヴェンディッシュの勝利から1分半後、サバイバルレースで力を出し尽くしたグライペルがファンの声援に応えながらフィニッシュ。レースに駆けつけた家族と抱き合ったグライペルは「最後は脚がなくなってしまったけれど、それでもこのレベルにあり、最後まで戦い続けた。過酷なレースだけに感傷に浸る暇はなかったけれど、この先時間を置き、一歩引いた場所から自分の素晴らしいキャリアを振り返りたい」という言葉とともに、2006年のTモバイル入りから16シーズン、通算158勝という輝かしいプロキャリアに終止符を打った。
シュパルカッセン・ミュンスターラント・ジロ2021結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4:11:52
2位 アレクシー・ルナール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)
3位 モルテン・フルゴー(デンマーク、ウノエックスプロサイクリング)
4位 ヨセフ・チェルニー(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:06
5位 ニクラス・メルクル(ドイツ、チームDSM) 0:09
6位 ルネ・ヘールホーズ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ) 0:12
7位 アドリアーン・ヤンセン(アブロックCT)
8位 アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:58
9位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 1:21
10位 アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) 1:33
text:So Isobe