ロンド・ファン・フラーンデレンの指定区間外でボトルを捨てたことにより、失格処分となったミヒャエル・シェアー(スイス、AG2Rシトロエン)が、新ルールに対する抗議文をSNSに投稿した。



ファンとハイタッチするミヒャエル・シェアー(スイス:2019年ツール・ド・フランスにて)ファンとハイタッチするミヒャエル・シェアー(スイス:2019年ツール・ド・フランスにて) (c)CorVos
事の発端は4月4日に開催されたロンド・ファン・フラーンデレン。スタートから約150km地点でバイクトラブルに見舞われたミヒャエル・シェアー(スイス、AG2Rシトロエン)は、集団復帰のため単独で走行中、飲み干したボトルを沿道のファンに向けて投げてしまう。直後に後悔するジェスチャーを見せたシェアーだったが、中継映像に映ったこのシーンにより、審判バイクから失格処分を告げられた。

処分の対象となったのは、UCI(国際自転車競技連合)が4月1日より施行した「選手はレース主催者が指定した区間外で、補給食やサコッシュ、ボトルや衣類などを捨ててはならない」というルール。違反した場合は罰金やUCIポイントの剥奪、ワンデーレースではそれに加え失格処分が課せられる。

このルール改正を受け、コースの30-40kmごとにはゴミ捨て区間が設置され、それ以外の場合はチームカーやニュートラルカーに渡す必要がある。この規定が追加された背景には、転がったボトルによる落車を防ぐ安全性の向上や、「ゴミを安易に捨てるスポーツ」というイメージの払拭、環境保全への考慮などがある。

しかし、失格処分となったシェアーはレース翌日にインスタグラムを更新。自身が自転車選手になるキッカケとなったエピソードど共に、このルールに対しての意見を投稿した。



「あれは姉と僕を両親がツール・ド・フランス観戦に連れて行ってくれた時の話だ。選手が僕にボトルをくれたんだ。その小さなプラスチックの塊が、僕を自転車ロードレースの虜にさせ、それを持って毎日自転車に乗った」

「2年前、コース脇に立っていた女の子にボトルを渡したことがある。その後、彼女がどれだけ嬉しそうにしていたかを、彼女の両親が教えてくれた。2年経ったいまでもその話をするのだと。そして彼女もまた、僕のように自転車選手への道を歩むかもしれない」

「こういった喜びが奪われてはならない。観客にボトルを渡せるほど近い距離感こそが、このスポーツの醍醐味なのだ」

この投稿に対して、同大会を2位に入賞したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)をはじめとする選手やファンなど、多くの賛同の声がSNSを中心に集まった。中でもアレックス・ドーセット(イギリス、イスラエル・スタートアップネイション)は、シェアーの投稿に呼応するように、SNSボトルを通じて生まれたファンとの交流についてポストした。


投稿された写真はモビスターに所属していた2016年のツアー・オブ・ブリテン。ドーセットが少年にボトルを渡すこのシーンは、当時「次の世代へのバトン」と題され自転車ロードレースの魅力を表す一枚として拡散された。

「写真に写っているのがアルロだ。レース後、彼の家族から連絡があり、アルロがどれほど僕を含む多くの選手たちから受けた言動に感激したかを伝えてくれた」

「数ヶ月後、僕のチャリティ団体の立ち上げイベントに参加するため、彼らはロンドンまで来てくれた。そして血友病とは何の関係もないアルロは、そのアンバサダーに就任したんだ。このボトルがこの少年とスポーツ、運動、チャリティ、知ることがなかったであろう病気の知識とを結びつけたんだ」

「選手として、僕らは何をどこに捨てるかについてもっと意識する必要がある。しかし、このボトルは僕たちが思っている以上に重要なスポーツの一部となっているんだ。この写真は現在、自転車ロードレースで失格対象の行為になっている」

なお、4月3日に開催されたグランプレミオ・ミゲル・インデュラインで、補給ジェルを捨てたとしてカイル・マーフィー(アメリカ、ラリーサイクリング)が、この規定初の失格者となっている。

text:Sotaro.Arakawa