2021/07/27(火) - 23:05
雨で難易度を増した伊豆MTBコースに完璧な適性を見せ、女子MTBレースを制したヨランダ・ネフ(スイス)。2019年の事故から徐々にコンディションを取り戻していた元世界王者が、五輪金メダリストの称号を自身の戦績に加えた。
未明からコースを濡らした重い雨雲は、断続的に降ったり止んだりを繰り返しながらも、午前中いっぱい伊豆・修善寺の日本サイクルスポーツセンター内に作られた伊豆MTBコース上空に居座り続けた。
雨雲はレース3時間前に過ぎ去り、コースは急速に乾きを取り戻していったものの、風通しの悪い林間セクションは弱ウェットコンディションのまま。ただでさえ難しいコースはロックセクションの短縮こそされたものの、テクニックに優れる選手有利の状況を生み出した。レース周回は所定6周から5周となり、前日にマチュー・ファンデルプール(オランダ)の落車現場となった「桜ドロップ」には試走時と同じ木製ラダーが取り付けられた。
15時の号砲と共に、今井美穂(CO2bicycle)を含む38名がスタート。2020年世界選手権銀メダルのエヴァ・リヒナー(イタリア)がホールショットを決め、続く直登区間では今季ここまでのUCIワールドカップ全てで圧勝しているロアナ・ルコント(フランス)が先頭に立つ。ここにラウラ・スティッガー(オーストリア)が追いつき、今季成長著しい若手2人が引っ張る形でスタートループを完了した。
全長3,850m、高低差150mのコースを合計5周回。メイン周回に入るとすぐ先頭の若手2人に対し、現世界チャンピオンのポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)やヨランダ・ネフ(スイス)といった、ここ数年ワールドサーキットの中心を担ってきた選手たちが追いつき、先頭グループを形成した。レース前試走で入念にコース確認をしていたスイスチームはここにシーナ・フライとリンダ・インダーガンドをも送り込み、メンバー全員が勝負の最前線へ。
やがてフェランプレヴォとネフ、つまり新旧の世界王者が抜け出し、激しい鍔迫り合いのまま桜ドロップを通過した直後、その登り返しでフェランプレヴォが後輪を滑らせて落車した。滑り落ちたバイクを回収する間にフェランプレヴォは6番手まで後退してしまう。ライバルのミスを確認したネフは独走態勢を築き上げた。
下りで得たスピードを登りに繋げるテクニックと瞬発力が求められる伊豆MTBコースのネフとの相性はまさに抜群だった。観客をどよめかせるスピードでテクニカルセクションを駆け抜け、絶妙なライン取りで降車することなく登りをこなす。2019年プレ大会の焼き直しかのような展開で、ネフはリードを積み重ねていった。
ネフを単独追いかけたイヴィ・リチャーズ(イギリス)は、やがてフライとインダーガンドのスイスコンビに追いつかれ後退。息を吹き返したフェランプレヴォがこの2人に追いつき攻撃に転じたものの、フライの登坂ペースに追従できず、やはり脱落。昨年、今年と波に乗ってきたフランスだったが、この日はルコントを6位、フェランプレヴォを10位に送り込むのがやっとだった。
元世界王者のケイト・コートニー(アメリカ)やリオ五輪覇者ジェニー・リスヴェッツ(スウェーデン)、大一番に強いレベッカ・マコーネル(オーストラリア)たちが沈む中、五輪初出場の今井も苦しんだ。レース前の試走中に転倒し、胸を強く打ったという今井は痛みをこらえて走ったもののペースは上がらず、更に後輪パンクに見舞われて後退。選手活動の集大成として挑んだオリンピックはマイナス3ラップ、37位という結果となった。
淡々と、しかしそれでいて強力なペースを刻むネフはレース中盤に2分ものリードを稼ぎ出した。他国を退けたフライとインダーガンドが2位グループを形成し、スイスはワンツースリー体制を確固たるものに。最年少19歳のカータ・ヴァス(ハンガリー)は追い上げて後半戦で4番手に浮上したものの、スイス勢の背中は遠すぎた。
最後まで安定したペースを貫いたネフは、ホームストレートで受け取ったスイス国旗を掲げてフィニッシュ。1分11秒後にフライが、その8秒後にインダーガンドが飛び込み、スイスが自転車競技で1904年セントルイスオリンピック(アメリカ)以来となる歴史的な表彰台独占を成し遂げた。
「ダウンヒルで頭の感覚が鈍らないよう、気後れしないよう心がけた。でもこのコースに対する自信はあった」と言うネフ。元世界チャンピオン、そしてプレ大会覇者ではあるものの、肺挫傷と脾臓破裂を負った2019年の事故からの回復途上であり、優勝候補に挙げる声は少なかった。そんな下馬評を完璧なコース適性で打ち破っての金メダル獲得であり、銀メダルに甘んじた前日の男子レースの借りを、これ以上ない形で返上してみせた。
19歳ヴァスがメダルまであと一歩の4位。テルプストラは5位。28位のマコーネルが最終完走者となり、完走率は73.6%と男子レース(86.8%)よりも低かった。
