ブエルタ・ア・エスパーニャ2日目は予想通りの大集団スプリントで決着。先行するモラノやマシューズを追い抜き、ヤコブセンとの接戦を制したヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が勝利を飾った。



8月15日(日)第2ステージ
カレルエガ〜ブルゴス・ガモナル 166.7km


スタートを待つ新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)スタートを待つ新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
2021年大会のブエルタ・ア・エスパーニャに、(開幕早々山岳ステージが続いた昨年と違って)早速スプリンターたちの舞台がやって来た。第2ステージはカトリック修道会「ドミニコ会」の創設者である聖ドミニコ(ドミンゴ・デ・グスマン・ガルセス)の没後800周年を記念してその生誕地カレルエガをスタートし、開幕地ブルゴスに向かって北上する。

166.7kmのコースに起伏はほとんどなく、獲得標高差は1,000mほど。カテゴリー山岳は一つも設定されず、集団スプリント予想100%の平坦ステージだ。

プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)ら、特別ジャージを着る選手たちを先頭にスタートを待つプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)ら、特別ジャージを着る選手たちを先頭にスタートを待つ photo:CorVos
集団から逃げるシャビエル・アスパレン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)集団から逃げるシャビエル・アスパレン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) photo:CorVos
前日に続いて晴天に恵まれたこの日、ワイルドカードで出場権を得た3チームがそれぞれ一人ずつ送り込んだ3人の逃げグループが形成された。ドゥクーニンク・クイックステップやグルパマFDJなど、スプリントバトルを見据えるチームがコントロールするメイン集団から逃げ続けた。

逃げグループを形成した3名
ディエゴ・ルビオ(スペイン、ブルゴスBH)
アントニオ・モリナ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
シャビエル・アスパレン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)

風力発電の風車が立ち並ぶブルゴスの強風地帯を縦断する第2ステージ。同地方を横断した2019年大会の第17ステージではドゥクーニンク・クイックステップの横風分断作戦によってプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)たちが遅れを喫したものの、この日最大風速は7km/hとプロトンを破壊するまでには至らなかった。

それでも残り65kmを切ってアルペシン・フェニックスやグルパマFDJ、ユンボ・ヴィスマといったチームがペースアップを試みたものの、集団分裂には持ち込めず。突発的な強風に警戒しながらも、ほとんどの時間においてメイン集団は平穏な「落ち着いたスプリンターステージ」を過ごした。

逃げるアントニオ・モリナ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)たち逃げるアントニオ・モリナ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)たち photo:CorVos
集団内で走るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)集団内で走るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
メイン集団のペースアップとペースダウンによって逃げ3名のタイム差は増減を繰り返しながら、残り50km、残り40kmでそれぞれ1分半をキープ。やがてグルパマFDJがメイン集団先頭に立ちペースを刻んだため、残り35kmでタイム差は35秒に。時を同じくして先頭グループはバラバラとなり、地元ブルゴスの期待を一身に背負うルビオが敢闘賞狙いの単独先行に持ち込んだ。

その後グルパマFDJのタイム調整によってタイム差は再び1分台に入ったものの、ボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が懸けられた残り16.7km地点のスプリントポイントに向けたペースアップによって一気に下降した。チームDSMなどが牽引する中、新城幸也も集団先頭に立ちバーレーン・ヴィクトリアスの隊列を引っ張り続けた。

粘り続けたルビオはスプリントポイントまで4kmを残して吸収され、6秒差の総合2位につけるアレクサンデル・アランブル(スペイン)のボーナスタイム獲得を狙うアスタナ・プレミアテックが隊列を組み上げる。50〜60km/hで突き進んだその最後、ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)に続く2位に入ったアランブルは2秒を獲得し、首位ログリッチとのタイム差を4秒まで縮めることに成功した。

残り4.2km地点で起きた落車。ボーラ・ハンスグローエは3名が被害を受けた残り4.2km地点で起きた落車。ボーラ・ハンスグローエは3名が被害を受けた photo:CorVos
総合チームやスプリンターチームが入り乱れてメイン集団の先頭に立って高速牽引。すると残り4.2km地点で集団を2分割する大きな集団落車が発生し、ボーラ・ハンスグローエはスプリントを狙ったジョルディ・メーウス(ベルギー)を含む3名が路面に投げ出される被害を被った(落車した選手は全員フィニッシュ)。

救済措置が適用される残り3km以内に突入するとスプリンターチームによる本格的なリードアウトトレインが発車した。ドゥクーニンク・クイックステップとアルペシン・フェニックスが争いながらコーナー連続地帯を抜け、残り1.5kmからフィニッシュまで続くストレートに入るとドゥクーニンクが優勢に立ったものの、残り500mを切ってアルペシンが、続いてUAEチームエミレーツ優位に取って代わる。アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が後方に沈む中、フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)のロングスプリントをきっかけに勝負の幕が切って落とされた。

モラノをリードアウト役に使い、マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)がラインを振って先頭に立つ。しかしその背後からヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)とファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が追い上げた。

ヤコブセンを下し、ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が先着ヤコブセンを下し、ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が先着 photo:CorVos
待望の勝利を挙げたヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)待望の勝利を挙げたヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
危なげなく集団フィニッシュしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)危なげなく集団フィニッシュしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos2位に甘んじたファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)2位に甘んじたファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos


共にマシューズのスリップストリームから抜け出し、モラノとマシューズをフェンス脇から抜き去ったフィリプセンとヤコブセン。ラインを変えることなく真っ直ぐに加速したフィリプセンが、大怪我から復活後初のグランツールステージ優勝を狙ったヤコブセンを打ち破った。

先のツール・ド・フランスでステージ3回づつ2位と3位に食い込みながらも勝利に一歩届かなかったフィリプセンが待望の勝利。昨年大会第15ステージに続くブエルタでのステージ2勝目を今大会初回のスプリンターバトルでもぎ取った。

マイヨプントスを着用したヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)マイヨプントスを着用したヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
またこの日、多くの総合勢は落車に巻き込まれることなく無事にフィニッシュ。集団牽引に力を尽くした新城は残り2kmで機材トラブルに見舞われたものの、144位でレースを終えている。

選手コメントは別記事で紹介します。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第2ステージ結果
1位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 3:58:57
2位 ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
4位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
5位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
6位 ジョン・アベラストゥリ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
7位 マーティン・ラース(エストニア、ボーラ・ハンスグローエ)
8位 リッカルド・ミナーリ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
9位 フロリアン・フェルメールス(ベルギー、ロット・スーダル)
10位 ピート・アレハールト(ベルギー、コフィディス)
144位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) 0:38
マイヨロホ 個人総合成績
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
チーム総合成績
text:So Isobe

最新ニュース(全ジャンル)