世界選手権個人タイムトライアルを2日後に控えた金曜日、ベルギー代表のワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)とレムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)が記者会見を行い、母国で開催されるレースへの意気込みを語った。




ユンボ・ヴィスマのサプライヤーであるAGUのアイウェアをかけ登場したワウト・ファンアールト(ベルギー)ユンボ・ヴィスマのサプライヤーであるAGUのアイウェアをかけ登場したワウト・ファンアールト(ベルギー) photo:CorVos
「母国でのレースはいつも特別だが、世界選手権という舞台はそれを上回る。世界選手権をベルギーで開催できる機会は多くないのできっと特別な体験になるだろう。楽しんで走れるとは言い切れないものの、多くの観客が集まり熱狂するのは間違いない。忘れられない日になるはずだ」。9月19日の男子個人タイムトライアルに挑むファンアールトはそう語った。

今年のツール・ド・フランスを沸かした27歳のファンアールト。ベルギージャージを身に纏い挑んだ東京五輪はロードで銀メダル、個人タイムトライアルを6位と悔しい結果に終わった。しかし1ヶ月の休息期間を挟んで出場したツアー・オブ・ブリテンでは、その鬱憤を晴らすかのように激坂フィニッシュや集団スプリントなど多様なコースでステージ4勝を挙げ、総合優勝に輝いた。「ブリテンでは良い走りができたし、その調子のまま世界選手権を走りたい。むしろ今回の方がフレッシュな状態でスタートできるだろう。タイムトライアルで世界王者になることは成し遂げたいことの1つ。今年はツール・ド・フランス(第20ステージの個人TT)で勝利したので、世界選手権へのやる気が更に高まった」。

昨年はフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)から27秒差の2位と届かなかったアルカンシェル。昨年よりも10km以上長いコースについて聞かれると、「今回はコーナーを上手くクリアすることが重要になってくる。勝負を分けるほど難しい区間はないものの、逆に言えば常に気の抜けないコースということだ」と答えた。

ベルギー自転車協会が世界選手権に挑むメンバーを発表した9月6日、チームを率いるスヴェン・ファントーレンハウト監督が記者会見でロードのエースにファンアールトを指名した。「ロードレースの方により長い準備の時間を割いているので、タイムトライアルよりもロードの方が少しだけ重要度が高いと言える。だが、日曜(個人TT)はあくまでも1位を狙って走るつもりだ」と、ファンアールトは語った。

オークリーのアイウェアをかけ質問に答えるレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)オークリーのアイウェアをかけ質問に答えるレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
個人タイムトライアルでファンアールトに並ぶ期待がかかるのが、世界選手権は初出場となる21歳のエヴェネプール。世界選手権より一足早く開催された欧州選手権の個人タイムトライアルロードレースに出場し、それぞれ3位と2位と好成績をマークした。

171cmという小柄な体格ゆえ、平坦かつ距離の長いコースレイアウトへの適性が不安視されることについては「風の中、平坦でコーナーの少ない直線路を進む44kmは正真正銘のタイムトライアルと言える。風をどう対処するかが勝負の鍵になるだろう。ヨーロッパ選手権よりも長いが、僕に不向きとは思わない」と一蹴。「スタートからフィニッシュまでハイペースを維持しなければならず、最後にもう一段階加速できるよう限界を越えないように走りたい。直線が多いため脚を休める区間のない精神的にタフなタイムトライアルになる。ハイスピードを長時間維持できる選手に幸せが訪れるだろう」。

最後にアシストの役割を託されたロードレースについて尋ねられたエヴェネプール。「タイムトライアルとロードのどちらの方が重要ということはなく、ロードではワウト(ファンアールト)のアシストに徹するつもりだ。彼をフィニッシュまで届けるために全力を尽くす」。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos