マヴィックのグラベルロード用ホイール「ALLROAD S」を宮城で開催された長距離グラベルイベントJEROBOAMで実戦使用してインプレッション。手軽な価格ながらオン/オフ問わずあらゆる道で活躍するグラベル入門に最適な一本だ。



マヴィックALLROAD SマヴィックALLROAD S photo:Makoto.AYANO
その名の通りあらゆる道で快適なライドを楽しむべく誕生したマヴィックのALLROAD(オールロード)シリーズ。舗装路だけでなくグラベルなどのオフロードにも足を伸ばすライダーに最適なホイールで、2021モデルでは既存モデル含め6種類の製品がラインアップする。

新製品としてはカーボンリムのPRO CARBON SL、アルミリムのSLとSという3つのパフォーマンスレンジで展開され、PRO CARBON SLとALLROAD SLには700Cと650Bが用意されている。その5種に継続モデルのALLROADが加えられ、計6種類という製品が展開されている。本記事で紹介するALLROAD Sは手軽なアルミのエントリーモデルとなる。

ディスクロード用ホイールと同じ規格である700C仕様のALLROAD Sは、内幅が22mmという、オフロード向けのワイドタイヤに最適化されたリムプロファイルを採用。対応するタイヤ幅は最大64mm。650B仕様ではさらに広いリム内幅25mmとなり、対応タイヤ幅は最大64mmと細めのMTBタイヤも装着可能なキャパシティを実現している。

内幅22mmのフックレス設計リム内幅22mmのフックレス設計リム
フラットスポークは交差点でも接触しない設計だフラットスポークは交差点でも接触しない設計だ FOREテクノロジーでリムにねじ込まれたニップルFOREテクノロジーでリムにねじ込まれたニップル


アルミホイールを得意とするマヴィック。ALLROAD SL/Sは頑丈かつ軽量なアルミリムによって、砂利道や岩場などハードな路面でも信頼性の高い走りを実現。KSYRIUMホイールと同じくFOREテクノロジーを採用することでリムテープ不要な仕様となっており、ニップルホールからの空気漏れの心配もなくチューブレスタイヤを運用することができる。加えて、改良されたUSTリムは従来以上にチューブレスタイヤが装着しやすくなっていることもポイントだ。

上位モデルのホイールと共通の最新のインフィニティハブは、ライド中の異音発生を防ぐためクロスするスポーク同士が接触しないハブ形状に変更されているほか、フランジ径などを最適化することで前後左右全てのスポークが同じ長さになるよう設計されており、メンテナンス性も向上している。

タイヤレバー兼ハブスパナ、USTバルブ、ステッカーなど付属品一式タイヤレバー兼ハブスパナ、USTバルブ、ステッカーなど付属品一式
フリーボディはインスタントドライブ360とし、40Tの面ラチェットが細かく噛み合うことで優れたパワー伝達性を発揮してくれる。

価格はSLが90,000円、Sが70,000円(ともに税抜)。SLは表面を滑らかに削ることで剛性と強度を確保したままリムの軽量化を図った「ISM4D」リムを採用している。今回はベーシックモデルのSを宮城で開催されたJEROBOAM グラベルチャレンジに持ち込み、実戦テストした。



―インプレッション

グラベルバイクにセットしたマヴィックALLROAD S グラベルバイクにセットしたマヴィックALLROAD S photo:Makoto.AYANO
バイクインプレッション記事で登場したグラベルバイクのコルナゴG3-XにALLROAD Sをセットし、宮城のJEROBOAM150kmマグナムクラスを走ってのインプレ。ホイールはマヴィックジャパンの貸与品で、試乗サンプルが無かったために新品をおろしていただいた。

新品とはいえ使ったことがないホイールを決戦で使うのはどうかと思うが、出発2日前に届いてもチューブレスタイヤの取り付けとシーラント注入、定着まで不安なく作業が行えるのはマヴィックのホイールならでは。ビードが上がらない心配や空気漏れが止まらないといったマイナートラブルが起こりにくいことは、KSYRIUMを使っていることで知っている(※もちろん慣れない人には本番直前の機材変更はオススメしません)。

チューブレスレディのIRC BOKEN 40Cタイヤを装着したチューブレスレディのIRC BOKEN 40Cタイヤを装着した シーラントはビードを嵌める前にタイヤ内に流し込む方法がオススメだシーラントはビードを嵌める前にタイヤ内に流し込む方法がオススメだ


今回チョイスしたタイヤはIRC BOKEN 40C。IRC製チューブレスレディタイヤはETRTO規格に忠実に作られていることで、ほとんどのモデルにおいてマヴィックホイールとの相性がすこぶる良い。タイヤが太くなるほどにリムへの装着とビード上げは簡単になる傾向がある。内幅22mmワイドリムと40Cタイヤなら簡単に嵌められ、ビードもポンプで上げることができた。

