スコットランド北東を舞台にしたツアー・オブ・ブリテン最終日。各チームのトレインが入り乱れる集団スプリントでワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が勝利し、イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を逆転して総合優勝に輝いた。



昨日のステージを並走して盛り上げたザンダー・グラハムくん昨日のステージを並走して盛り上げたザンダー・グラハムくん photo:CorVos
8日間にわたり開催されたツアー・オブ・ブリテンを締めくくるのは、スコットランド北東を駆ける173kmの丘陵コース。北海に面したストーンヘブンから西に向かい、後半は進路を北東に変えてスコットランド第3の都市アバディーンにフィニッシュする。レース序盤から1級山岳ケアン・オ・マウントと2つの3級山岳が登場するものの、その後はフィニッシュまでは平坦基調が続く。勝負は予想通りの集団スプリントに持ち込まれた。

総合1位のイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)と2位ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)の総合タイム差が4秒という僅差で迎えた最終日。第2ステージで逃げ切り勝利したロビン・カーペンター(アメリカ、ラリーサイクリング)や21歳のアイルランド王者ベン・ヒーリー(トリニティレーシング)ら6名が逃げグループを形成した。メイン集団は4人まで減ったユンボ・ヴィスマと、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)の母国勝利を目指すドゥクーニンク・クイックステップが3分差前後で牽引した。

カーペンターが最初の1級山岳をトップ通過して山岳ポイントを加算するも、プロトンで山岳賞ジャージを着るジェイコブ・スコット(イギリス、キャニオンDHBサンゴッド)には及ばず、スコットの2大会連続山岳賞が確定した。一方のプロトンは、ヘイターが「1級山岳ケアン・オ・マウントでライバルたちのアタックを待ち構えていたが、強い向かい風が吹いていたため何も起こらなかった」と言うように、ユンボ・ヴィスマによる淡々としたペースメイクでクリアしていった。

逃げグループを形成するロビン・カーペンター(アメリカ、ラリーサイクリング)ら逃げグループを形成するロビン・カーペンター(アメリカ、ラリーサイクリング)ら photo:CorVos
時折雨粒が路面を濡らすスコットランド北東の丘陵地帯時折雨粒が路面を濡らすスコットランド北東の丘陵地帯 photo:CorVos
ユンボ・ヴィズマを先頭に観客が詰めかけた1級山岳を登っていくメイン集団ユンボ・ヴィズマを先頭に観客が詰めかけた1級山岳を登っていくメイン集団 photo:CorVos
フィニッシュの待つアバディーンに辿り着いた4名の逃げグループが残り4.5kmを残して吸収される。ラウンドアバウトや向かい風に苦戦しながら、スプリンターを擁する各チームの位置争いが繰り広げられるなか、アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)を集団前方に引き上げたアレックス・ドーセット(イギリス)がそのまま単独で飛び出した。

この動きをすぐさまモビスターが時速70kmにも至るスピードで引き戻すと、繰り下げでポイント賞ジャージを着るゴンサロ・セラーノ(スペイン、モビスター)を先頭に残り1kmアーチ通過。若干崩れながらもドゥクーニンクトレインが主導権を握り、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)の背後からカヴェンディッシュが発射した。

しかしカヴェンディッシュは伸びず、そのスリップストリームにヘイターとファンアールトが入り、更に後方からグライペルが加速してカヴェンディッシュを追い抜いていく。ファンアールトがヘイターを、そしてグライペルを退け、ガッツポーズと共に赤黄黒のベルギーチャンピオンジャージをアピールした。

カヴェンディッシュをかわしアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)に並ぶワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)カヴェンディッシュをかわしアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)に並ぶワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
今大会4勝目を挙げたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)今大会4勝目を挙げたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
「チームメイトが逃げ集団を懸命に追ってくれたおかげ。だからこの勝利はチーム全体のものだ。イギリスの観客による熱狂を感じられる大会だったよ。ここ2年ほどは新型コロナの影響でその熱が失われていたので、声援が本当に嬉しかった」。今大会4勝目を挙げたファンアールトはそう振り返る。

また総合首位のヘイターが11位とボーナスタイムを逃したため、ファンアールトは10秒を獲得して逆転の総合優勝に輝いた。「総合優勝に加え、予想以上の勝利を掴むことができた大会となった。いまは思い描いていた通りのコンディションにいるよ」と9月19日の世界選手権個人タイムトライアル、そして9月26日のロードレースに向けて弾みをつけた。

また母国のレースで総合2位と健闘したヘイターは、「最終日にリーダージャージを失う少し残念な結果だが、それでも僕を含めみんなの予想を上回る順位だ。マンチェスターでのチームタイムトライアルで勝利し、ファンアールトとアラフィリップに挟まれる総合2位はかなり良い結果だ。次は世界選手権の個人タイムトライアルとロードレースに出場する。僕らのチームには良い選手が揃っているので楽しみだよ」と、同じく世界選手権への意気込みを語った。

総合優勝に輝いたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)総合優勝に輝いたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
ツアー・オブ・ブリテン2021第8ステージ結果
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 4:07:56
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
4位 コリン・ジョイス(アメリカ、ラリーサイクリング)
5位 マックス・カンター(ドイツ、チームDSM)
6位 ロリー・タウンセンド(アイルランド、キャニオンDHBサンゴッド)
7位 マシュー・ギブソン(イギリス、リビル・ウェルドタイトプロサイクリング)
8位 オリー・ペクオーバー(イギリス、スウィフトカーボンプロサイクリング)
9位 マシュー・ボストック(イギリス、キャニオンDHBサンゴッド)
10位 ガブリエル・クレイ(イギリス、モビスター)
11位 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
個人総合成績
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 31:42:22
2位 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 0:06
3位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:27
4位 ミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:41
5位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション) 1:00
6位 ローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ) 1:14
7位 ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) 1:16
8位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、アルペシン・フェニックス) 1:43
9位 マーク・ドノヴァン(イギリス、チームDSM) 2:04
10位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) 2:07
その他の特別賞
ポイント賞 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
山岳賞 ジェイコブ・スコット(イギリス、キャニオンDHBサンゴッド)
チーム総合成績 ドゥクーニンク・クイックステップ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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