2021/04/05(月) - 09:31
5ヶ月前の焼き直しかのように、第105回ロンド・ファン・フラーンデレンは二名の一騎打ちで決着。アグレシッブな走りでレースを作り、マチュー・ファンデルプールを打ち負かしたカスパー・アスグリーンが初の栄冠を勝ち取った。
注目のワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
2連覇が懸かったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
9.4kmのパレードランでリアルスタート地点に向かう (c)CorVos
2年ぶりの3月開催であり、10月18日に行われた前回大会から5ヶ月というショートスパンで「クラシックの王様」の異名を持つロンド・ファン・フラーンデレンが開催。19カ所の急坂を含む254.3kmの戦いが繰り広げられた。
ベルギー北部の港湾都市アントウェルペンは曇り空ながら気温7度、風速8km/hと穏やかな天候。254.3km、7時間に及ぶクラシックの王者を決める戦い戦いが、世界王者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エレガント・クイックステップ)たちを先頭に動き出す。9.4kmのパレード区間を終えると、さほど時間を要さず5名の逃げが決まった。
マティアス・ノルスゴー(デンマーク、モビスター)を含む5名が先行 (c)CorVos
エフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)を妨害したオット・フェルハード(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が抗議を受ける (c)CorVos
メイン集団をコントロールするユンボ・ヴィズマ (c)CorVos
パリ〜ニースの第3ステージ個人タイムトライアルで名を上げたシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO)を含む5名の背後では、メイン集団前方でオット・フェルハード(ベルギー、アルペシン・フェニックス)とエフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)が故意に肩をぶつけ合うトラブルによってレースから除外されてしまう。ユーゴ・ウル(カナダ、アスタナ・プレミアテック)とニコ・デンツ(ドイツ、チームDSM)が飛び出し、先頭に合流したことでレースは一度落ち着きを見た。
5人の過去優勝者(ファンデルプール、ベッティオル、サガン、テルプストラ、クリストフ)を含むメイン集団が与えたリードは160km地点で12分。102km地点の「カッテベルグ」をきっかけに登坂区間を消化していく中、フィニッシュまで100km強を残した「モーレンベルグ」でエレガント・クイックステップがジャブを打った。
UAEチームエミレーツが徐々に逃げグループとの差を詰める (c)CorVos
ジャブを打つマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
逃げグループの中で独走に持ち込んだシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO) (c)CorVos
エースのアラフィリップを従えてハイペースを刻み、続いてケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク、グルパマFDJ)がエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、トタル・ディレクトエネルジー)らと共に抜け出すなど徐々に緊張感が高まっていく。この中で元世界王者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)は力なく遅れていった。
本格的にレースが動き始めたのは残り55km地点、2度目の「オウデ・クワレモント」だった。先頭ではスペシャルヘルメットを被ったビッセガーが独走に持ち込み、1分半差で突入したメイン集団では頂上通過後にディフェンディングチャンピオンのマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)と、「ミニロンド」E3サクソバンククラシックを制していたカスパー・アスグリーン(デンマーク、エレガント・クイックステップ)が飛び出す。この二人はすぐさま捉えられ、続く「パテルベルグ」通過後にトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)のアタックによってアラフィリップを含む追走グループが生まれた。
2度目のオウデ・クワレモントで仕掛けるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エレガント・クイックステップ) (c)CorVos
2度目のオウデ・クワレモント通過後に形成された9名の精鋭グループ (c)CorVos
精鋭グループからマルコ・ハラー(オーストリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が飛び出すも、すぐに吸収 (c)CorVos
難所として知られる「オウデ・クワレモント」では追走グループ内のアラフィリップがするすると抜け出してビッセガーを捉えたものの、後ろから有力選手たちが追いついてくる。3強、つまりワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)とアラフィリップ&ファンデルプールに加え、ピドコック、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)を含む9名が先頭グループを形成した。
その中からはマルコ・ハラー(オーストリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が独走に持ち込み、ターインベルグに入るとファンデルプールが加速した。すかさず好調ぶりを見せつけるアスグリーンとファンアールトが飛びつき、アラフィリップとディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)も加わった5名がハラーを捕まえ、合計6名が通称『ボーネンベルグ』を頂上を乗り越えた。
最後のオウデ・クワレモントでアタックするマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
ファンデルプールとアスグリーンがファンアールトを突き放す (c)CorVos
ローテーションを組む6名には唯一アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)が追いつたものの、人数増加を嫌うようにフィニッシュまで30kmを切った補給所でアスグリーンが加速した。ファンデルプールとファンアールトが合流し、後続グループに対して30秒リードを得て最後(3度目)の「オウデ・クワレモント」へ。最大勾配が11.6%に達する石畳登坂の終盤で仕掛けたファンデルプールには、ファンアールトではなくアスグリーンが追いついた。
クワレモント通過後の舗装登りでアスグリーンとファンデルプールが合流し、苦しい表情のファンアールトは単独追走を強いられる。最後の「パテルベルグ」でも状況は変わらず、ファンアールトとの距離は少しずつ、しかし確実に開いていく。先頭二人は協調してフィニッシュラインが引かれたオウデナールデへの距離を減らしていった。
ペースを失ったファンアールトは後続グループに引き戻され、残り10kmで2人と追走グループ(10名)との差は30秒弱。残り5kmでは24秒差まで縮まったが、それ以降は協調が崩れ、アタックと吸収を繰り返したことでむしろタイム差は広がっていく。こうしてファンデルプールとアスグリーンの逃げ切りは確定路線となった。
後続を突き放しながら進むカスパー・アスグリーン(デンマーク、エレガント・クイックステップ)とマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
ファンデルプールを打破したカスパー・アスグリーン(デンマーク、エレガント・クイックステップ) (c)CorVos
アスグリーンを讃えるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
残り1kmのアーチ通過をきっかけに、先頭グループでは昨年大会の焼き直し展開かのように緊張感溢れる牽制がスタート。先行ファンデルプール、その番手にはアスグリーン。ファンデルプールは背後を見続けながら距離を減らし、残り200m手前でスプリントを開始する。ディフェンディングチャンピオンの2連覇が決まったかと思われたが、アスグリーンは出遅れることなく反応し、そのままファンデルプールに並びかける。首を横に振りながら脚を止めたファンデルプールの前で、アスグリーンが雄叫びと共に勝利をアピールした。
ファンデルプールの勝ちパターンとの予想を大逆転し、アスグリーンが初のモニュメント制覇。エースのアラフィリップ以上に登坂区間で力を見せ、自らレースを作り、最後はマッチスプリントで優勝候補筆頭を下すという強い走りで、キャリア最大の勝利を掴み取った。
3位争いを制したグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン) (c)CorVos
ロンド・ファン・フラーンデレン2021表彰台 2位ファンデルプール、1位アスグリーン、3位ファンアーヴェルマート (c)CorVos
アスグリーンはファンデルプールと同じ1995年生まれの26歳。2018年4月1日にクイックステップ入りし、翌年のツアー・オブ・カリフォルニアでキャリア初勝利。ウルフパックのクラシック戦線に欠かせないルーラーとして力を伸ばし、昨年はロードとタイムトライアルのダブルデンマークチャンピオンに輝いていた。
3位争いはヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)とグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)の一騎打ちでファンアーヴェルマートが先着。ファンアールトは6位、チームメイトに勝負の座を譲ったアラフィリップは2分半遅れの42位でレースを終えている。
なお2位に終わったファンデルプールは今後、MTBに乗り換えてレースを走り、トレーニングキャンプ経てツール・ド・スイス、ロードオランダ選手権、そしてツール・ド・フランスと連戦。予定通りであればその後自身最大の目標と公言し続けてきた東京オリンピックでの勝利を狙う。