リムへの装着が簡単なのでシーラントはビードを嵌める前に脇から流し込む方法が個人的にはおすすめ。バルブコアを外して注入する方法はバルブ内にシーラントが残って目詰まりすることがあるので、この方法はバルブを長く良い状態で使えることになる。

土系のルーズなグラベルではホイールの堅牢性が光る土系のルーズなグラベルではホイールの堅牢性が光る photo:Seiko Meguro
それにしてもALLROADのルックスはKSYRIUMと見分けがつかないぐらい似ている。リムの設計はKSYRIUMが内幅19mmなのに対してALLROADが22mmと、3mm広い。KSYRIUMにも40Cタイヤは取り付けることができるのだが、やはりワイドリムとの組み合わせの方がタイヤサイドが素直に立ち上がり、よりフィットしていることがわかる。

走り出せばさらにその差は顕著で、コーナリング中のタイヤのヨレが少なく、踏ん張る性能がより高まっているのが分かる。トラクションも全体的に高まるので、似てはいるがやはりロードホイールとグラベルホイールは別物だと感じることができる。

スラットスポークは強くて非常に頑丈な印象スラットスポークは強くて非常に頑丈な印象
ハブもKSYRIUMやCOSMIC等と共通の新型インフィニティハブ。インスタントドライブ360フリーボディの空転時のサウンドは小気味よく、かつペダルを漕ぐとすぐかかるのも気持ちが良い。

スポークは扁平のストレートスポーク。エアロ効果もありそうだが、丸形状より平たい形状に潰すことで強さが増していそうだ。ホイール全体の剛性の高さにも安心でき、荒れたグラベルでも不安なく走れた。

リムの背に土などが乗りにくいプロファイルだリムの背に土などが乗りにくいプロファイルだ
Sと上位モデルのSLの差はリムの切削の有無。150kmレースだから軽量なSLを選びたかったところだが生憎の欠品中でSを用いた。完成重量の差175gはおおよそリムの切削分だと思っていい。ハブフランジの切削やアクスルの形状も異なるというポイント。

Sのペアで1,765gという重量はワイドリムとしては軽量な部類だが、やはり登りでは重さを感じる。レース派の人、エピックライド派のユーザーにはやはり軽量なSLがおすすめだろう。他モデルからの推測となるが、マヴィックのグレードごとの軽量化は強度低下にはつながっていないので、おそらくはALLROAD SLも扱いやすさや剛性感は変わらず、軽い分だけメリットがあるだろうから、ビギナーにも財布に余裕があるなら絶対におすすめだ。

軽さが要求される舗装路の登りではやや重さが気になった軽さが要求される舗装路の登りではやや重さが気になった photo:Seiko Meguro
結果的にJEROBOAMはトップタイムでフィニッシュすることができたが、走っているときに1,765gという重さはとくに気にならなかった。チューブレスと40Cの太いタイヤのエアボリュームで転がりが軽く、かつオンもオフも快適。それだけよくスピードに乗るということだろう。

入門モデルならではの77,000円(ペア・税込)という手軽な価格は魅力だが、同時に入門モデルということで大きく期待していなかったのは正直なところ。だが、改めてマヴィックのチューブレスモデルの扱いやすさ、走りの良さに感心した。もちろんSLやカーボンモデルなどグレードが上がるにつれて性能も向上するんだろうけれど、グラベルでのスポーツ走行に必要十分な性能があること、グレードが低いことのデメリットをほぼ感じない十分な基本性能のホイールに仕上がっていると感じた。

マヴィックALLROAD S マヴィックALLROAD S photo:Makoto.AYANO
マヴィックALLROAD S
リム
プロファイル ディスクブレーキ専用、フックレス形状
ETRTO サイズ 622x22TSS ロード
リム高 22mm
内幅 22mm
推奨タイヤサイズ 28~64mm (1.1"~2.5")
ハブ(Infinity Hub)
フロント クイックリリースと12mmx100mmスルーアクスル間で組み替えが可能
リア クイックリリース、12mmx142mm、12x135mm間で組み替えが可能
フリーホイール シマノ/スラム または XD-R、カンパニョーロN3W(エカル対応)
ディスク仕様 センターロックのみ
スポーク
スポーク組 フロント&リア側 2クロス組、コンタクトレス
形状 ストレートプル、フラット、ダブルバテッド
素材 スチール
ニップル FOREテクノロジーによるアルミニウム一体型
スポーク数 フロント&リア側 24本
重量 ペア: 1765g、フロント: 830g、リア:935g
価格 77000円(ペア・税込)
text&photo:Makoto AYANO

同じ製品カテゴリーの記事