2010年6月17日、ツール・ド・スイス(UCIプロツアー)の第6ステージが行なわれ、終盤の超級山岳アルブラ峠で独走態勢に持ち込んだロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が、後続を寄せ付けない走りでステージ優勝。同時にヘーシンクは総合首位に立ち、リーダージャージに袖を通した。

アシストとして兄フランクのために動き続けたアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)アシストとして兄フランクのために動き続けたアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vos第6ステージは超級山岳スーステン峠(標高2224m)、1級山岳オーバアルプ峠(標高2046m)、超級山岳アルブラ峠(標高2315m)と、3つの難関山岳が設定された今大会のクイーン(最難関)ステージ。頂上ゴールではないが、獲得標高差は4800近い。最後のアルブラ峠頂上はゴールの僅か10km手前であり、総合変動は必至だ。

この日は第4ステージで大落車を引き起こして物議をかもしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)がスタートせず。レース公式サイトによると、理由は選手たちの抗議によるものではなく、祖母の葬儀に出席するため。

ハイペースでアルブラ峠を駆け上がるロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)ハイペースでアルブラ峠を駆け上がるロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vos最初の超級山岳スーステン峠でこの日の逃げは決まった。集団から飛び出したのは、フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)やフランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)、パブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ)ら13名。

逃げグループの中に最も多くの選手を送り込んだのは、グランツール欠場が決まっているヴァカンソレイユ。新鋭クライマーとして期待されるブリース・フェイユ(フランス)、山岳賞5位のワウテル・ポエルス(オランダ)、ポイント賞ジャージを着るマルコ・マルカート(イタリア)の3名が逃げグループ入りを果たした。

アルブラ峠でメイン集団から脱落したトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)アルブラ峠でメイン集団から脱落したトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア) photo:Cor Vos逃げグループは最大5分30秒のリードを得て難関山岳を越えて行く。前半の超級山岳スーステン峠と1級山岳オーバアルプ峠はいずれもポエルスが先頭で通過し、暫定で山岳賞トップに。

やがてレース後半に入ると、メイン集団ではチームHTC・コロンビアに代わってサクソバンクとチームスカイがペースアップを開始。ラスト35km地点でメイン集団が踏切で1分近く停止を余儀なくされるハプニングが起きながらも、着実に逃げグループとのタイム差を詰めながら最後の超級山岳アルブラ峠に向かった。

メイン集団からアルブラ峠で飛び出したフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とオリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)メイン集団からアルブラ峠で飛び出したフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とオリバー・ザウグ(スイス、リクイガス) photo:Cor Vosアルブラ峠で逃げグループの中から動いたのはフェイユ。持ち前の登坂力を活かして飛び出したフェイユは、独走で長い長いアルブラ峠の頂上を目指した。

メイン集団では総合2位のファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)脱落とともにアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がアタック。この動きに呼応してペースが上がったメイン集団からは、リーダージャージのトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)がこぼれ落ちた。

アームストロングのためにメイン集団のペースを作るアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)アームストロングのためにメイン集団のペースを作るアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) photo:Cor Vos一旦メイン集団に吸収されたAシュレクは、頂上まで6kmを残して再び強烈なアタックを見せる。これに反応したヘーシンクが、それまで逃げていた選手たちを全員抜きさって先頭に。ヘーシンクの独走が始まった。

全開でアルブラ峠を駆け上がったヘーシンクは、メイン集団を1分20秒引き離して頂上を通過。メイン集団からはフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とオリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)がカウンターアタックで飛び出していたが、決定的なリードを築けないまま集団に吸収。有力選手ひしめくメイン集団は、先頭ヘーシンクから1分遅れで最後の下りに差し掛かった。

ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が何度もガッツポーズを見せるロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が何度もガッツポーズを見せる photo:Cor Vos独走のままハイスピードダウンヒルをこなしたヘーシンクは、後続を引き離したままゴールにやってきた。最後までタイムを惜しんでスプリントしたヘーシンクは、ジャージをアピールしてゴール。ステージ優勝とリーダージャージを同時に手にした。

メイン集団は結局42秒遅れでゴールし、ステージ2位のリゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)が総合2位、ステージ7位のスティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)が総合3位にジャンプアップしている。

リーダージャージに袖を通したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)リーダージャージに袖を通したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vosランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)は自ら動くことは無かったものの、安定した走りで集団内でゴール。リーダージャージのマルティンは2分36秒遅れ、総合2位のカンチェラーラ22分51秒遅れでゴールした。

最難関ステージで優勝し、総合優勝に向けて一歩リードしたヘーシンクはラボバンク公式サイトの中で「最後の山岳がゴール10km手前だったので、アタックする価値があると思った。アンディのアタックを利用することで、比較的楽に飛び出すことが出来たんだ。彼に付いていったら、後ろに誰もいなかった。そこからもう一度加速したんだ。下りはリスクを負わずに走った。ツールに向けて良いサインだ。タイム差は大きく無いし、最後にタイムトライアルが残っているから、総合争いの行方はまだ分からないよ」と語っている。ヘーシンクはこれが今シーズン初勝利だ。

ツール・ド・スイスは残り3ステージ。翌第7ステージはゴール13km手前に3級山岳が設定されたアップダウンコースで行なわれる。この日グルペットでゴールに辿り着いたスプリンターたちの活躍に注目したい。

選手コメントは各チーム公式サイトより。


ツール・ド・スイス2010第6ステージ結果
1位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)6h20'53"
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)+42"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 オリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)
5位 ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)
6位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)
7位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)+1'20"

個人総合成績
1位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)25h18'57"
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)+29"
3位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)+36"
4位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+38"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+42"
6位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)+54"
7位 ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)+55"
8位 オリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)+1'01"
9位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)+1'17"
10位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)+1'38"

スプリント賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、エウスカルテル)

山岳賞
ワウテル・ポエルス(オランダ、 ヴァカンソレイユ)

ポイント賞
マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ)

チーム総合成績
サクソバンク

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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