2年ぶりの3月開催であり、10月18日に行われた前回大会から5ヶ月というショートスパンで「クラシックの王様」の異名を持つロンド・ファン・フラーンデレンが開催。19カ所の急坂を含む254.3kmの戦いが繰り広げられた。
ベルギー北部の港湾都市アントウェルペンは曇り空ながら気温7度、風速8km/hと穏やかな天候。254.3km、7時間に及ぶクラシックの王者を決める戦い戦いが、世界王者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エレガント・クイックステップ)たちを先頭に動き出す。9.4kmのパレード区間を終えると、さほど時間を要さず5名の逃げが決まった。



パリ〜ニースの第3ステージ個人タイムトライアルで名を上げたシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO)を含む5名の背後では、メイン集団前方でオット・フェルハード(ベルギー、アルペシン・フェニックス)とエフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)が故意に肩をぶつけ合うトラブルによってレースから除外されてしまう。ユーゴ・ウル(カナダ、アスタナ・プレミアテック)とニコ・デンツ(ドイツ、チームDSM)が飛び出し、先頭に合流したことでレースは一度落ち着きを見た。
5人の過去優勝者(ファンデルプール、ベッティオル、サガン、テルプストラ、クリストフ)を含むメイン集団が与えたリードは160km地点で12分。102km地点の「カッテベルグ」をきっかけに登坂区間を消化していく中、フィニッシュまで100km強を残した「モーレンベルグ」でエレガント・クイックステップがジャブを打った。