未明からコースを濡らした重い雨雲は、断続的に降ったり止んだりを繰り返しながらも、午前中いっぱい伊豆・修善寺の日本サイクルスポーツセンター内に作られた伊豆MTBコース上空に居座り続けた。
雨雲はレース3時間前に過ぎ去り、コースは急速に乾きを取り戻していったものの、風通しの悪い林間セクションは弱ウェットコンディションのまま。ただでさえ難しいコースはロックセクションの短縮こそされたものの、テクニックに優れる選手有利の状況を生み出した。レース周回は所定6周から5周となり、前日にマチュー・ファンデルプール(オランダ)の落車現場となった「桜ドロップ」には試走時と同じ木製ラダーが取り付けられた。
15時の号砲と共に、今井美穂(CO2bicycle)を含む38名がスタート。2020年世界選手権銀メダルのエヴァ・リヒナー(イタリア)がホールショットを決め、続く直登区間では今季ここまでのUCIワールドカップ全てで圧勝しているロアナ・ルコント(フランス)が先頭に立つ。ここにラウラ・スティッガー(オーストリア)が追いつき、今季成長著しい若手2人が引っ張る形でスタートループを完了した。
全長3,850m、高低差150mのコースを合計5周回。メイン周回に入るとすぐ先頭の若手2人に対し、現世界チャンピオンのポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)やヨランダ・ネフ(スイス)といった、ここ数年ワールドサーキットの中心を担ってきた選手たちが追いつき、先頭グループを形成した。レース前試走で入念にコース確認をしていたスイスチームはここにシーナ・フライとリンダ・インダーガンドをも送り込み、メンバー全員が勝負の最前線へ。
やがてフェランプレヴォとネフ、つまり新旧の世界王者が抜け出し、激しい鍔迫り合いのまま桜ドロップを通過した直後、その登り返しでフェランプレヴォが後輪を滑らせて落車した。滑り落ちたバイクを回収する間にフェランプレヴォは6番手まで後退してしまう。ライバルのミスを確認したネフは独走態勢を築き上げた。
下りで得たスピードを登りに繋げるテクニックと瞬発力が求められる伊豆MTBコースのネフとの相性はまさに抜群だった。観客をどよめかせるスピードでテクニカルセクションを駆け抜け、絶妙なライン取りで降車することなく登りをこなす。2019年プレ大会の焼き直しかのような展開で、ネフはリードを積み重ねていった。
ネフを単独追いかけたイヴィ・リチャーズ(イギリス)は、やがてフライとインダーガンドのスイスコンビに追いつかれ後退。息を吹き返したフェランプレヴォがこの2人に追いつき攻撃に転じたものの、フライの登坂ペースに追従できず、やはり脱落。昨年、今年と波に乗ってきたフランスだったが、この日はルコントを6位、フェランプレヴォを10位に送り込むのがやっとだった。
元世界王者のケイト・コートニー(アメリカ)やリオ五輪覇者ジェニー・リスヴェッツ(スウェーデン)、大一番に強いレベッカ・マコーネル(オーストラリア)たちが沈む中、五輪初出場の今井も苦しんだ。レース前の試走中に転倒し、胸を強く打ったという今井は痛みをこらえて走ったもののペースは上がらず、更に後輪パンクに見舞われて後退。選手活動の集大成として挑んだオリンピックはマイナス3ラップ、37位という結果となった。
淡々と、しかしそれでいて強力なペースを刻むネフはレース中盤に2分ものリードを稼ぎ出した。他国を退けたフライとインダーガンドが2位グループを形成し、スイスはワンツースリー体制を確固たるものに。最年少19歳のカータ・ヴァス(ハンガリー)は追い上げて後半戦で4番手に浮上したものの、スイス勢の背中は遠すぎた。
最後まで安定したペースを貫いたネフは、ホームストレートで受け取ったスイス国旗を掲げてフィニッシュ。1分11秒後にフライが、その8秒後にインダーガンドが飛び込み、スイスが自転車競技で1904年セントルイスオリンピック(アメリカ)以来となる歴史的な表彰台独占を成し遂げた。
「ダウンヒルで頭の感覚が鈍らないよう、気後れしないよう心がけた。でもこのコースに対する自信はあった」と言うネフ。元世界チャンピオン、そしてプレ大会覇者ではあるものの、肺挫傷と脾臓破裂を負った2019年の事故からの回復途上であり、優勝候補に挙げる声は少なかった。そんな下馬評を完璧なコース適性で打ち破っての金メダル獲得であり、銀メダルに甘んじた前日の男子レースの借りを、これ以上ない形で返上してみせた。
19歳ヴァスがメダルまであと一歩の4位。テルプストラは5位。28位のマコーネルが最終完走者となり、完走率は73.6%と男子レース(86.8%)よりも低かった。
東京2020オリンピック 女子MTBクロスカントリー・オリンピック 結果
text:So Isobe
photo:Nobuhiko Tanabe
photo:Nobuhiko Tanabe
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