10月2日、フランス北部の石畳を舞台にした第1回女子パリ〜ルーベが開催される。総距離115.6kmのうちパヴェ区間が29.2kmに加え、降雨の予報も出ている「北の地獄」のコースと注目選手をチェックしておこう。



1/4がパヴェ区間の女子パリ〜ルーベ

5つ星の難所区間カルフール=ド=ラルブル5つ星の難所区間カルフール=ド=ラルブル photo: Makoto Ayano
パリ〜ルーベ2021パリ〜ルーベ2021 photo:A.S.O.2015年にストラーデビアンケ、2017年にアムステルゴールドレースが開催されはじめた最高峰の女子レース。ついに女子パリ〜ルーベがスタートする。レース主催者であるA.S.O.が女子版「クラシックの女王」の実施を発表したのは2020年5月5日。当初の予定だった昨年10月の中止を経て、今年は男子レースの前日である10月2日に行われる。

パリ〜ルーベと言えば荒れたパヴェ(石畳)が連続して登場する特徴的なコースレイアウト。今回女子レースで設定されたドゥナンからルーベまでの総距離115.6kmのうち、パヴェ区間は29.2km(4分の1)とその割合は男子を上回り、さらに最初のパヴェまで僅か33km(男子は約100km)と序盤から混沌を迎えることになる。

フィニッシュ地点ルーベに至るまでに登場するパヴェは合計17区間で、真っ直ぐな「アランベールの森」を抜けるトルエー=ド=アランベールこそ登場しないものの、難易度5つ星を誇る「No.11 モンサン=ぺヴェル」と「No.5 カルフール=ド=ラルブル」はしっかりとレイアウトに組み込まれた。そして数々の名勝負を生み出してきたルーベ・ヴェロドローム(トラック競技場)でレースは締めくくられる。
登場するパヴェ17区間
区間 レース距離 残り距離 名称 長さ 難易度
17 33.1km 78km オルネン〜ヴァンディニー 3,700m ☆☆☆☆
16 40.6km 72km ヴァルレン〜ブリヨン 2,400m ☆☆☆
15 44.1km 68.5km ティヨワ〜サール=エ=ロジエール 2,400m ☆☆☆☆
14 50.5km 63km バーヴリー〜オルシー 1,400m ☆☆☆
13 55.5km 58km オルシー 1,700m ☆☆☆
12 61.6km 50.5km オシー〜ベルシー 2,700m ☆☆☆☆
11 67km 45km モンサン=ぺヴェル 3,000m ☆☆☆☆☆
10 73km 41.5km メリニー〜アヴリン 700m ☆☆
9 76.4km 37km ポン=ティボ〜エンヌヴラン 400m ☆☆☆
8 81.8km 33km タンプルーヴ〜レピネット 200m
8 82.4km 32km タンプルーヴ〜ムーラン=ド=ヴェルテン 500m ☆☆
7 88.8km 25km シソワン〜ブルゲル 1,300m ☆☆☆
6 91.3km 22.5km ブルゲル〜ワヌアン 1,100m ☆☆☆
5 95.8km 17.5km カンファナン=ぺヴェル 1,800m ☆☆☆☆
4 98.5km 14.5km カルフール=ド=ラルブル 2,100m ☆☆☆☆☆
3 100.8km 13km グルソン 1,100m ☆☆
2 107.5km 6km ヴィルム〜エム 1,400m ☆☆☆
1 114.2km 1km ルーベ 300m
絶好調ファンダイクが初代王者に輝くか

直近の世界選手権個人タイムトライアルで8年越しのアルカンシエルを手にしたエレン・ファンダイク(オランダ)直近の世界選手権個人タイムトライアルで8年越しのアルカンシエルを手にしたエレン・ファンダイク(オランダ) photo:CorVos
雨に加え南西の風も予想されている”ある意味”最高の舞台が整った「北の地獄」に挑むのは、22チーム129名の選手たち。その中でも初代王者の候補に挙げられるのは、身長の高い重量級のクラシックライダーたちだ。

9月の欧州選手権ロードレースで独走勝利し、直近の世界選手権個人タイムトライアルで2度目の優勝を飾ったエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)。「試走時に落車してしまい泣きそうになるほど過酷だった」と語る彼女だが182cmという体躯は石畳のコースにこの上なく適している。さらに男子チームからの知見や、違ったスタイルで勝負できるエリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)の存在もありレースの中心になってくるのは間違いない。

そのトレック・セガフレードに唯一チーム力で対抗できそうなのが、今年のストラーデビアンケ覇者シャンタル・ブラーク(オランダ)を擁するSDワークスだ。来年の春のクラシックを最後に引退する176cmのブラークを中心に、175cmのジョリーン・ドール(ベルギー)やシクロクロスも走るクリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク)がサポート。また世界選手権で現役を退いたアンナ・ファンデルブレッヘンも監督という立場から選手たちを支える。

2021年ストラーデ・ビアンケを制したシャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス)が優勝2021年ストラーデ・ビアンケを制したシャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス)が優勝 (c)CorVos
プロトン屈指のバイクハンドリング力を誇るマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)プロトン屈指のバイクハンドリング力を誇るマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos
女子のパリ〜ルーベを誰よりも待ち望んでいたマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)も優勝候補に名乗りをあげる1人だ。「スタートから位置取り争いが予想され、パヴェは戦場と化すだろう。でも試走でトラックに入った瞬間、自転車の歴史を感じたし、それはとても美しいひと時だった」と語る168cmのフォスは、シクロクロス世界選手権で6連覇を遂げるテクニックの持ち主。その腕前はプロトン随一だ。

他にも9月の欧州選手権個人タイムトライアルで優勝と躍進する180cmのマーレン・ローセル(スイス、アレBTCリュブリャナ)やアルカンシェルのお披露目の場となるスプリンターのエリーザ・バルサモ(イタリア)、またロッタ・コペッキー(ベルギー、リブレーシング)やカタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、キャニオン・スラム)らも展開に絡んでくるだろう。
text:Sotaro.Arakawa