ジロ・デ・イタリア第12ステージは再びの逃げの展開に。アンドレア・ヴェンドラーメ(アージェードゥーゼール・シトロエン)が歓喜の逃げ切り勝利を果たし、メイン集団はヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード)に先行を許しながらも獲得標高差4500mの中級山岳ステージを平穏に終えている。



5月20日(木)第12ステージ
シエナ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 212km ★★★★


新緑に覆われたイタリア中部を走る新緑に覆われたイタリア中部を走る photo:LaPresse
5月20日(木)第12ステージ シエナ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 212km ★★★★5月20日(木)第12ステージ シエナ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 212km ★★★★ image:RCS Sport5月20日(木)第12ステージ シエナ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 212km ★★★★5月20日(木)第12ステージ シエナ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 212km ★★★★ image:RCS Sport

第12ステージはストラーデビアンケのフィニッシュ地点であるシエナのカンポ広場をスタート。アペニン山脈へと歩みを進めるステージ後半はアップダウンの連続で、フィニッシュ地点バーニョ・ディ・ロマーニャまでの間に設定されたカテゴリー山岳は4つ。3級山岳モンテ・モレッロ(登坂距離7.6km・平均勾配6.6%)、2級山岳コンスーマ峠(登坂距離17.1km・平均勾配5.7%)、2級山岳カッラ峠(登坂距離15.3km・平均勾配5.5%)、そして3級山岳カルナイオ峠(登坂距離10.8km・平均勾配5.1%)を立て続けにクリアする。

当初のレース主催者の発表では獲得標高差が3,700mだったが、実際のGPSデータを見ると4,500mというたっぷりとしたボリューム。今大会2番目に長い212kmのステージは、総合に関係しない逃げ屋たちによる激しいアタック合戦で幕開けた。

シエナのカンポ広場をスタートしていく新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らシエナのカンポ広場をスタートしていく新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)ら photo:LaPresse
葡萄畑の広がる丘陵地帯を走る葡萄畑の広がる丘陵地帯を走る photo:LaPresse
キアンティワインを生み出す丘で繰り広げられた逃げ形成のための攻防。高速で展開するメイン集団では落車が多発し、地面に叩きつけられたアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)が救急車で搬送されている。同じく落車した総合11位マルク・ソレル(スペイン、モビスター)やジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス)もその後リタイアを余儀なくされた。

フィレンツェの街をかすめるようにして山岳地帯に入ると、長く追走していた選手たちが追いついて先頭では逃げグループが完成。ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)やディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)というエース級選手を含む16名が、1時間半におよぶ攻防を経て逃げ切りの切符を掴んだ。

逃げグループを形成した16名
ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)総合21分24秒遅れ
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)総合26分56秒遅れ
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)総合44分26秒遅れ
クリス・ハミルトン(オーストラリア、チームDSM)総合52分16秒遅れ
アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)総合55分10秒遅れ
ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)山岳賞1位
ミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
シモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)
ガイ・ニーブ(イスラエル、イスラエル・スタートアップネイション)
ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
シモーネ・ラヴァネッリ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)
ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)

マリアローザを着て走るエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)マリアローザを着て走るエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
長時間にわたってメイン集団を牽引し続けたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)長時間にわたってメイン集団を牽引し続けたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
総合でそこまで危険な選手が逃げていないとして、メイン集団はイネオス・グレナディアーズを先頭に淡々とペースを刻んだ。ステージ中盤にかけて強く降った雨の中、フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)による長時間集団牽引によりタイム差は10分前後で推移。逃げ切りを容認された先頭16名は徐々に足並みが揃わなくなってくる。

マリアアッズーラのジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)が狙い通り3級山岳モンテ・モレッロと2級山岳コンスーマ峠、2級山岳カッラ峠を連続先頭通過すると、最後の3級山岳カルナイオ峠でステージ優勝に向けたセレクションがスタート。活発に動いたのはブランビッラで、ここにベネット、ハミルトン、ヴェンドラーメ、エデ、ヴィスコンティが反応してついていく。