エースのアラフィリップを従えてハイペースを刻み、続いてケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク、グルパマFDJ)がエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、トタル・ディレクトエネルジー)らと共に抜け出すなど徐々に緊張感が高まっていく。この中で元世界王者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)は力なく遅れていった。
本格的にレースが動き始めたのは残り55km地点、2度目の「オウデ・クワレモント」だった。先頭ではスペシャルヘルメットを被ったビッセガーが独走に持ち込み、1分半差で突入したメイン集団では頂上通過後にディフェンディングチャンピオンのマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)と、「ミニロンド」E3サクソバンククラシックを制していたカスパー・アスグリーン(デンマーク、エレガント・クイックステップ)が飛び出す。この二人はすぐさま捉えられ、続く「パテルベルグ」通過後にトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)のアタックによってアラフィリップを含む追走グループが生まれた。



難所として知られる「オウデ・クワレモント」では追走グループ内のアラフィリップがするすると抜け出してビッセガーを捉えたものの、後ろから有力選手たちが追いついてくる。3強、つまりワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)とアラフィリップ&ファンデルプールに加え、ピドコック、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)を含む9名が先頭グループを形成した。
その中からはマルコ・ハラー(オーストリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が独走に持ち込み、ターインベルグに入るとファンデルプールが加速した。すかさず好調ぶりを見せつけるアスグリーンとファンアールトが飛びつき、アラフィリップとディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)も加わった5名がハラーを捕まえ、合計6名が通称『ボーネンベルグ』を頂上を乗り越えた。


ローテーションを組む6名には唯一アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)が追いつたものの、人数増加を嫌うようにフィニッシュまで30kmを切った補給所でアスグリーンが加速した。ファンデルプールとファンアールトが合流し、後続グループに対して30秒リードを得て最後(3度目)の「オウデ・クワレモント」へ。最大勾配が11.6%に達する石畳登坂の終盤で仕掛けたファンデルプールには、ファンアールトではなくアスグリーンが追いついた。
クワレモント通過後の舗装登りでアスグリーンとファンデルプールが合流し、苦しい表情のファンアールトは単独追走を強いられる。最後の「パテルベルグ」でも状況は変わらず、ファンアールトとの距離は少しずつ、しかし確実に開いていく。先頭二人は協調してフィニッシュラインが引かれたオウデナールデへの距離を減らしていった。
ペースを失ったファンアールトは後続グループに引き戻され、残り10kmで2人と追走グループ(10名)との差は30秒弱。残り5kmでは24秒差まで縮まったが、それ以降は協調が崩れ、アタックと吸収を繰り返したことでむしろタイム差は広がっていく。こうしてファンデルプールとアスグリーンの逃げ切りは確定路線となった。



残り1kmのアーチ通過をきっかけに、先頭グループでは昨年大会の焼き直し展開かのように緊張感溢れる牽制がスタート。先行ファンデルプール、その番手にはアスグリーン。ファンデルプールは背後を見続けながら距離を減らし、残り200m手前でスプリントを開始する。ディフェンディングチャンピオンの2連覇が決まったかと思われたが、アスグリーンは出遅れることなく反応し、そのままファンデルプールに並びかける。首を横に振りながら脚を止めたファンデルプールの前で、アスグリーンが雄叫びと共に勝利をアピールした。
ファンデルプールの勝ちパターンとの予想を大逆転し、アスグリーンが初のモニュメント制覇。エースのアラフィリップ以上に登坂区間で力を見せ、自らレースを作り、最後はマッチスプリントで優勝候補筆頭を下すという強い走りで、キャリア最大の勝利を掴み取った。


アスグリーンはファンデルプールと同じ1995年生まれの26歳。2018年4月1日にクイックステップ入りし、翌年のツアー・オブ・カリフォルニアでキャリア初勝利。ウルフパックのクラシック戦線に欠かせないルーラーとして力を伸ばし、昨年はロードとタイムトライアルのダブルデンマークチャンピオンに輝いていた。
3位争いはヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)とグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)の一騎打ちでファンアーヴェルマートが先着。ファンアールトは6位、チームメイトに勝負の座を譲ったアラフィリップは2分半遅れの42位でレースを終えている。
なお2位に終わったファンデルプールは今後、MTBに乗り換えてレースを走り、トレーニングキャンプ経てツール・ド・スイス、ロードオランダ選手権、そしてツール・ド・フランスと連戦。予定通りであればその後自身最大の目標と公言し続けてきた東京オリンピックでの勝利を狙う。
ロンド・ファン・フラーンデレン2021結果
1位 | カスパー・アスグリーン(デンマーク、エレガント・クイックステップ) | 6:02:12 |
2位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | |
3位 | グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン) | 0:32 |
4位 | ヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | 0:33 |
5位 | セップ・ファンマルク(ベルギー、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:47 |
6位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | |
7位 | ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | |
8位 | フロリアン・セネシャル(フランス、エレガント・クイックステップ) | |
9位 | アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ディレクトエネルジー) | |
10位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) |
text:So Isobe
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