多くの選手が落車に巻き込まれ、負傷したツール・ド・フランス3日目。カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)とジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)、ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)といったビッグネームが鎖骨骨折でリタイアに追い込まれている。



集団復帰を目指すも遅れを取ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)集団復帰を目指すも遅れを取ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos
大きなダメージを被ったのがユンボ・ヴィズマだ。レース序盤にゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)と共に落車し、肩から地面に叩きつけられたロベルト・ヘーシンク(オランダ)は鎖骨骨折でリタイア。終盤に落車で1分21秒遅れたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)は全身擦過傷を負いながらも「何があっても戦い続ける」とレース続行の意欲を燃やしている。

「僕たちにとって最高の一日にはならなかった。頭の先からつま先まで傷だらけ。身体は骨折もなく無事だったのでツールを続けられる。最終盤はストレスフルだったけれど、主催者を責めることはしたくない。誰にも地面に転がって欲しくないし、ここにいる全員が明確な目標を持って練習に身を投じてきた。今はここ数日間を乗り切ることが課題だ」とログリッチは語っている。

左鎖骨骨折と脳震盪に見舞われたジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)左鎖骨骨折と脳震盪に見舞われたジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
残り約4km地点での集団落車の犠牲者となったのが総合6位ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)。前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネで好調ぶりを発揮していたヘイグは左鎖骨の骨折と脳震盪に見舞われ、そのままブルターニュ病院センターに運ばれリタイアに終わった。CTスキャンの結果頭部外傷はなかったものの、チームとUCIプロトコルに従い一晩経過観察となる。

落車から起き上がれないカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)とチームメイト落車から起き上がれないカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)とチームメイト photo:Makoto AYANO
フィニッシュラインを越えることなく救急車に乗せられたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)フィニッシュラインを越えることなく救急車に乗せられたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:CorVos
また、ゴールスプリント中にティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)と接触し、足をすくわれる形でペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を巻き込みながら落車したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)はフィニッシュラインを越えることなく救急車搬送に。右鎖骨が4つに分かれたというユアンは水曜日にモナコで手術を受け、ブエルタ・ア・エスパーニャに向けて静養に入るという。

「メルリールが右に進路変更して僕のホイールと接触した直後、僕のツール・ド・フランスが終わったと理解した。いつもだったらアドレナリンが出ているから落車しても痛みを感じないけれど、今回はすぐに激しい痛みに襲われ、そして医療スタッフが鎖骨を触った時に折れている感覚があった。何かがおかしいことにすぐ気づいたよ。骨折は初めてで、医療スタッフは鎖骨が4つになっていると話していた。鎖骨骨折は最も回復が簡単だけど、復元するためには手術が必要だ。ただ幸いブエルタまでは十分な時間があるはずなので、その目標を変えることがないよう祈っている」と、ユアンは話している。また、サガンも右臀部に深い切り傷を負ったもののレース続行には支障ないという。

次々と選手が落車し、傷ついていく一日を終え、選手や関係者からはコース設定についての不満が噴出した。ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)は「ここ数日はロシアンルーレット以上(の危険さ)だ」とTwitterにコメント。グルパマFDJのマルク・マディオ監督は「単にコース設定や主催者だけの落ち度ではなく、選手や元選手の意見を聞き入れない国際当局にも責任がある」としつつ、「何かを変えなければ死に至る」と警鐘を鳴らしている。

text:So Isobe