続いて単独で飛び出したヴェンドラーメに追いつく形で先頭は4名(ベネット、ハミルトン、ブランビッラ、ヴェンドラーメ)に。ステージ優勝に向けてブランビッラが再度加速する頃、12分後方のメイン集団ではチームメイトの総合8位ジュリオ・チッコーネとヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)がアタックした。

最後の3級山岳で飛び出したアンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)最後の3級山岳で飛び出したアンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン) photo:LaPresse
最終3級山岳で先頭はヴェンドラーメ、ベネット、ブランビッラ、ハミルトンの4名に最終3級山岳で先頭はヴェンドラーメ、ベネット、ブランビッラ、ハミルトンの4名に photo:CorVos
結局先頭4人のアタックがいずれも決まらないまま最後の3級山岳カルナイオ峠を通過し、フィニッシュまでの下り&平坦区間に。一方のトレックデュオ(チッコーネとニバリ)も一旦はメイン集団に引き戻される。しかしニバリは得意の下りでコーナーを攻め続け、後続のジャンニ・モスコン(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が落車したことも影響してニバリが気づけばメイン集団から一人抜け出した状態に。すでに総合では4分以上遅れているが、この日ニバリは総合ライバルたちから7秒のタイムを奪うことに成功した。

逃げ切りを確定させた先頭4名の中では、唯一ステージ優勝経験のあるブランビッラと2018年ジロ総合8位ベネットが互いを牽制する隙を突いて、残り3kmの平坦路でハミルトンとヴェンドラーメが抜け出す。ブランビッラとベネットを置き去りにした状態でハミルトンとヴェンドラーメが残り1kmアーチをくぐり、スプリント一騎討ちの末にヴェンドラーメが勝利した。

ベネットをスプリントで下したブランビッラが15秒遅れでフィニッシュしたものの、スプリント中の斜行による降格処分によってベネットがステージ3位、ブランビッラがステージ4位扱いになっている。

下りで飛び出したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)下りで飛び出したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:LaPresse
ハミルトンを下したアンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)ハミルトンを下したアンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン) photo:LaPresse
「コルサローザでステージ優勝するなんて、ついに夢が叶った。この感情を言葉で表現することができない。一緒に逃げたチームメイトのブシャールに感謝している」。2020年からアージェードゥーゼールに所属する26歳のヴェンドラーメはキャリア最大の勝利を喜んだ。山岳ポイントを量産したチームメイトのブシャールはダブルスコアで山岳賞首位を固めている。

ヴェンドラーメはアンドローニ時代の2019年大会第19ステージでも逃げ切りの展開に持ち込みながら、メカトラで好機を逃していた。「終盤に残った4人の中では一番スピードがあると思っていた。2年前にステージ2位を経験してから、この勝利のためにコースを慎重に研究して逃げに挑んだんだ。前半のアタック合戦を切り抜けて、最後の3級山岳ではクライマーたちに対して早駆けする作戦に出た。それから少しリカバリーして、スプリントに挑んだ。今日はなんとしても勝ちたかった」。アージェードゥーゼール・シトロエンにとってはこれがシーズン2勝目だ。

下りで7秒を稼いだニバリを除き、マリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)を含むメイン集団は10分14秒遅れでフィニッシュしている。ジロは翌日の第13ステージでヴェネト州まで大きく北上。いよいよ第14ステージのモンテゾンコランを皮切りに山岳決戦が始まる。

ステージ優勝を喜ぶヴェンドラーメとブシャールステージ優勝を喜ぶヴェンドラーメとブシャール photo:CorVos
マリアローザを着続けるエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)マリアローザを着続けるエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:LaPresse
ジロ・デ・イタリア2021第12ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) 96pts
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 48pts
3位 ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 24pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 イネオス・グレナディアーズ 145:35:18
2位 トレック・セガフレード 0:01:51
3位 チームDSM 0:08:58
text:Kei Tsuji
photo:CorVos

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